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新首都圏ネットワーク

『中国新聞』2005年8月18日付

東広島でバイオベンチャー誕生

 ▽広島県産科研の研究から2社

 東広島市の広島県産業科学技術研究所(産科研)の研究から今夏、バイオベ
ンチャー二社が同市内に誕生した。病原菌の超高感度検出キットを開発、販売
する「バイオエネックス」と、治療薬開発などに使うタンパク質を蚕を使って
生産、販売する「ネオシルク」。産科研は「バイオ関連産業の集積につながる」
と期待している。

 バイオエネックスは、広島大大学院先端物質科学研究科の黒田章夫教授らが
十六日に設立した。黒田教授らのグループは、病原菌内のアデノシン三リン酸
(ATP)を増やす試薬を開発。ホタルが発光する仕組みを利用した生物発光
によってATPを検出し、菌の有無を調べる。菌種は抗体で識別する。

 従来は検出可能な発光量を得るため数日かけて菌自体を増やしていた。AT
P増幅法なら約一時間、試薬と反応させればよく、菌一個でも検出できるとい
う。社長には黒田教授の妻が就き、病院や食品工場などに売り込む。

 ネオシルクは七月に設立された。遺伝子導入技術を使い、蚕に有用なタンパ
ク質を含む絹糸をはき出させる技術が基盤で、同大学院理学研究科の吉里勝利
教授たちのグループが開発した。

 タンパク質は病気の解明や治療薬開発のため医療現場に欠かせず、研究者ら
からの受託を中心に事業を展開する。二〇〇六年度で一億三千万円の売り上げ
を見込む。千葉県のバイオベンチャーから独立した柳川佳信社長は「市場ニー
ズにあったタンパク質を効率生産し、事業を成功させたい」と意気込んでいる。

 両研究は、ともに文部科学省の知的クラスター創成事業。黒田教授は補助を
受けた年間約二千万円の研究費で昨年度から二年計画、吉里教授は年間約七千
万―九千万円で〇二年度から五年計画で取り組んでいる。