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新首都圏ネットワーク

《文科省資料》

さる6月17日に開催された国立大学法人学長等会議において文科省高等教育局長が
行った説明の『概要』(当日配布)を入手しましたのでお知らせします。

本資料は、国立大学法人学長等会議で配布された文科省文書を本事務局が
そのままHTML形式で電子化したものであり、従って本文中の誤字・脱字等は
原著者の責任です。なお、読者諸氏の利便性を考え、同文書が引用している
資料・文献のうち公開されているものについては、本事務局がタグをつけて
アクセスできるようにしました。

2005年7月12日 国立大学法人法反対首都圏ネットワーク事務局

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国立大学法人学長等会議における高等教育局長説明(概要)
平成17年6月17日

1はじめに

本日は、ご多忙のところ、ご出席をいただき感謝。

法人化1年。一言で1年というが、100年に一度と言ってもよい法人化と
いう大改革の準備に当っては、学長や機関長の先生方におかれては一方ならぬ
御労苦があったものと拝察。また、さらに(後程大臣から申し上げるように)、
この1年で国立大学は、経営から教育研究にわたる国立大学らしい新しい様々
な取組みを積極的に展開。文部科学省としても、このような各大学の前向きな
改革努力をしっかりと支援すべく、全力を尽くす所存。

以下では、現下の諸課題について、予め頂戴した質問に対する回答もおりこ
みながらご説明。

2今国会に提出している法案関係

まず、今国会に高等教育局から提出している2つの法律案について。

第一は、【資料高−6】の富山県内の三大学を統合して新しい「国立大学法人
富山大学」を設置するとともに、筑波技術短期大学を四年制大学化することを
柱とする国立大学法人法の初めての改正案で、既に国会で成立し、先月25日
に公布。衆参両院における国会審議では、法人化1年の各大学の取組み状況を
積極的に受け止め、さらに国立大学の教育研究の活性化を図るベきとの指摘多
数。関係大学の改正法成立に向けてのご尽力に感謝。特に筑波技術短期大学は、
衆参両院の委員会視察にご対応いただくなどご高配。厚く御礼。

第二は、【資料高−7】の6月14日に衆議院を通過し、現在参議院で審議が
行われている学校教育法の改正法案。これは、国立大学協会のご意見も踏まえ、
@教育研究の活性化、国際的な通用性の観点からの大学の助教授・助手に関す
る制度の見直し、A短期大学卒業者への学位授与、といった制度改正を行うも
の。各大学におかれては、法改正の動向に留意いただき、教育研究の活性化の
ための教員組織の在り方の見直しをお願いしたい。

3国立大学法人を取り巻く環境について

社会や国民は国立大学に対して高い関心と期待。

@骨太方針2005、資源配分方針等
まず、今月末に閣議決定が行われる見込みの「経済財政運営と構造改革に関
する基本方針2005」
、いわゆる「骨太方針」は、現在まさに議論が行われ
ているところであるが、後程申し上げる「公務員の総人件費改革」の議論のほ
か、「骨太方針2004」と同様に、「高等教育の質的向上を図るため、機関に
対する既存の支援策の在り方を見直し、国立大学法人間、国公私立を通じた競
争原理に基づく支援ヘのシフトを促進する」旨の記述も盛り込まれる見込み。

次に、総合科学技術会議において、昨日(6月16日)、「平成18年度の科
学技術に関する予算、人材等の資源配分の方針」
が策定【資料として配布】。も
とより、平成17年度の資源配分方針と同様、「国立大学法人等については、国
民や社会に対する説明責任を果たすことを前提に、重要とされる活動を積極的
に実施できるよう所要の運営費交付金を措置し、個々の法人の特徴に応じ、優
れた科学技術活動を行えるようにすることが重要」と指摘されており、国立大
学法人の運営費交付金などの基盤的な経費が競争的経費と車の両輪をなすもの
として重要であるとの認識が提示。他方で、

@「モノから人へ、機関における個人重視へ」と政策的な視点を移行、
A科学技術基本計画と独立行政法人、国立大学法人等の科学技術活動の整
合性を総合科学技術会議がチェックする「国立大学法人等の科学技術活動
の把握・所見とりまとめ」の実施、

