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新首都圏ネットワーク

『産経新聞』2005年5月30日付

制度発足から2年目 法科大学院ピンチ
定員割れ競争率低下 適性試験志願者2割減


 制度発足から二年目の法科大学院が、早くも正念場を迎えている。今春は、
全七十四校の六割にあたる四十五校で定員割れ。入試の第一関門となる適性試
験の志願者も、今年は前年に比べ二割減となり、下落の一途だ。一期生に対し
て来年初めて行われる新司法試験の合格率が、少子化の中で生き残りを目指す
各校の命運を握ることになりそうだ。

 「受験エリートではなく、多様な人材が法曹界に進めるように」と、司法制
度改革の中核として鳴り物入りで始まった法科大学院。しかし、第一弾として
昨年開校した六十八校は、軒並み今春の志願者を減らした。人気を上げたのは
わずか二、三校だった。

 平均競争率も、昨年の一三・〇倍から七・二倍に。関西地方のある私大は、
競争率が二・三倍にまで低下。国立大でも二・八倍にとどまったところもある。

 関東の有力私大は、定員の七割しか入学者を確保できなかった。「学生が集
まらなかったのではなく、歩留まり予測を誤り、合格者が予想以上に他大学に
流れた」と関係者は釈明するが、多くの実務家教員が必要で自習室や図書館の
充実も義務づけられるなど多大な経費がかかるだけに、大学側は“想定外”の
出来事に頭を抱える。

 法科大学院は構想当初、「合格率七−八割」をめざした。しかし、予想以上
に多くの大学が参入し、総定員は五千八百二十五人まで膨れ上がった。うち約
二千人が初年度の新司法試験に挑戦する。一方で、法務省の司法試験委員会は、
十八年度の法科大学院修了者の合格枠を九百−千百人と決めた。単純計算では
合格率50%。十九年度には枠が拡大されるものの、修了者も増えるため、合
格率は四−三割まで低下するといわれている。

 現役学生からは早くも、「七割が法曹になれると聞いて、仕事をやめて進学
した。だめだったら、どうしてくれるんだ」「貯金をはたいて授業料を捻出(ね
んしゅつ)している。三年で合格できなかったら、貯金が底をつく」といった嘆
きの声が聞かれる。

 今後についても、入試に不可欠な適性試験の志願者が三年連続で減少してお
り、下げ止まり傾向は見られない。関係者は「受験生は情報に敏感。志願者が
減り続けたり司法試験合格率が低迷する大学は、将来淘汰(とうた)される」と
指摘する。

 法科大学院開設の影響で、一時は学生減がささやかれた大手司法試験予備校
も、今では「予備校なしでは司法試験に合格できないような法科大学院もある。
逆にハイレベルのところは、予備校で予習復習しなければついていけない。い
ずれにしても学生は、予備校に通う」と自信満々だ。