トップへ戻る  以前の記事は、こちらの更新記事履歴
新首都圏ネットワーク

『朝日新聞』2005年6月24日付

大学にローソン、マクド…… 全入時代、生協に「強敵」


 ローソン、マクドナルド、吉野家……。若者になじみの店が、大学の構内に
相次いで出店している。学内物販といえば生協が定番だが、「大学全入時代」
を控え、より魅力的なキャンパスにしようと大学が誘致する例が増えている。
店側は競合の少ない場所で安定的に営業でき、大学側にはテナント収入が入る
などのメリットもある。

 大阪府大東市にある大阪産業大(学生約1万1600人)は、構内に生協が
ないため、5年ほど前からコンビニや飲食店などを誘致してきた。現在ではロー
ソン、ファーストキッチン、紀伊国屋書店など11店が出店している。同大学
は、出店を学生の福利厚生の向上策と位置づけ、テナント料はとっていない。

 昼食どき、ローソンではレジに行列ができる。ほぼ毎日、弁当や飲み物を買
うという3年の男子学生は「コンビニがない生活なんて考えられない。キャン
パスにあるのも当然でしょう」。

 同大学の広報担当者は「学生をどう集めるのかが問われている時代。なじみ
の店が構内にあるのとないのとでは、受験する生徒の見方も変わってくる」と
話す。

 ローソン(大阪府吹田市)は大学側の求めに応じる形で、5年ほど前からキャ
ンパスへの出店を本格化した。昨年12月には国立大学法人で初めて、京都大
に店を出した。いま、全国の大学に10店。3月に開業した東京大では、もう
1店増やす計画だ。

 品ぞろえは街中の店とそう変わらないが、学びの場であることに配慮して成
人誌や酒類は置いていない。教科書を売っているところもある。

 日本マクドナルド(東京都新宿区)は1月末現在で、広島大や京都産業大な
ど23大学に出店。同社から打診するのと、大学側から依頼されるケースで半々
という。ドリンクを飲み放題にしたり、チーズバーガーを他店より安くしたり
と、「学生が利用しやすいよう工夫している」という。

 このほか、吉野家は東京工科大と拓殖大に、ドトールコーヒーも東京工科大、
サンクスも明治大などに出店している。

 この業界は立地条件が大切だが、売り上げが良いとすぐに競合店が近くにで
きるのが悩み。大学なら夏休みなどに客が激減する難はあるものの、「閉ざさ
れた商圏の割に利用者が多い」(ローソン)、「中心的な販売対象になる若者
が確実に集まる」(マクドナルド)といった魅力がある。

 一方、大学は学生のニーズに応えられるうえ、大半がテナント料を受け取っ
ている。出店企業が大学に寄付をする例もあるという。

 全国大学生活協同組合連合会は、「大学の福利厚生は生協がその中心を担う
のが最適だと思う」としつつ、「学生の要望の変化を把握し、対策を強めてい
きたい」と話す。

 とはいえ、ある大学生協幹部は「生協は商品の品質や営業時間など、学生の
ニーズに応え続けてきた歴史があり、学外から店舗が入って来たからと変わる
ことはない。そもそもあえてコンビニなどをキャンパスに入れる必要があるの
か」と強気だ。

 大学経営に詳しい大手予備校河合塾の担当者は「少子化の時代に、大学にとっ
て学生や収入源の確保は重要課題。外部からの出店は今後も続くだろう」とみ
ている。

 ■大学全入時代 文部科学省の試算では、07年度には大学・短大に進学を
希望する志願者数と、入学者数が、ともに69万9千人となる。入りたい学校
を選ばなければ志願者全員が入学できる時代が来る、とされている。