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新首都圏ネットワーク


『科学新聞』2005年4月8日付

第3期基本計画、骨子固まる

人材養成・確保へ総合戦略

 第3期科学技術基本計画の実質的な内容が決まった。競争的研究資金倍増や
重点化などを中心とした第2期から政策の方向を転換し、基盤的経費の重視、
重点4分野内での技術領域の絞り込み、実際に国民の役に立つイノベーション
創出のための新たな研究支援制度の導入、長期的国家戦略のもとに進めるべき
基幹技術の推進を打ち出した。また、テニュア・トラック制などを導入する代
わりにスタートアップ支援を行う米国型の人材育成戦略を示した。検討を進め
た科学技術・学術審議会の基本計画特別委員会(主査=末松安晴・国立情報学
研究所顧問)は、「第3期科学技術基本計画の重要政策」と題する中間とりま
とめを4月8日の総会に報告。総合科学技術会議はこの内容を受けて17年度内
に第3期基本計画を策定する予定だが、18年度概算要求に反映するため、5月
中には同様の中間報告を公表するという。


 今回の中間とりまとめは、あるべき国の姿や理念、5年間の投資目標などは
入っていないものの、具体的な政策目標や政策などが盛り込まれており、また
総合科学技術会議ではそうした実質的な議論は行われていないため、実態的に
は具体的な第3期基本計画の内容を形成することになる。

 大きな特徴は、科学技術への投資をこれまでの重点四分野重視型からシフト
することにある。科学技術の全分野を130領域に分け、その中から科学技術的・
経済的・社会的効果という3つの視点から30の重点領域を抽出、結果的にライ
フ、IT、環境、ナノ・材料にその融合領域がほとんどになったが、ロボット
技術、燃料電池、衛星基盤技術が重点領域に加わった。重点4分野という枠は
維持するものの、その中の特定領域のみを重点化する。

 また、研究の多様性を確保するため、まずは基盤的経費の確保を優先し、そ
の上で競争的資金を拡充するという基礎研究重視の方向を打ち出した。同時に
特定の政策目的に基づく基礎研究という枠を新たに設け、社会的効果の大きい
研究に重点的に投資をする。

 原子力や宇宙など国の安全保障に関わる研究や次世代型スパコンなど科学技
術を牽引する世界最高性能の研究設備・施設などは、国家基幹技術と位置づけ
て着実に投資する。また、「国民が科学技術投資の意義を感じられていない」
という反省から、安全・安心や経済活性化に資する課題解決型研究開発を重視
する。

 もう一つの大きな特徴は人材養成・確保のための総合戦略を打ち出したこと
だ。任期付きでない職に就く場合は「1回異動の原則」を適用するとともに、
これまで一部形式的に行われていた公募を実質化する。また、テニュア・トラッ
ク制(任期付きで採用した後、数年間の成果を見て任期なしの職にする)を分
野の特性に応じて導入する代わりに、米国の大学に見られるようなスタートアッ
プ資金を用意するとともに競争的資金の若手枠をさらに拡充する。

 女性研究者については、各機関における出産・育児との両立支援、採用数な
どについての自主的な数値目標の設定を求め、その達成状況を国が公開する。
定年後でも人件費を含めた競争的資金を獲得できるシニア研究者が、各機関で
活躍できるようにする。

 科学技術の担い手である大学については、中央教育審議会の大学院部会で今
後5年間を見通した大学院振興計画(仮称)を今年度中に策定、基本計画と連
動して国公私の大学院を充実させるための支援策を導入していく。また、ポス
ト21世紀COEプログラムを早急に検討するとともに、博士課程学生への経済
的支援を充実させる。

 競争的資金については、あり方を整理し、研究の発展段階に応じた、各制度
の趣旨・評価法・推進方策等を明確化するとともに、基礎研究の成果を実用化
までつなぐ仕組みを構築する。論文発表にとどまらない目に見える形で技術革
新を狙う「技術革新型公募資金制度(仮称)」を創設、特に大学院を中核とし
た研究拠点を形成するための「先端融合領域拠点形成事業(仮称)」を導入す
る。