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新首都圏ネットワーク

『東北大学新聞』2005年7月21日付

法人化で変わる組織

 法人化によって、明らかに変わったと言えるのは、まず学内の組織であろう。
以前は、学内の代表者からなる評議会が、大学運営に関するすべてのことに関
して審議を行っていた。(344号)

 しかし、法人化によって学内の組織は4つに分けられた。大学運営に関する
重要事項を審議する役員会、大学の経営に関する内容を審議する経営会議、教
育研究面の審議をする教育研究評議会、そして学長を選考する学長選考会議で
ある。

 今回は、具体的にこれらの会議でどういったことが審議されているのか見て
いきたい。

 まずは、役員会から見ていく。役員会は、主に学内外の理事や、大学本部の
職員らによって構成される。文部科学省など国側に提出する事項に関しての最
終決定は主にここで行なわれる。また、予算配分や学内組織の改組、大学間の
学術交流など、大学全体にかかわることに関して最終的な審議をする。

 次に、経営協議会。こちらは、学内外の理事と本部職員の他に、学外委員か
らなる。ここでは、大学経営に関すること、つまり予算配分や新たな施設や組
織の設置に関わる概算要求など、主に金銭関係の事項について審議などを行なっ
ている。

 法人化によって、今後国側から受け取る運営交付金がさらに減少することが
予想される。実際その影響で授業料の値上げが決定し、寄付金や新たな財源の
確保などについても動き出している。そういったところに学外の有識者から助
言を、ということから学外の委員がいるはずだ。しかし、実際の会議では学外
委員の半数が欠席ということも少なくない。

 教育研究評議会は、主に理事と各学部や研究科の代表から構成される。ここ
では、大学入試に関すること、授業カリキュラムや、海外の大学との学術交流、
教授や講師などに関する規定、新たな研究機関の設立など、教育研究に関する
事項を審議する。

 他にも、学生寮や課外活動に関することなども審議している。4つの会議の
中では、学生にとって最も身近なことを審議するものだといえよう。

 学長選考会議は、経営協議会や教育研究評議会などから委員が選出される。
この委員は、学内だけではなく、学外の委員も含まれなければいけないことに
なっている。次の学長選出から、この会議を通じて学長が選出されることにな
る。

 以前のような学長選挙は行なわない。教育評議会や経営協議会からの推薦か、
教授や助教授からの推薦で候補者となり、その後選考会議の面接などを経て決
定される。以前よりも民主的であるとされる一方で、学内の教授が選出された
場合は、各学部の利益が優先されるのではないかとの懸念もある。

 これら4つの会議は、それぞれに主として審議する内容は異なっている。し
かし、中期目標や学内組織の改組など、大学全体にかかわることは、学長選考
会議を除く3つの会議でそれぞれ審議を行う。

  ◆    ◆

 これらの会議の議事録は、インターネット上でも公開されている。ただ、決
定した規約などは見ることができるものの、審議の経過や具体的内容に関して
の表記はなく、配布資料の明示もない。審議の経過や具体的にどのようなこと
を話し合って決定されたのか、ということはよくわからない。

 また、これらの会議の構成委員は、他の会議とも掛け持ちしている場合も多
い。つまり、会議ごとに主に審議していく内容を分担してはいるが、異なる会
議で同一の委員が同じ案件を審議する場合があるということになる。

 会議の頻度も審議内容もばらばらであるから、情報の共有には都合が良いの
かもしれないが、やはり審議の公平性という面を見ると少し不安があるのでは
ないだろうか。

 これらの会議は、学生や他の大学関係者にとって重要なことを審議している
はずの会議である。しかし、そこで実際に何をしているのか、ということはあ
まりに知られていない。

 確かに、インターネット上で公開されており、誰でも閲覧することが出来る
が、その事実を知っている人がどれだけいるのだろうか。ただ告知もせずにた
だ掲示しておけば、そのうち見るだろうということではいけない。決定事項に
関して、本当に学生や大学関係者の理解を得たいのならば、もっと積極的に細
かな情報提供や開示をしていくべきだろう。