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新首都圏ネットワーク


『北海道新聞』2005年4月14日付

北大大学院工学・博士課程1年生の授業料タダ 不人気脱却を狙う


 北大大学院工学研究科(中山恒義研究科長)は15日から、大学院博士課程
の1年次の学生(院生)全員を対象に、授業料(年額53万5800円)を全
額助成する制度を導入する。来年度は2年次学生にも対象を広げる構え。国立
大法人化で個性のアピールが迫られる中、各研究室が出し合う資金を原資に博
士課程の学生増を後押しし、広い視野を持った技術者育成を目指す。

 山口大や琉球大が本年度から、「成績優秀な学部生」を対象に授業料を免除
しているが、文部科学省は「国公立大の学部、大学院で授業料を全員無料にす
るのは聞いたことがない」としている。理工系学部での博士課程の敬遠は全国
的な傾向で、他大学にも影響を及ぼしそうだ。

 助成の対象は博士課程のうち、企業や国から給与が支給される社会人学生、
研究員らを除く学生で、本年度は新一年次七十一人のうち三十五人程度。研究
補助員として採用し、その報酬の形で、北大にいったん納めた授業料相当分を
支給する。

 工学研究科では工学部生の約六割が進む修士課程(二年で修了)が一学年四
百人程度なのに対し、博士課程(三年で修了)に進むのは毎年、定員百十二人
の半分前後と低迷。企業就職で博士修了と修士修了の待遇に大差ない一方、教
職員が過剰で研究者として大学に残る道も険しいことが背景にある。

 中山研究科長は「博士課程の就職率は100%だが、企業や国立研究所の縁
故採用が大半で、多様な分野へ人材を輩出しているとは言いがたい」と停滞感
を認める。

 このため、通常だと二十七歳で修了する博士課程学生の経済負担を軽減して
修士からの進学を促し、リーダー役となる技術者を養成する。同時に本年度、
大学院に工学系教育研究センターを設置し、企業から特任教授を招いてインター
ンシップ派遣先企業を開拓したり、語学の無料講習を行うなど、博士課程初の
就職支援に乗り出す。

 授業料助成総額は本年度、約二千万円に上る。工学研究科は、企業との共同
研究による外部獲得資金など十億円から、各研究室への配分額を削減して助成
費に充てる。中山研究科長は「法人化で研究成果とともに教育内容も評価の対
象となった。出身者が世界的な活躍をして工学部の価値を高めてほしい」と話
している。