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新首都圏ネットワーク


『読売新聞』中部版 2005年5月14日付


教育ファイル 明日の人に
三重大学経営協議会委員 宮崎 由至(みやざき よしゆき)さん


外部発信する法人化大学に


 宮崎さんは今月から、国立大学の法人化に伴い三重大に設置された経営協議
会の委員を務めている。「教育は素人。委員を引き受けて少し不安です」と語
る一方で、「耳障りなことでも、どんどん言う」と、民間の視点からの大学改
革を提言していくつもりだ。



 ――どのような提言を考えていますか。

 外部に発信できる特色を作ることが基本。例えば、日本にないような学部や
学科を作るとか。気概があれば、できるのではないでしょうか。私の立場で言
えば、ほかにはない新商品を開発し、市場に売り出すということと同じ。「某
大学と一緒」ではまず勝てない。中身の充実、差別化をしなければならない。

 ――法人化された三重大に期待することは。

 地域産業との連携ですね。大学には、民間に出せば有効活用できる優秀な技
術がたくさん眠っていると思います。民間に向けて学内の技術を紹介し、民間
のニーズを大学の研究者に伝える「営業マン」が必要でしょう。また、「地域
との連携」を掲げるならば、学生だけでなく、県民を、果ては国民を「お客様」
と思う姿勢も必要です。

 ――経営者の立場から、求められる人材は。

 高度経済成長のころは、中庸な性格で、上の指図に忠実な人材が重用された。
でも、今は自分で決断し、何をしたいか見つけないといけない。上の指図通り
に動くだけの人間は必要ではなくなってきています。営業だってインターネッ
トでできるようになりました。しかし、お客様と対面してニーズを聞き出し、
そのニーズに沿った商品の開発を上層部に提案するのは、人間でなければでき
ない。

 ――どう学生を育てますか。

 教官も学生も思い通りに行動したらどうでしょうか。学生という身分は、社
会人と違い、失うものはほとんどないのだから、もっと積極的に行動してもい
い。就職活動で「私はこういうことがしたいので、貴社に来ました」と、堂々
と主張できる人材を育てたいと思います。

目 創業百五十年の会社を父から継いだ。「今の時代、安定志向は最大の不安
定志向といえる。将来の保証は誰にもできないのだから、自分の行く末を決断
できる学生でなければ」と説く。三重大に新風を吹き込むことができるか、注
目したい。

(増実 健一)