といった記述。これについては、国立大学関係者にも尽力いただきながら、国
立大学の果たす役割の重要性や教育研究の自主性・自律性に配慮した内容とな
るよう調整。

また、総合科学技術会議においては、現在、来年度からスタートする次期科
学技術基本計画の策定に向けた議論を展開中。これについても国立大学協会を
適時情報交換しながら対応。

いずれにしても、文部科学省としては、引き続き、法人化を契機とした各大
学の改革意欲、取組みを一層エンカレッジする観点から、運営費交付金などの
基盤的な経費をしっかりと確保するとともに、21世紀COEプログラムとい
った国公私を通じた切磋琢磨を促す競争的な経費の充実にも努力。

A行政改革等の動向
他方、行政改革の流れはなお大きいものがあり、昨年12月24日に閣議決
定した「今後の行政改革の方針」では平成17年度からの5年間に10%以上
の国家公務員の定員の削減を図るとともに、地方支分部局の抜本的な見直しが
求められていたが、「骨太方針2005」の検討過程では、新規に増加する定員
をカウントしない定員削減計画ではなく純減目標を掲げた公務員の総人件費改
革が議論の爼上に。これらの議論が、国立大学法人や独立行政法人などにどの
ような影響を及ぼすのかは現在のところ不明。国立大学協会ともよく連絡。注
視願いたい。

4平成18年度概算要求について

@運営費交付金について
次に、国立大学法人の運営費交付金について説明。

昨年に引き続き、渡し切りの交付金である運営費交付金を始めとする学内の
さまざまな資源を柔軟に再配分することにより、新たな教育研究組織の編制や
教育研究プロジェクトの実施などの取組みを引き続き積極的、機動的に行って
いただきたい。

文部科学省としても、「特別教育研究経費」と「教育研究組織係数」という枠
組みで各大学の意欲的な取組みを支援。特別教育研究経費は、昨年同様、「教育
改革」、「研究推進」、「拠点形成」、「融合連携」及び「特別支援」の5つのカテ
ゴリー。学部・研究科といった教育研究組織について新たに整備を行う場合で
あって、学内の資源配分だけでは対応が困難で特に必要がある場合には、各国
立大学法人の運営費交付金の算定基礎となる「学部・大学院教育研究経費」に
教育研究組織係数をかけることにより必要な経費を措置。

なお、特別教育研究経費と国公私を通じた競争的資金との関係についてのご
質問をいただいているが【横浜国立大学】、特別教育研究経費は、各国立大学法
人が、その役割を踏まえた教育研究活動の着実な進展を図れるようにするもの
であり、「社会・経済的な観点からの需要は必ずしも多くはないが重要な学問分
野の継承・発展」(『我が国の高等教育の将来像(答申)』)など国立大学の役割
を踏まえた、各国立大学法人の中期目標・中期計画に沿った大学教育の改革や
学術研究の推進、教育研究設備の整備等、各国立大学の個性や特色を活かした
教育研究上の意欲的な取組みを重点的に支援するために設けられた経費。他方、
21世紀COEプログラムや特色ある大学教育支援プログラムなどの国公私を
共通に支援する補助金は、大学が行う教育研究事業の中からプロジェクト単位
で、国公私を通じた競争原理に基づいて特に優れた取組を選定し、支援するも
のであり、設置形態を問わず、世界トップレベルの研究教育拠点の形成や全国
レベルで他の大学の参考となる特色ある取組みを支援。

また、運営費交付金による教育研究の基盤をなす設備の整備について【宮崎
大学】は、平成18年度概算要求においては、更新の必要性、現設備の経年の
検証に加え、利用計画の策定が十分になされているかなど計画的な整備の推進
が重要との認識。このような観点を踏まえ、教育研究の基盤をなし、導入・更
新が速やかに必要な教育・研究用設備については、適切に対応。

