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新首都圏ネットワーク

『科学新聞』2005年7月29日付

ポスドク活用へ対策

研究機関など支援
競争的資金制度創製へ
文科省 来年度概算要求に盛る


 多くのポスドクが自らの将来に不安を抱いている。明確なキャリアパスが示
されていないためだ。そこで文部科学省は、平成18年度予算でポスドクのキャ
リアサポートをする機関向け競争的資金を創設する。ポスドク問題を研究室レ
ベルから、機関の問題へと転換させるためだ。科学技術・学術審議会の人材委
員会(主査=小林陽太郎・富士ゼロックス会長)が20日まとめた「多様化する
若手研究人材のキャリアパスについて(検討の整理)」を受けて概算要求に盛
り込むことになった。

 全国に約1万2000人いるポスドクは、日本の研究活動の原動力となっている。
一方で、ポスドクの約半数は競争的研究資金で雇用されており、研究期間終了
後のキャリアパスは不透明だ。また、社会の多様な場における博士号取得者の
活躍促進も期待感はあるものの、明確なキャリアパスは開かれていない。博士
課程に進んでもその先が見えないのでは、優秀な人材が研究者を目指さなくなっ
てしまう。少子高齢化・人口減少が進む中、喫緊の課題だ。

 報告書では、ポスドク等の雇用は事実上研究プロジェクト単位で行われてお
り、大学等の研究機関単位での対応が行われていないことが、ポスドクのキャ
リアパスの不透明さ、多様な分野へのポスドクの進出が進んでいないことの一
因になっていると指摘。面倒見のいいリーダーにあたればポスドクの将来は開
けるが、そうでない場合は、自分で就職先を探さなければならない。

 そこで、ポスドクに関する問題を研究プロジェクト内の課題から研究機関の
組織としての課題へと転換していくことが必要だとしている。研究機関、産業
界や学協会、学校、科学館、NPO、人材関係事業者等の様々な主体が集いネッ
トワークを作り、情報交換やキャリア形成に関する相談などを行う場の構築。
学協会やNPO等が行う、流動化やキャリアパスの多様化に資するような講習、
研修会の開催。

 企業から見ると、学生に比べ個々のポスドクと関わる機会が少ないため、学
部・大学院段階でのインターンシップや産学共同研究への参加などに加え、ポ
スドクと企業が接する場や機会を増やすことが必要。企業等からポスドクに関
してアクセスするための対応窓口的なものを創設しなければならない。

 文部科学省では、報告書のこうした指摘を受け、各研究機関等のキャリアサ
ポートの取り組みのうち、優れたものを支援するため、18年度概算要求に新た
な競争的資金制度を盛り込む。

 500人以上のポスドクのキャリアサポートができる組織が対象で、5年を上限
に年間数千万円を支援する。支援終了後、自立してやっていけることが条件。
対象となるのは、大学、研究機関、NPO、学協会などの組織。文科省の調査
によると、大学単独で500人を超えるポスドクがいるのは、旧帝大と東工大、筑
波大くらいしかない。そのため、地域の大学が連携して組織を作ったり、特定
分野のポスドクを支援する学協会やNPOなど、様々な方法が考えられる。場
合によっては企業でもいいという。