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新首都圏ネットワーク

『河北新報』2005年6月8日付

岩手大、就職支援に本腰 生き残りへ実績重視


 岩手大はキャンパス内にジョブカフェの出張相談スポットを開設するなど、
学生の就職支援に力を入れ始めた。就職率は9割を超すものの、計算に入らな
い就職浪人は多く、私大勢に押されて大手や地元有力企業への就職では苦戦が
続く。独立行政法人化で大学の存在意義が問われる中、「就職実績は生き残り
の大きな鍵になる」と危機感を強めている。

 「3年ぶりの内定が出たのは良かったが、本来は毎年入ってほしい。喜んで
いるようでは情けない」。今年の就職戦線がピークを迎えた5月上旬、岩手大
の平山健一学長は表情を曇らせた。

 言及したのは、来年卒業予定の学生が得た岩手銀行(盛岡市)の内定。岩手
大は長年、地元有力企業の同行に人材を送ってきたが、昨年春と今春の卒業生
は就職ゼロに終わった。「3年連続ゼロとなれば異常事態」とささやかれ、今
年の就職戦線が注目された。4人が内定を得たという報告を得て関係者はとり
あえず胸をなで下ろしたが、「相変わらず有力企業への就職は厳しい」という
受け止め方は変わっていない。

 5月1日現在でまとめた今春卒業生の就職率は、90.0%(工学部97.
2%、農学部94.3%、教育学部85.4%、人文社会科学部85.2%)。
昨年の88.9%を上回り過去10年で最高になったが、他大学と同様に慣例
として公務員試験や教職員試験の浪人数は母数の就職希望者から除いてある。

 就職担当教授の1人は「公務員試験を再び受ける就職浪人は毎年100人前
後いる」と推定しており、実際は70%台まで下がるとの見方も強い。

 「岩手銀行への就職に象徴されるように、大手企業や地元有力企業への就職
は年々厳しくなる一方」と後藤周悦就職支援課長。「早くから就職準備をする
首都圏などの私大生に押されている。岩手大生は自己表現が下手といわれ、面
接のノウハウを持つ私大生に印象で負けている面があるようだ」と分析する。

 先の就職担当教授は「公務員試験は3年生から勉強を始めても受かるわけが
ない。優秀な学生でも準備不足が響き、不合格になったり、民間への方向転換
が遅れたりする場合も多い」と語る。

 岩手大の就職支援強化はこのような学内の危機感を受けて本年度、本格化し
た。就職支援室を課に格上げし、5月中旬には県の若者就職支援施設「ジョブ
カフェいわて」の出張相談スポットを学内に開設した。

 国立大で同様施設の開設は珍しく、専門家を招いた週2回の相談日を設け、
ジョブカフェいわてと連携して就職ガイダンスを開く。ガイダンスの対象を1、
2年の学生に広げる試みも、昨年より回数を増やした。

 独立行政法人化後は大学の中期計画目標達成度が予算・交付金に反映される
仕組みになり、人材育成にかかわる就職支援は重要なポイントになってきた、
といわれる。

 「岩手大の悩みは東北の国立大に共通する課題」(リクルート東北支社の大
学担当者)という指摘もあり、岩手大の取り組みが注目される。