A今後のスケジュールについて
平成18年度の国立大学法人運営費交付金の概算要求については、【資料高−
1】のとおり、5月19日付で概算要求関係書類の作成・提出を依頼。今後の
日程は、6月23日までに各法人から概算要求関係書類の提出を受け、7月6
日から13日でヒアリング。8月中旬に政府の概算要求基準を受け、各法人の
事業を選定し、8月末日に財務省に概算要求の運び。

「概算要求基準」は、例年、8月上旬に閣議決定されており、本年も政府全
体としては例年以上に厳しいものが予想されるところであるが、法人化のメリ
ットを最大限活用した各大学の意欲的な取組みが一層促進されるよう文部科学
省として支援していくことが必要との考え方のもと、昨年同様、支援に必要な
予算の確保に最大限努力してまいる所存。

B「運営費交付金による教育研究活動の支援について」
平成18年度における各国立大学法人の教育研究活動については、それぞれ
の目標や理念、経営戦略等に則り、中期目標・中期計画に沿って、自主性・自
律性のもと取り組んでいただくものであるが、文部科学省としては、社会経済
の変化や学術研究の進展等を踏まえ、【資料高−3】の2ベ-ジ目の(1)〜(4)
に示した活動を支援。

各大学を個性、規模、種別、機能の別に分けて特別教育研究経費を配分すベ
きとのご質問をいただいているが【愛知教育大学】、例えばその(2)にあると
おり、様々な社会的要請や学問的バランス等を踏まえた、個性溢れる各法人の
活動を支援。

また、各大学から提出された特別教育研究経費等に関する概算要求について、
文部科学省として調整するに当たっては、それぞれの大学の個性や特色に配慮
しつつ、国立大学の学長等を経験した方など有識者で構成される検討会にその
調整方針等を諮るなど、透明性・公正性の確保にも十分留意。その際、審査結
果の公表についてご質問をいただいているが【埼玉大学】、平成17年度の特別
教育研究経費の採択にあたっては、外部有識者の意見も聴きながら、各大学の
重点事項としての優先順位を尊重しつつ調整。各大学からの特別教育研究経費
に関する問い合わせ等については、概算要求前の相談を含め、適時、種々の問
い合わせや相談に応じているところであり、不採択の場合の状況等についても、
問い合わせて頂ければ対応。なお、特別教育研究経費は、あくまで運営費交付
金の一部であり、21世紀COEやGPなどの国公私を通じた競争的資金とは
異なるもの。また、各大学からの申請が概算要求に直結し、予算折衝で財務省
の査定を受けるものであることはご承知おき頂きたい。

各大学におかれては、予算要求するに当たって、法人化の趣旨を踏まえた特
色ある優れた取組みを取り上げていただきたい。このことが、全体としても必
要な予算の確保につながるものと思料。

C授業料標準額について
授業料標準額についても質問【お茶の水女子大学】。国立大学の授業料標準額
については、経済状況にかかわらず、学生に進学機会を提供するという役割を
踏まえ、適正な水準を維持する必要があると考えているが、従来から、教育の
機会均等の理念を踏まえつつ、大学教育を受ける者と受けない者との公平の観
点や私立大学の授業料の水準など社会経済情勢等を総合的に勘案して、授業料
改定を行ってきたところ。現在のところ、平成18年度に授業料標準額を改定
することは考えていない。今後も従来と同様に、社会経済情勢等を総合的に勘
案して、予算編成過程において、必要に応じ検討。

なお、法人化前の国立学校特別会計においては、近年の授業料改定時の増収
予定相当額については、財務省の査定において厳しい国の財政状況を勘案し、
国立大学に対する税金の投入割合の縮減を図る観点から、その全額を「一般会
計からの繰入れ」を減額。しかしながら、平成17年度予算案においては、
営費交付金算定ルール
上、授業料標準額改定に伴う増収予定額(81億円)は
交付金の減額要因となり得たところ、運営費交付金総額が減額とならないよう
配慮。この場合、各国立大学法人に措置する教育研究経費等の割合については、
特段ルールがあるものではないが、財務省との折衝において、授業料標準額改
定に伴う増収予定額の10%相当額を各国立大学法人の教育研究経費等に措置
し、90%相当額を各法人からの要求を踏まえ、全法人を通じて定年退職者の
増等に伴う退職手当の増額や大規模キャンパス移転等に伴い必要となる移転経
費や建物新営に伴う設備購入費などに充当。

