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『毎日新聞』2005年6月3日付 教育博:大学改革や教育の情報化について講演 2日から東京臨海副都心の東京ファッションタウンビルで開かれている「N ew Education Expo2005」は、3日もデジタル教材、教 育用のソフトウエアやシステムの展示が行なわれ、高等教育の課題やIT活用 の学力への影響などのテーマでパネルディスカッションや講演が行なわれた。 ◇「大学の将来とは?」 文部科学省大学改革推進室長の山崎秀保さんは「大学改革の動向と国公私立 を通じた大学教育改革の支援」と題して講演、臨時教育審議会から中央教育審 議会にいたる大学改革の取り組みの流れを説明し、「知識基盤社会を支える人 材を育成するために、大学の役割は増大している。大学改革の方向としては、 ゆるやかに機能的に分化していくのではないか」と述べた。また、「国として は、多元的な財政支援をしていく必要がある。『骨太の方針2005』では、 従来の設置者ごとの経費助成から、国公私大を通じた競争的な措置にシフトす る」と述べた。 続いて和歌山大学の小畑力人監事が「和歌山大学法人化1年の現場から」と 題し、立命館の大学改革の経験を交えて、成功のポイント、改革の課題などを 語った。 小畑監事は「1985年度に4万人台だった立命館大学の志願者数を、91 年度には10万人に増やし、以後その人数を保っている。私大の場合は志願者 数の増大は、すなわち収入の増大だ。10万人の受験料は30億円の収入にな る」と述べ、「論文式や数学の成績を重視するなど多様な入試を行った。また、 受験生に来てもらうのではなく、大学から出向くという発想で『全国縦断入試』 を始めるなど、顧客=学生という視点に立った入試改革をした」と説明した。 さらに、「国立大には、教員1人あたりの学生数が少ないという強みがある が、それだけでは充実した教育を保障したことにはならない。強みを生かした 教育プログラムを作る必要がある」と話し、「和歌山大では、学生の満足度の 向上を目指して優れた教育実践をする。教職員が危機感を共有したときから改 革が始まる」と述べた。 ◇岐阜県の教育情報化の取り組み 教育の情報化で全国トップクラスの岐阜県の取り組みについて、岐阜県教育 委員会の小山徹・総合教育センター長が報告した。2000〜04年に行なっ た「21世紀『岐阜県型』情報教育推進プロジェクト」では、パソコンやネッ トワーク整備の「ハード」、コンテンツ開発・収集と活用促進の「ソフト」、 教員研修などの「支援」の3本柱で行なったと報告、「3本が凸凹になると、 一番低いところに合ってしまうので同時進行させた」と述べた。県の情報ネッ トワークインフラを活用して、総合教育センターと県立学校、市町村の地域イ ントラネットを通して各学校、県庁、県の施設などをつなぐ「学校間総合ネッ ト」の整備を進め、学校に4200台のパソコンを導入、1億3000万円を かけて715本の教育用コンテンツを開発収集するなど情報化推進の経緯を報 告した。 小山センター長は「ITの整備は、お金との競争だ」と述べ摘、「お金」を 確保するために「首長、財政当局の理解を得ること、現状に即した大胆な将来 構想を提示して理解を求めることが大事。教員の力、質を高めたいという“補 助線”を1本引くことで理解を得られることもある」と述べた。 また、これまで開発・収集したコンテンツや学校の情報を発信するため、 「岐阜県まるごと学園放送局」を10月に始めることを報告、膨大な情報から 必要な情報を探すのではなく、こちらからすぐれたコンテンツを積極的に出し ていきたい。いいものを学校に出していく。いいものを発信すれば、いい情報 が帰ってくる。これで岐阜県の教育の情報化の流れが変わるだろう」と期待を 語った。 ◇つくば市立二の宮小の取り組み つくば市教育委員会で全市の教育の情報化を推進してきた毛利靖教諭は、4 月に二の宮小に異動した。同小はIT化が進んでおらず、職員室にはパソコン もLANもない状態だったが、環境を整備し、ITの便利さや授業での活用方 法を見せると、先生たちは「使いたい」とIT活用に積極的になったという。 毛利教諭は「学校のIT化は子供のためというスタンスでやると、先生たちは 分ってくれる。トップのリーダーシップも大事だが、子供の成長を第一に挙げ、 そのための道具として必要だ、というスタンスを忘れてはいけない」と述べた。 各教科でITの活用に取り組んだ状況を報告、理科の植物の名前調べで、採 集した草花についてコンピュータを使って調べさせたところ、子供たちは意欲 的に学習し、自分で植物の名前を調べ、コンピュータでまとめて2カ月で植物 図鑑をつくったと述べた。毛利教諭は「子供たちは花や葉の細かな様子まで観 察し、多くのことを発見した。パソコンを使うと観察力が落ちるというのはウ ソだ。きちんとした方法でやれば、観察力を高めることが出来る」と話した。 また、「理科が好き」という子が65%だったクラスで、ITを使った結果、 みんなが「理科が大好き」というようになり、登校途中で目に付いた花を採集 してきて調べるなど、体験的活動が増え、観察力も向上したと話した。 eラーニングで学習した児童が学力が向上したという結果も報告し、「すべ てがITによるものとは思わないが、eラーニングで子供たちの意欲は変わっ た。ITが入ると、授業のスタイルが変わる。今までのように、先生が用意し て先生が話すだけでなく、場面に応じた授業ができ、子供たちに発見する機会 が生まれる。ITを使うことで授業のアイデアが出てくる。ITは子供たちの 施行のメカニズムを変え、その結果、成績も上がるのではないか」と述べた。 【平野秋一郎 岡礼子】 |