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新首都圏ネットワーク

『朝日新聞』2005年7月19日付

京大模試を京大で 国立大、独立法人化で裁量増す


 京都大で今年、7回にわたり「京大模試」が予定されている。独立行政法人
化で大学の裁量が増し、国立大を会場とした模試が可能になった。「あこがれ
のキャンパスで模試が受けられる」と高校生らには好評だが、「営利目的での
会場提供にあたる」として否定的な大学もあり、国立大側の判断は割れている。

 京大では昨夏、京都市左京区のキャンパスで大手予備校の河合塾と駿台予備
学校の京大模試があった。今年は8月15日に「京大入試実戦模試」(駿台予
備学校)▽同28日に「京大即応オープン」(河合塾)があるほか、河合塾が
さらにセンター試験や私大向けの模試の実施を打診し、8〜10月に計5回予
定されている。

 主催者側は「国立大で模試なんて到底無理だと思っていた。ダメもとで打診
してみたら借りることができた」(河合塾)と京大の柔軟な対応に驚きを隠さ
ない。

 京大は04年の法人化後、施設の貸し出しの基準を緩和。国または国に準じ
た機関にしか貸せなかったのを、営利を目的としない条件つきで、「官公署ま
たは会社などが講演会、試験などに使用する場合」も許可することにした。

 野木正博広報課長は「予備校は受験産業なので営利目的ではないとは言い切
れないが、京大を目指す生徒らのためになると判断した。それに、優秀な生徒
らが入試にチャレンジするきっかけになる」と話す。

 京大を目指す予備校生(18)も「キャンパスに足を踏み入れることで京大
で学ぶ自分の姿を想像でき、頑張ろうという思いが強まる」と話す。

 しかし、国立大の対応は分かれている。

 昨年、予備校から要請があった神戸大は「営利目的になると判断して断った。
今後、話があれば再度考える」。東京大広報課は「全学部共通の建物である安
田講堂は営利目的には貸していない。各学部の建物は各学部の判断に任せてい
るが、一般に貸していると聞いたことがない」と話す。

 文部科学省国立大学法人支援課は「キャンパスにマンションやホテルを建て
るようなことは認められないが、学生のためになるという一定の公共性がある
と判断して、国立大学が予備校の試験会場に貸すことは十分ありうる」という。

 大学に詳しい筑波大学大学研究センター長の山本真一教授(教育学)は「少
子化で受験人口が減る中、予備校側は大学のブランドを生かした模試をするこ
とで受験生を獲得でき、大学側は高校生らに関心を持ってもらえるきっかけに
なる。校舎の有効利用の面でも、他大学に広がるかもしれない」と指摘する。