5経営上の諸課題について

以下では、経営上の諸課題について4点にわたって説明。

@人件費管理等について
「人件費」については、法人化し、運営費交付金についても人件費と物件費
の区分を設けないこととしたことから、各大学の自由度は飛躍的に高まるとと
もに、交付された運営費交付金を踏まえて、自らの責任において中長期的な視
野も踏まえながら人件費を管理する必要。

例えば、国大協のアンケート調査では24%の大学が学内の定員(それに相
当する人件費、員数)の管理を実施。32%が「総額管理方式」。32%が両者
の併用。さらに人件費を管理する際、その在り方を見直すための工夫や改善方
策としては、@組織及び業務の見直し、A高度な専門性を有する職員の採用に
よる業務の質の高度化、B給与体系の見直し、C外注化の活用、などが考えら
れるところ。

なお、これに関連して、人事院勧告と運営費交付金との関係についていくつ
かの大学から質問【埼玉大学、お茶の水女子大学、福井大学、豊橋技術科学大
学、熊本大学】。これについては、法人化により国立大学法人の教職員の身分は
非公務員となったことから、給与についても各国立大学法人が定める給与支給
規程に基づき支給。また、この運営費交付金算定ルールにおいては、国による
人件費・物件費といった積算区分を設けずに、各国立大学法人が自由な人事設
計や組織運営がより機動的・弾力的に可能となるように配慮しているところで
あり、人事院勧告を直接反映させる仕組みではない。したがって、仮に今回の
人事院勧告により、地方における俸給水準が引下げられたとしても、各国立大
学法人の運営費交付金が減額されるようなことはない(なお、前述のとおり、
経済財政諮問会議のいわゆる「骨太の方針2005」における「公務員の総
人件費抑制」の具体的な内容は現段階では不明)。

一方、国立大学法人の給与については、国立大学法人に準用する独立行政法
人通則法
第52、63条において「社会一般の情勢に適合したものとなるよう
定めなければならない」旨規定。また、閣議決定(平成16年9月10日)に
おいても「独立行政法人(国立大学法人及び大学共同利用機関法人を含む。)の
役職員の給与改定に当っては、国家公務員の給与水準を十分考慮して適正な給
与水準とするよう要請」。各国立大学法人においては、人事院勧告も考慮した上
で適正な給与水準となるようにすることが求められる。

なお、退職手当については運営費交付金算定ルールにおいても、特殊要因経
費としての措置額は国家公務員退職手当法により算定する額とされているとこ
ろから、仮に人事院勧告により退職手当に変更が生じれば、平成18年度運営費
交付金算定にあたり影響。

A附属病院経営について
附属病院は確かに大学の中では一つの部局であるが、教育・研究と並び診療
という機能を有しており、投じられている予算やマンパワーの大きさ、自己収
入の大きさなどを踏まえれば、国立大学法人の経営に大きな影響力を持つとい
う意味で、経営者として常に大学全体の経営の観点から配慮しなければならな
い存在。経営の改善・効率化を図りながら、附属病院としてその存在を地域や
全国に示し続けるためにも、学長自身が附属病院経営の最高責任者であるとの
認識をもっていただきたい。特に、病院経営の改善に当たっては、卒後臨床研
修が義務化されるとともに包括評価制度が導入され、一方で効率化が、他方で
診療収入の増加が求められ、そのためには、場合によっては、附属病院に対し
て学内の資源を再配分することも経営戦略の一つとして考えられることに留意
願いたい。

B剰余金の取扱いについて
剰余金の翌事業年度への繰越【東京海洋大学、横浜国立大学】については、
独立行政法人と基本的に同様、損益計算上の利益が生じた場合に、行なうベき
事業を行なったことを説明いただくことにより経営努力認定として行なう仕組
み。その際、国立大学法人の主たる業務である教育研究は、相互に密接に関連
し、達成度や進捗状況を客観的に立証することが困難であるという特性を有し
ているため、その特性に配慮し、業務の達成度や進捗状況が説明可能な業務に
ついては、その説明をしていただくが、その他の業務については、学生の収容
定員に対する在籍者の割合が一定割合(平成16〜18年度85%、19〜2
1年度90%)以上であることを説明いただくことにより行なうベき事業を行
なったとの説明とし、その説明をもって損益計算上の利益の全額について経営
努力として認定を行なう取扱い(他の独立行政法人にはない簡便な認定方法。

