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新首都圏ネットワーク

『毎日新聞』2005年5月22日付

博士の就職難:高い専門性に低い評価 毎コミ調査


 理工系学生の採用は増やしたいが、博士には二の足−−。就職情報誌を発行
する毎日コミュニケーションズ(本社・東京都千代田区)が来春の採用予定を
企業に聞いたところ、こんな結果が出た。採用時に重視する能力は学部卒、大
学院修了を問わず「コミュニケーション能力」を挙げた企業が最も多く、博士
の「専門性」への評価は低いことが浮き彫りになった。

 調査は2〜3月に実施し、国内401社が回答した。学部卒、修士課程修了、
博士課程修了と分けて採用予定を調べたのは初めて。

 来春の理工系学生の採用を今春より「増やす」とした企業は、学部卒対象で
は30.3%だったが、修士は17.5%、博士では7.1%にとどまった。
逆に博士を「採用予定なし」「採用中止」は計41.1%に上った。

 採用に際して重視する能力(複数回答)は、7割以上の社が「コミュニケー
ション能力」を挙げた。「チャレンジ精神」「行動力・実行力」など上位は学
部卒、院修了とも共通だが、「学位に応じた基礎知識」は博士を採用予定の企
業でも32.8%にとどまった。

 調査を担当した栗田卓也・企画推進課長は「博士は専門性が高すぎて使いに
くいというイメージが、採用担当者には依然として強いようだ。実際に博士と
接する機会が増えれば、企業の姿勢も変わるのではないか」と分析する。

 90年代後半からの大学院重点化政策で博士課程修了者は年々増え、04年
度には約1万5000人に達した。大学などの常勤研究職は限られており、文
部科学省は博士の多様な進路開拓を重要な施策としている。企業にも「年齢に
かかわらず、問題解決能力など実力を評価して採用を行う」ことを推奨してい
る。【西川拓】