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新首都圏ネットワーク

『朝日新聞』2005年7月27日付

国立大、施設管理ずさん 8割が工事履歴残さず


 国立大学の8割は過去にどんな施設工事をしたかすら記録していない。こん
な国立大学のずさんな管理状況が、文部科学省の実態調査で浮かび上がった。
学部ごとのタテ割り主義で大学本部に情報が集約されていないのが原因という。
計画的な改修ができずコストアップにもなりかねないとして、担当した文科省
調査研究協力者会議は27日にまとめた報告書で「一元的に管理する体制が必
要だ」と注文をつけた。

 調査は、環境への配慮から大学施設が効率的に運営されているかを把握する
もので、アスベスト(石綿)など安全上の問題は対象外。法人化後の昨年12
月に実施した。全国立大89校と、大規模な私立大54校が回答した。国立・
私立の同時調査は初めて。

 報告書によると、大学にとって改修するうえで基礎資料になるのは施設全体
の管理用図面とされる。

 国立大学では、この管理用図面にどのような改修が行われたかをきちんと書
き加えて記録していたのは、89校のうち19校だった。

 施設の完成時に建設会社から引き渡された図面を工事担当の施設部門がしま
いこんだままにしたり、国立大学では学部ごとに予算が配分されていたため各
学部が勝手に修繕をしたあと本部に届けていなかったりしたのが原因という。

 この結果、図面と現状が大きく食い違い、修繕の際に改めて大学職員が確認
作業にかけまわったケースもあった。また、図面を見ても改修が必要かどうか
わからないため、結果的に改修計画が立ち遅れたりするなどの影響も出ている
という。

 私立大でも工事履歴を記録していたのは54%の29校にとどまった。民間
から会議に参加した専門家委員は、「普通の企業ではありえない」と指摘した。

 運営コストを切り下げるための取り組みでも国立は私立に比べて遅れが目立
つ。

 私立では、「劣化してきた施設を前もって保全して、維持修繕費を節約して
いる」のは57%の31校だったが、国立は34%の30校。また、「いまあ
る機器を長持ちするように対策を取っている」私立は54%の29校なのに、
国立は32%の29校だった。