これについては財務省とも調整済み。国立大学法人評価委員会の理解も得てい
る)。文部科学省としても、現在の経営努力認定の仕組みは、国立大学法人の業
務運営にインセンティブを与える重要な仕組みと認識。仕組みをよくご理解の
上、積極的かつ適正にご活用いただき、この仕組みを維持充実できるよう、ご
協力願いたい。

なお、総務省政策評価・独立行政法人評価委員会は、経営努力認定に関する
直接の権限はない。

これに関連して、各大学では初めての財務諸表の作成に取り組んでいること
と承知。同じ財務諸表でも企業とは見方は異なるし、大学の規模や特性によっ
ても随分と違う捉え方が必要。文部科学省としても、できるだけ各大学の努力
が社会にきちんと受け止められるように財務諸表の承認や公表の在り方を工夫。

C民間資金活用による土地信託等について
なお、学生寄宿舎等の整備のため民間資金活用による土地信託等の可能性に
ついて質問【東京農工大学】。複数の大学において、施設設備について法人化の
メリットを活用すベく新たな整備手法について様々な検討を行っていると聞い
ているが、このような積極的な取り組みについては文部科学省としても可能な
限り支援。ご質問の土地信託については、基本的には可能。ただし、国立大学
法人はまさに国の事務・事業を担うものであることから、私立学校とは異なり
法令上収益事業を行うことは認めらず、土地信託を行う場合においても、一般
向けマンションの建設等については困難。信託財産の活用対象は大学の教育研
究活動との関連付けが必要。

なお、学生寄宿舎の寄宿料については、文部科学省令で標準額を定めている
が、現在、寄宿料に係る標準額撤廃の是非について国大協においてご検討いた
だいており、その検討結果も踏まえて対応。

※以下では【資料高−4】の「高等教育関係資料」の順番に従い、順次説明。

6国立大学法人の評価について

評価については1〜2ぺージ。
はじめての年度評価が1ベ-ジの(2)Aのようなスケジュールで実施。年
度評価は、大学のマネジメント面の評価が主な対象となると考えており、業務
運営や財務内容の改善等に向けた各大学の特色ある取組みについて実績報告書
やヒアリング等の場で積極的にアピール願いたい。

なお、年度評価については、「年度評価における教育研究の取り扱いについて、
教育研究の高度化などをめざした特色ある取り組みは年度評価の対象となるの
か」との質問【東京外国語大学】。各年度終了時の評価は、各年度における中期
計画の実施状況について評価を行い、教育研究の状況については、その特性に
配慮し、専門的な観点からの評価は行わず、外形的・客観的な進行状況を確認
し、特筆すベき点や遅れている点についてコメントを付すこととしている。し
たがって、各年度終了時の評価の際には、教育研究の内容に踏み込んだ評価は
行わないが、教育研究に関することであっても、外形的・客観的な進行状況を
確認できる条件整備や大学としての施策など「特色ある取り組み」については、
積極的な情報発信を予定。

また、「平成16年度実績報告書に関するヒアリングのための概要資料につい
て、国立大学法人の負担を少しでも軽減するために、実績報告書の「全体的な
状況」並びに項目毎の特記事項で代えることができないか」【東京外国語大学】
との質問。実績報告書のヒアリングについては、7月中旬に各法人の業務運営
及び財務内容等について、大学側と委員との意見交換を中心に実施することと
しており、限られた時間で円滑かつ効果的に実施するため、資料作成に協力願
いたいと考えているが、資料の様式は自由であるので、例えば実績報告書の「全
体的な状況」及び項目毎の特記事項から法人が特に説明したい事項をまとめて
いただいても結構。

