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新首都圏ネットワーク

『朝日新聞』2005年6月20日付夕刊 論説委員コラム 窓

最下位ニッポン


 米国の教育政策研究所(EPI)は、若者が教育を受ける制度や機会について調査
を続けてきた。非政府組織だが、多くの研究者が協力している。

 そのEPIが先ごろ、欧州と豪州、日本などの先進16カ国・地域を対象に、国民
から見て大学に進学しやすい国かどうかを調べ、ランキングを発表した。

 この調査では、授業料や生活費、奨学金などの金額を単純に比べていない。
各国の1人当たり国内総生産(GDP)や、通貨の購買力、税制も参考にして、大学
に進学する時の「財布の余裕」を、できるだけ実態に近づけて算出した。

 数値を比べた結果は、(1)スウェーデン、(2)フィンランド、(3)オランダが上
位に名を連ね、日本はニュージーランドの後塵を拝して、最下位となった。

 日本政府にとっては意外な結果かもしれない。だが、大方の国民は「最下位」
と聞いても驚かないのではないか。

 下宿させれば、4年間の学費と生活費は1千万円近くかかる。奨学金は返済
しなければならないものがほとんどだ。受験までの教育費も家計を圧迫してい
る。

 高等教育に対する財政支出がGDPに占める比率は、日本の場合、経済協力開発
機構(OECD)30ヶ国平均の半分である。一方、家計の負担は平均の2倍だ。

 政府が高等教育に十分なカネを出さず、親と学生が高負担にあえぐ国、ニッ
ポン。そんなイメージが、EPIの調査でますます広がるかもしれない。

<清水建宇>