トップへ戻る  以前の記事は、こちらの更新記事履歴
新首都圏ネットワーク


『朝日新聞』2005年5月19日付 声欄

 低収入家庭も通えた国立大
 高校教員 遠藤 芳男 (埼玉県松山市 55歳)

 今月はじめ、私の勤める定時制高校の生徒から進学相談を受けた。

 大学に進学したいが、入学金や年間授業料はいくらかかるのかもたずねられ
た。私は息子の私大進学から、私大だと少ない方でも、100万円はかかると
答えた。「もっと安いところは」の質問に、国公立なら安いはずだと話すと、
不安そうな顔がいくぶんか和らいだ。

 さて、いくらだろうと、受験雑誌などの資料を調べて私が青くなった。

 なんと初年度納付金が約82万円。来年度からは学校ごとに、それぞれ値上
げも予定されているとあって、比較的安い私大とほとんど変わらなくなる。

 私自身が地方の国立大の学生だった35年前、授業料は月1千円だった。6
人兄弟の末っ子、父はすでに年金生活、わずかな収入しかなかった我が家で、
私が大学を卒業出来たのは、国立大で授業料などが安かったためである。

 収入の少ない家庭の子どもは、大学に行くのが大変な世の中になってしまっ
たのか。教育は国家百年の大計であったはずなのに。