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新首都圏ネットワーク

『北國新聞』2005年6月8日付

金大医学部に県内枠 10人程度を優先合格 医師不足解消へ検討


 奥能登など僻地(へきち)の医師不足を解消するため、金大医学部が石川県
内の受験生を優先的に合格させる「地域枠」を設ける方向で検討に入った。定
員の一割に当たる十人程度を予定しており、早ければ二〇〇八(平成二十)年
度入試から導入される見込み。地元定着を条件に奨学金を貸与する案も浮上し
ており、行政や病院、医師会などと連携しながら、優秀な医師の養成に努めて
いく。

 金大医学部の入試は現在、前期日程で八十人、後期日程で十五人、三年に編
入学する学士入学で五人の計百人を定員としている。検討を始めた「地域枠」
は後期日程の定員を十人として県出身者だけに門戸を開く案などが挙がってお
り、具体的な選考方法については今後、詰めていく。

 僻地の医師不足は全国的な問題となっており、信州大や札幌医大、岩手医大
など七つの国公私立大で既に地域枠を設け、来年度入試でも弘前大や宮崎大な
ど六つの国立大で導入が決まっている。いずれも推薦入学で五―二十人を入れ
ている。

 一方、金大は昨年一月に、来年度入試から全員に面接を課すと発表している
ほか、数年前からAO入試の導入を検討しているが、入試にかかる多大な労力
の割に、どれだけの効果があるかについては議論が続いている。

 金大医学部への北陸三県の合格者は三割前後だが、「合否ラインは一、二点
差。それなら地元の人材を優先するほうが、地域に対するメリットは大きい」
(古川仭医学部長)という判断もあり、地域枠の導入が急浮上。既に県や県医
師会との協議の場でも、地域枠について話し合っている。

 古川医学部長は「例えば、奥能登で生まれ育った人材を医師に育てることで、
地元に定着してくれる可能性が高くなる」と指摘し、県や市町などにも協力を
求めながら、新たな奨学金制度の創設など、地域医療の安定に貢献していく方
針を示している。