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新首都圏ネットワーク

『読売新聞』中部版  2005年5月24日付

患者の利便、快適性を重視 独立法人化から1年名大付属病院の改革
◆医療経営管理部立川教授に聞く


 名古屋大付属病院が、独立法人化されて1年が経過した。法人化により、病
院自体の努力による経営の安定化が強く求められている中、この1年間、先頭
に立って改革に取り組んできた同病院医療経営管理部の立川幸治教授=写真=
に話を聞いた。(片岡 太中部支社編集委員)

◇  ◇

 ――独立法人化されて、名大病院はどのように変わりましたか。

 「変わったところ、変えたところは随分ありますが、まだ十分ではないとい
うのが実感です」

 ――変えたところや、変わったところは。

 「外来ロビーの照明を明るくしたほか、プライバシー保護の点からいくつか
の部署の改修、クレジットカード使用可能な現金精算機の設置など、患者さん
の利便性、快適性を重視して、改革を進めていることです。また、来年には検
査や手術施設が新築した建物に移転します。そこで、もう少しアメニティを改
善したり、患者さんや市民の立場で、医学や医療の情報に触れることができる
スペースの設置などを考えています」

 ――この1年間、何に重点を置いてきましたか。

 「法人化前から進んでいた大改革から少しギアダウンして、足元の業務の無
駄チェックなどの改善に重点を置いてきました」

 ――地道な取り組みからスタートしたわけですね。

 「名大病院に本当に期待されている役割とは何かを中心に、『やるべきこと』
『やれること』を整理し、現実的に考えて実行してきました」

 ――その理由は。

 「本質を見失ったり、かけ声倒れの改善に終わらないことを防ぐためです」

 ――改革に取り組んでいる過程で分かった問題点は。

 「財務的な数字だけでいえば、今年度は法人化前以上に改善しました。しか
し、その一方で、職員全体が多忙な業務に振り回されるという現状も見え始め
ています」

 「医療は人の手を介して行われるサービスです。従って受け手の満足するも
のを提供するには、そのサービスをどう改善するかが、肝心です。また、どう
してそんな状況にあるのかということを、社会に伝える説明責任もあります。
そして、何より、こう変えたらどうか、という提案とその実行責任も大学には
あるということが問題点として浮かび上がりました」

 ――今後取り組んでいくべき課題は。

 「内部での改善だけでなく、地域の中核病院も含めて他の医療機関との連携
を様々な点で進めなければならないと思っています」。

 ――そのためにするべきことは。

 「地域医療センター機能を、昨年度から強化してきました。この取り組みは
派手さはないかも知れませんが、名大病院が変わる努力を継続している中で、
重要なことだと認識しており、さらに充実していかなければと思っています」