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2005年5月20日付 九大TLO、エクイティを対価に創薬ベンチャー企業に技術移転実施 承認TLO(技術移転機関)である産学連携機構九州(福岡市)は、創薬ベン チャー企業のASPION(徳島市)にエクイティ(新株予約券)を対価に医薬品系 の特許の独占実施権を供与済みであることを、2005年5月20日に公表した。成長 途上にあるベンチャー企業が事業資金の確保に苦慮するケースが多い中で、将 来の成長を見込んでエクイティを対価に技術移転する先駆的な事例になりそう だ。大学の研究成果の中から有望技術シーズを、研究開発力は高いが資金力が 弱いベンチャー企業に技術移転する仕組みとして、注目を集めそうだ。 今回技術移転したと公表した対象となる特許は、九大大学院工学研究院応用 化学部門の後藤雅宏教授の研究グループが開発したS/Oサスペンション技術。 S/Oは「Solid in oil」の略で、薬物輸送システム(DDS、ドラッグ・デリバ リー・システム)の手段となる技術である。後藤教授の研究グループは、親水 性である薬剤の表面に、界面活性剤を疑似細胞膜として包むことで、水には溶 けず、油にだけ溶ける性質を与える。当該薬物が水に溶けないように安定させ、 人体内での吸収効果を高めるDDSとして機能する。 同特許の実施権を供与されたASPIONは、同技術を消炎・鎮痛(ちんつう)効 果が高い非ステロイド薬剤に適用しの製品化を図る。薬剤を口から飲んで摂取 する経口摂取時に問題となる胃潰瘍(いかいよう)が、S/Oサスペンションを適 用した薬剤ではほとんど起こらないデータを得たという。また、皮膚から吸収 する薬剤の経皮摂取に適用すると、経口摂取並みの吸収が実現する見通しを得 ているという。 ASPIONは2004年9月に設立された医薬品の研究開発と製造販売を手がけるベン チャー企業。九大TLOによると、同社の藤井尊社長は「S/Oサスペンション技術 は当社が発想できない技術シーズと評価している」という。特別な原料が必要 なく、加熱殺菌などの製造技術で対応できる点が優れていると評価したもよう。 九大TLOとしては、九大が持つ優れた独自の技術シーズを、研究開発力に優れ たベンチャー企業に技術移転できる仕組みを築いたことで、大学からの技術移 転が加速するとみている。このエクイティを利用する仕組み構築によって、大 学発ベンチャー企業への技術移転が加速すると予測する。 大学の事実上の関連組織であるTLO獲得したエクイティによる新規株を売却す る際のルールづくりとその内容の公表、売却の経過などを公表するなどの透明 性を高めないと、利益相反などの問題が浮上するとの指摘もある。文部科学省 や経済産業書の審議会などでは、技術移転を加速させる手段として、TLOのエク イティ取得とその管理体制などの整備を指摘している。今後は、TLOによるエク イティの管理体制などの議論が活発化しそうだ。(丸山正明=産学連携事務局 編集委員) |