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『毎日新聞』岩手版 2005年5月8日付 サンデートーク:県立大学長・谷口誠さん=盛岡市 /岩手 4月1日の県立大(滝沢村)の独立行政法人化と同時に2代目学長に就任し た谷口さん。外務省に入省後、OECD(経済協力開発機構)などに出向、活 躍した谷口新学長に大学のビジョンを聞いた。【念佛明奈】 ◇国際社会に通用する人に−−県内に視野限定しないで −−在任中に取り組みたいことは。 県職員になる学生がゼロに近いと聞き驚きました。目標は4年間で10人。 公務員試験の準備は通常の講義だけでは対応できないので、総合政策学部を中 心に県職員を志望する学生を募って、特別講師を招いた対策コースの創設も考 えています。 −−地元志向の学生が多い現状をどう思いますか。 学生は約7割が県内出身者で、地元への就職希望が多い。それだったら県庁 を狙えと言いたいのです。しかし県外に出てさまざまな経験を積んだ人が、故 郷に戻って地元に貢献する例はいくらでもある。最初から県内だけに視野を限 定せず、学生にはどんどん外に出ることを勧めたいですね。 −−国際社会に出よというのもその一環ですか。 岩手が生んだ新渡戸稲造、後藤新平らそうそうたる人材のDNAは今も受け 継がれているはず。外務省に入りたい学生がいるなら学長として、時間を割い て相談に乗る準備はあります。「地域に根差した県立大」と「国際的な活躍」 は矛盾しません。東北人、日本人として自分の考えを持ち、それを表現できる 「いい日本人」になれば自然と国際社会で通用する人間になるからです。 −−西沢潤一前学長の理念はどう継承していきますか。 西沢さんが力を入れたソフトウェア情報学部は本学の目玉。特殊な電磁波 「テラヘルツ波」などを他学部で応用し、産業界と協力して地域貢献につなげ ていきたいですね。並行して、まだまだ発展の余地があると思われる総合政策 学部を軸とした特色も打ち出していきたいと考えています。 −−法人化で実現すべきことは何ですか。 予算を県の助成金に頼っているのが現状ですが、法人化したからには自立し た経営を確立すべきです。企業との連携、県のシンクタンクを目指すなど、独 自で研究費を調達する手段はいくらでもあるはず。1年間はすべてをじっくり 観察し、その後改めるべきところは改めていく予定です。 ■人物略歴 ◇たにぐち・まこと 1959年に外務省入省、在ニューヨーク日本政府国連代表部特命全権大使 などを経て、90年から96年までOECD事務次長。早稲田大現代中国総合 研究所長などを経て、県立大学長に就任。主な著書は「東アジア共同体−−経 済統合のゆくえと日本」(岩波新書)など。75歳。 |