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新首都圏ネットワーク


『中国新聞』2005年5月20日付

大学発起業、目標の半分 中国コラボ会議が3カ年実績

 ■商品の実用化は成果

<マスタープランの実績と目標> 実績 当初目標
共同研究の実用化 3000件 1000件
大学発ベンチャー創出 100社 200社
産学官連携事業費 140億円 200億円
実績は概数、事業費は2004年度の金額

 中国地域産学官コラボレーション会議は十九日、産学官連携の推進を目指し
た二〇〇四年度までの三カ年計画「マスタープラン」の実績をまとめた。共同
研究の成果を実際に商品の形などにする実用化数は当初目標の三倍に上ったが、
大学発ベンチャーの起業は目標の半分にとどまった。研究をビジネスへ展開す
る課題が残り、本年度からはさらなる起業を促す五カ年計画「アクションプラ
ン」に取り組む。

 同会議は、中国地方の企業、大学、行政の計七十五社・機関で構成し、数値
目標を掲げて三カ年計画を実施してきた。千件を目指した共同研究の実用化は、
三倍の約三千件の実績を上げた。昨年四月の国立大の独立行政法人化を機に、
大学から企業への働き掛けが強まったことなども背景に、商品化や特許取得な
どが相次いだ。代表例では、野村乳業(広島県府中町)や中国醸造(廿日市市)
が広島大大学院医歯薬学総合研究科(広島市南区)との共同研究で、酒かすを
生かしたヨーグルトや入浴剤を商品化。出雲土建(出雲市)は島根大産学連携
センター(松江市)の技術を生かして、天井裏などの除湿に使う特殊な木炭を
発売した。

 一方、大学発ベンチャーの創出は、約百社と目標の二百社の半分にとどまっ
た。岡山大大学院自然科学研究科(岡山市)などが〇二年、医薬品の製造販売
のベンチャー企業を同市に設立し、株式上場を目指している例などはあるが、
同会議は「投資環境の整備や、会社経営の人材供給などがまだ十分ではない」
とみる。

 行政、大学、経済団体が産学官連携のために計上した事業費も〇四年度で計
約百四十億円と、目標とした約二百億円の約七割の水準にとどまった。同会議
は「連携の基盤は築けたが、具体的な新産業創出や新事業展開が相次ぐ状況に
は至っていない」と分析する。

 同会議はこうした実績を踏まえ、起業など成功事例の増加が最重要課題とみ
て、本年度から五カ年計画の「中国地域産学官連携アクションプラン(仮称)」
を策定する。金融機関との連携を強めたり、地域単位の支援組織づくりにも力
を入れたりするなどの取り組みをスタートさせる。六月六日に広島市東区で会
議を開いて正式決定する。