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新首都圏ネットワーク

『朝日新聞』2005年7月14日付

福井県、4国立大志望者だけ特訓計画 高教組は中止要請へ


 福井県教育委員会が、東大、京大、福井大、金沢大の4国立大学を志望する
県立高校3年生のみを対象にした夏季講習会を8月に計画している。「県内に
は大手予備校がない。合格率を上げるだけでなく、生徒が学校を超えて集まり、
切磋琢磨(せっさたくま)できる」(高校教育課)との理由からだが、4大学
の志望者は3年生の2割足らずで、県高校教職員組合は14日、「一部の生徒
を特別扱いするのは教育基本法に反し、県立高校の予備校化を進めることにな
る」として県教委に中止を申し入れた。

 この夏季講習は8月上旬の4日間、福井市内の県立高校2校を会場に開く。
「東大理系」「京大文系」などの10コースで、90分の講義が1日に3コマ
あり、計2日間受講する。講師は、県立高校教諭が務め、受講料は無料。

 県教委によると、県立高校に在籍する約6500人のうち、東大の志望者は
54人、京大72人、金沢大473人、福井大567人で、対象者は1166
人と、全体の18%。

 現場の教師からは「わずか2日の講習で効果は期待できず、県教委のパフォー
マンスでしかない」との批判の声も上がる。県高教組は「教育を受ける機会は
どの生徒にも平等に与えられるべきだ」と反発する。

 県教委は西川一誠知事のマニフェストに全国上位の学力の達成が盛り込まれ
ているとして、02年度から毎夏、大阪や名古屋の大手予備校に高校教諭数人
を派遣研修に出したり、県立の進学校に教諭を重点配置するなどの施策をとっ
ている。4国立大学の合格率は学力の指針の一つとしている。

 <学習塾を経営する教育評論家の小宮山博仁さんの話> 税金で運営される
公立の学校にはさまざまな教育目標があるはずで、大学合格だけを目的にする
のはおかしい。基礎学力を身につけさせ、社会にどのような貢献ができるのか
を考えさせる場であるはずだ。