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新首都圏ネットワーク

『山陽新聞』社説 2005年8月25日付

国立大決算 一層の経営感覚を磨け


 法人化後初となる国立大の二〇〇四年度決算を文部科学省がまとめた。全八
十九大学中、八十八大学が利益を出し、総利益は計約千百億円に上った。

 国立大は〇四年度に法人化された。各大学は損益計算書や貸借対照表の作成
など、企業会計にならった決算をすることが義務付けられた。

 総利益が最も多かったのは大阪大の七十一億円で、以下東大七十億円、九州
大六十三億円の順だった。岡山大は二十六億円で十二位、広島大は十八億円で
二十四位、香川大二十七億円で十一位となっている。大学の規模が大きい旧帝
大や収入の多い付属病院を持つ大学が上位に並んだ。

 総利益分は、剰余金として大学の裁量で戦略的に教育研究経費に投入でき、
特色ある大学づくりを目指せる。総利益が一億円に満たない大学が十三大学あっ
た。少子化で激化する大学間競争にあって、前途は厳しい。

 一定の総利益を確保した大学も安心はできない。総利益千百億円の大部分は、
旧国立大時代から引き継いだ未収授業料など法人への移行に伴う一時的な利益
であるからだ。経費削減や外部資金獲得など、経営努力による総利益は計五十
四億円にとどまる。外部資金獲得額は東大の二百六十九億円、京都大百三十六
億円、大阪大百十九億円と続き、岡山大は二十九億円、広島大三十一億円、香
川大十四億円だった。十五大学は一億円に届かなかった。

 法人化で各大学は、人事や予算に関する自由度が増した。一方で、大学収入
の約半分を占める国からの運営費交付金は毎年1%ずつ削減される。各大学は
生き残り戦略を強化するために、一層のコスト削減や外部資金獲得など経営感
覚を磨く必要があろう。