なお、昨年度から国公私立大学を通じた認証評価制度もスタート。これは、
設置認可制度の弾力化に伴って新たな質を担保する仕組みとして制度化された
もので、国立大学法人評価とは趣旨・目的等が異なるが、いずれにしても、各
国立大学法人における評価に関するコストが過大とならないよう配慮。

7今後の高等教育政策の動向

@国公私立大学を通じた大学教育改革の支援
3〜4ページ。
21世紀を担う人材養成において、大学の役割は従来以上に重要なものとな
っており、大学における教育改革を推進するためには、国立大学間のみならず、
国公私立大学を通じた適切な競争的環境を醸成し、それにより、各大学がそれ
ぞれの特性を生かした大学教育改革に一層取り組むことができるよう支援する
ことが重要。そのためには、設置者別の経常的な基盤的経費助成とともに、国
公私を通じた競争原理に基づくプロジェクト支援の充実・強化が必要不可欠。
これらを踏まえ、目に見える形で国公私立大学を通じた「人材養成」を支援す
るため、平成17年度予算に529億円を計上。

具体的には、

@「21世紀COEプログラム」「特色ある大学教育支援プログラム」
「現代的教育ニーズ取組支援プログラム」「大学教育の国際化推進プロ
グラム」
(新規)、「法科大学院等専門職大学院形成支援プログラム」「地
域医療等社会的ニーズに対応した医療人教育支援プログラム」
(新規)、
A「魅力ある大学院教育」イニシアティブ(新規)
B「大学・大学院における教員養成推進プログラム」(新規)

の各プログラム。各大学が、これらの事業を活用して、自主的・自律的な運営
のもとに、特色ある大学教育改革を推進し、国立大学としての役割や社会的要
請に対応した人材養成に取り組まれることを期待。

A中央教育審議会大学分科会の審議状況
5ページ。
中央教育審議会は、平成17年1月に中央教育審議会答申として「我が国の
高等教育の将来像」
が取りまとめた。本答申では、@高等教育の量的変化の動
向、A高等教育の多様な機能と個性・特色の明確化、B高等教育の質の保証、
C各高等教育機関の在り方、D高等教育の発展を目指した社会の役割、につい
て述ベられており、その内容を実現するために必要と考えられる「早急に取り
組むベき重点施策(「12の提言」)」等の提言。

大学分科会のもとに置かれている大学院部会では、現在「大学院機能の強化」
について審議を行っており、今月13日の中央教育審議会総会で中間的な取り
まとめ
。今後は、意見募集等の手続きを経て、夏頃には最終的な取りまとめ。

B教員養成分野の抑制方針の撒廃
6〜7ページ。
教員養成分野については、昭和61年度以降、必要な整備が達成されたとし
てその入学定員等の増は抑制されていたが、平成17年3月、有識者会議にお
いて「高等教育における国の役割の変化や教員需要の動向等を考慮し、教員養
成分野に係る大学設置又は収容定員増等の抑制方針は、この際撤廃することが
適当」と報告。これを受け、文部科学省では、関係の告示を改正し、平成17
年4月より教員養成分野に係る大学設置又は収容定員増等について、認可の審
査の対象に。

なお、この報告においては、抑制方針の撤廃後の留意点等として、抑制撤廃
が全国一律に教員の養成規模の量的拡大を促すことを意図するものではないこ
と、質の向上について十分留意することなどを指摘。

C教員養成における専門職大学院の在り方
7ぺージ。
中央教育審議会教員養成部会で、現在教員養成における専門職大学院の具体
的な制度設計について検討中。これまでの部会等における審議では、「開放制の
教員養成」の原則の下、教員としての基礎的一基本的な資質能力の育成は学部
段階で行われることを前提としつつ、専門職大学院制度を活用することが適当
との意見で一致。今後、入学対象者や修了要件、教育課程・教育方法等を具体
的に検討。

