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『産経新聞』2005年7月1日付 国立大学アジア志向 海外拠点設置 1位中国、2位タイ/米国を抜く 経済交流活発/留学生確保も 国立大学が海外に設置した研究・事務拠点は昨年十月現在で計七十九施設あ り、このうち中国が最多の十三施設、二位はタイの十二施設と米国(十施設) を上回り、アジア志向が進んでいることが文部科学省の調査で分かった。昨年 四月の独立法人化を経て、大学も従来の欧米志向から、経済交流が活発化して いるアジア諸国との交流にシフトしている。少子化による「大学全入時代」を 控え、優秀なアジアの留学生を確保したいとの意図も見える。 国立大学の海外拠点は平成十五年に二十五施設、同十六年は二十施設が新設 された。この二年間に開かれたのは中国が九施設、米国が六施設。インドネシ アやタイを含めると、東アジア諸国への進出が欧米を上回る勢いで増えている。 東京大学は今年四月、北京に代表所を置いた。狙いは(1)学術交流の促進 (2)中国の産学官連携の推進(3)中国の優秀な学生の受け入れ−など。開 所式で小宮山宏総長は「両国の学術交流の促進は、アジアの発展を学術の面か ら保障することにつながる」と、学問分野での日中連携の重要性を説いた。 背景には、中国経済の発展がある。神戸大学は昨年三月、北京に「大学院経 営学研究科・中国コラボレーションセンター」を開設した。「センターでは上 海などの日本企業へ行って、具体的な問題解決を手助けしている」(黄●・神 戸大教授兼同センター長)。北京大学と共同で日本企業に勤める中国人の現地 幹部に、日本企業の経営手法や企業文化についての研修も行っている。 日本企業の進出にともなう研究需要は根強く、「靖国問題や海底資源などの 外交問題で影響を受けることはほとんどない」(黄センター長)という。 神戸大学が進出の原資としたのは、文科省が十四年度から始めた「卓越した 研究拠点」(COE)となる大学に研究費を集中配分する「二十一世紀COE プログラム」だ。国立大学の独立法人化に加え、従来、学生数などで一律に定 められていた研究費を、研究内容によって“差別化”する政策も海外進出を後 押ししている。 研究以外にも大学をアジアへ駆り立てる要因がある。少子化の進行で当初、 平成二十一年といわれていた「大学全入時代」が十九年に到来することが明ら かになったからだ。学生数の減少から私立の萩国際大学(山口県)が経営破綻 (はたん)したが、淘汰(とうた)の波は国立大学も無縁ではない。 今回の調査でも、海外に事務所を開設した理由に「留学生受け入れ」「現地 研究者のリクルート」をあげる大学が目立つ。 日本の大学・大学院で学ぶ留学生数は約十一万人。国別では中国が最も多く、 全体の三分の二にあたる約七万七千人。次いで韓国、台湾、マレーシア、タイ と上位五カ国・地域をアジア諸国が占める。 アジアの学生をいかに受け入れるかが、授業や研究の水準確保に不可欠となっ ている。 文科省は「拠点の設置には、学生数を確保したいというだけでなく、これま で欧米に行っていた優秀なアジアの留学生を日本へ呼び込みたいという狙いも ある。言葉の問題がネックだったが、英語で授業を行う大学が増えており、そ ういった点のPRも必要になってきている」(国際課)と分析している。 ◇ 【最近の国立大学の主な中国進出例】 北海道大触媒化学研究センター(北京オフィス) 東北大金属材料研究所(IFCAM 北京オフィス) 東京大地震研究所(中国地震局地質研究所) 東京大(北京代表所) 一橋大(北京事務所) 京都大情報学研究科(知識基盤COE中国拠点) 京都大経済学研究科(上海センター支所) 滋賀大(大連事務所) 神戸大大学院経営学研究科(中国コラボレーションセンター) 島根大(寧夏大学・島根大学国際共同研究所) ※文科省まとめ ●=石へんに隣のつくり |