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『東京新聞』2005年4月12日付 揺れる『全員任期制』 独法化の横浜市大 四月から地方独立行政法人となった横浜市立大学で、「全教員を原則任期制 とする」とした方針が揺れている。教員に任期制への同意を求めた大学側に対 し、特に三学部の統合で新設された「目玉」の国際総合科学部の過半数の教員 が、態度を留保するよう呼び掛けた教員組合に委任状を託す事態となっている からだ。任期制で競争原理を持ち込み教員の質を高めたいとする大学側だが、 思惑通りに運ばず多難な滑り出しとなっている。 (金杉 貴雄) ■大学側、思惑通り進まず 大学側によると、任期制により、教員は教授、準教授(旧来の助教授、講 師)、助手に分類。教授は五年任期で何度も契約更新されるが、準教授は五年 任期で更新は二回まで、助手は三年任期で更新は一回まで。つまり教授は継続 的に雇用されるが、準教授は最長計十五年、助手は同六年で契約が切れる。 大学側は「契約の継続を希望する準教授や助手は、契約期間中に博士号を取 得したり優れた研究実績を残したりして、教授あるいは準教授への昇格を目指 してもらう」とする。 任期制は雇用形態が変更となるため、個々の教員の同意が必要とされるが、 同意しない場合でも身分の継承が地方独立行政法人法で義務づけられているた め、従来通りの「身分の定めのない契約」として継続される。 だが、大学側は任期制を選べば(1)裁量労働制を結ぶことができ勤務時間 の自由がきく(2)基本的な一律の研究費(年三十万円)のほかに、付加的な 研究費(最高年五十万円)を優先的に配分する−などとし、有利な面があると する。 これに対し、市立大学教員組合は「雇用形態で差別的な扱いをすることは許 されない」と反発。各教員に「任期制に同意せず組合に委任状の提出を」と呼 び掛けている。 大学側は当初、三月二十二日を同意期限としたが、同意書が集まらなかった ため期限を延期している。新大学がスタートした現在でも「どの学部で何人が 同意したかは、現時点で答えられない」という。 一方、教員組合の山根徹也書記長は、新大学の二つの学部のうち組合組織率 が低い医学部については不明だが、国際総合科学部(旧商・国際文化・理学部) では教員約百二十人のうち半数以上から委任状を預かっているといい、任期制 に同意したのは、ごく一部ではないかとみている。 組合側は大学側に話し合いを求めているが、教員の処遇をめぐる混乱が長引 けば、学生の不安にもつながりかねない。 |