D医学・医療に関する諸課題について
7〜9ぺージ。
昨年2月に、厚生労働省、総務省、文部科学省で開催した「地域医療に関す
る関係省庁連絡会議」において、当面取り組むベき課題について取りまとめ。
その中で、医師需給見通しの見直しを踏まえた大学における医師養成の在り方
の検討が提言。厚生労働省においては、現在、「医師の需給に関する検討会」
開かれており、平成17年度中を目途に医師需給見通しに関して報告書が出さ
れる予定。こうしたことを踏まえ、喫緊の課題である地域医療を担う医師養成
について対応するとともに、現在の医学教育改革の進捗状況を十分に分析し、
学部及び大学院等における医学教育の今後のさらなる改善・充実に資するため、
本年5月より有識者からなる「医学教育の改善・充実に関する調査研究協力者
会議」
を、開催し検討を実施。

次に、昨年5月に学校教育法が改正され、平成18年4月より薬剤師養成の
ための薬学教育の修業年限が6年に。6年制薬学教育の実施にあたっては、各
大学における適切なカリキュラム編成及び教育指導体制の充実に加え、@実務
実習体制の整備、A共用試験の実施、B第三者評価システムの整備などが重要
な課題。とりわけ、長期実務実習の必修化と実習施設の確保の義務付けなどへ
の対応については、病院や薬局の協力なくしては成り立たない。附属病院を置
く大学にあっては、実習学生の受入要請等に対し、特段のご配慮・ご協力を願
いたい。

E奨学金事業の充実・留学生交流の推進
9〜10ぺージ。
平成17年度予算においては、@大学・大学院等における無利子奨学金の貸
与月額の増額(1,000円増額)、A貸与人員の増員(平成16年度96万
5千人→平成17年度103万4千人)などにより、事業全体で、690億
円増の7,510億円の事業費で、奨学金を貸与。奨学金を希望する学生等
のほぼ全員を採用できる状況。

なお、奨学金は、返還された奨学金を後進育成のための資金として再度活
用する制度となっており、近年における滞納額の増加は重大な問題。各大学
等において、奨学金返還の重要性の周知について一層のご協力願いたい。ま
た、各大学におかれても、独自の奨学金を給付するなど、奨学制度を経営戦
略上の課題ととらえて、その充実に取り組まれるよう願いたい。

留学生の受入れについては、各大学におかれても、留学生が急増している
状況の中で、留学生の入学者選抜に当たっては、平成14年度から実施し
ている「日本留学試験」も積極的に活用しつつ、真に修学を目的とした者が
選抜されるよう取り組んでいただくとともに、入学後の在籍管理に当たって
も、留学生の修学状況等の把握、修学に対する指導等、適切に対応されるよ
う願いたい。

F適正な経理執行等
12ページ。
昨今、科学研究費補助金の不適正経理、診療材料等の年度越え支払い、設置
計画書類の虚偽記載など国民の国立大学への信頼をゆるがす事件が発生。法人
化を契機にした各国立大学法人の数多くの積極的な取組みによって折角形成さ
れた国立大学の信頼は、1件の事件で脆くも崩壊するおそれ。適切かつ厳正な
対応を切に求めたい。

8おわりに

法人化1年の今、国立大学の改革に多くの国民が高い関心を持っている今こ
そ、各国立大学法人が、社会経済発展のブレークスルーの重要な担い手となり
得ることを多くの国民が実感できるよう、特色のある教育研究活動を思い切っ
て行い、それを積極的にアピールすることにより、国立大学法人に対する社会
の支援を獲得するための好機。

国立大学法人を支援するという文部科学省の立場を踏まえつつ、国立大学法
人と文部科学省がともに努力することが何よりも重要。

なお、一部に法人化後、文部科学省の各国立大学への対応が「冷たくなった」
と指摘する向きもあると聞くが、法人化後の新しい対等なパートナーシップの
確立を意識した対応が場合によってはクローズドな印象を与えた可能性。文部
科学省としては、私どもがスプリングボードとなって各国立大学法人が飛躍し
ていただければ本望。ご相談等があれば前広に気軽にお立ち寄りいただきたい。
また、必要に応じお伺いしたいと考えているので、是非お声がけいたたきたい。
学長、機構長の先生方のさらなるご尽力と私どもとの一層の連携をお願い申
し上げ、説明としたい。