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新首都圏ネットワーク


『毎日新聞』2005年5月7日付

社会人教育:大学院改革 設置基準緩和、定員を4倍増に


 政府は7日、超高齢社会の到来をにらみ、定年後の再就職に必要な専門知識
や技能教育を提供する社会人教育の受け皿として、大学院改革に取り組む方針
を固めた。人口1000人あたりの大学院在学者数を、2030年までに現在
の約4倍の8人に引き上げる数値目標を設定。今後、大学院の設置基準を緩和
し、通信制や夜間大学院の拡充を図るほか、仕事と両立できるよう、職場環境
の整備などに取り組む。

 文部科学省の統計では、人口1000人あたりの大学院在学者(04年)は
1.91人。通信教育を加えても1.99人で、米国(00年で7.66人)
と比べて大きな開きがある。米国では仕事の合間に大学院で学ぶ社会人が多い
のに対し、日本は大学からの進学者がほとんどを占めているためだ。

 一方、世界保健機関(WHO)によると、心身ともに健康で自立して活動で
きる日本人の「健康寿命」は02年で75歳。30年には80歳まで伸びると
の試算もある。政府は高齢者が大学院で技能教育などを学ぶことができれば、
定年後の再就職促進につながると判断した。失業者が新たな職業能力を身につ
け、別の業種に挑戦しやすくなることも期待している。

 政府は今後、大学院設置基準を見直し、1年制の夜間・通信制大学院や大都
市のサテライトキャンパスなどを増設することで「学ぶ機会」を広げる。また、
保育所の時間延長や大学院と保育所の併設などにも取り組み、子育てとの両立
も支援する。ただし、大学院の国際的な競争力を維持するため、入学試験の廃
止などは見送る。

【中田卓二】