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大崎仁「国立大学の授業料」『IDE現代の高等教育』469、2005年4月号 ……国立大学の学生納付金が国際的に見て異常なほど高水準になっているの は、他国に例を見ない私立大学への過度の依存に起因する。国立大学の授業料 値上げは私立大学の授業料との均衡を考慮して、ということを最大の根拠とし て、長年繰り返されてきた。私立大学に学部学生の7割以上を依存している状況 で、国私間の学生負担の格差是正が問題となることは十分理解できるが、その ため国立大学の学生負担を私立大学並みにしようというのであれば、本末転倒 である。格差是正の課題は、私立大学の学生負担を如何に軽減するかにある。 私立大学の学生納付金が、公立大学の4倍以上である米国においても、格差是 正の努力は奨学金を通じて行われており、公私の学生負担の格差を公立大学の 学生納付金引き上げの根拠にするような話は聞かれない。 私立大学の授業料は、各大学の経営方針によって自由に決定されるものであ り、大学・学部によって大きく異なっている。その平均値を国立大学の授業料 の基準にするかのごとき発想が合理性を欠くことは明らかである…… ……わが国においても、国立大学を設置し支えている国民の意思は、低廉な 学費で良質の大学教育を受けられる機会の確保にあるはずである。国のレベル でも大学のレベルでも、学部段階でのこれ以上の学費負担増は、この国民から の期待を裏切り、国立大学の存在理由を危うくすることにつながりかねな い。…… 大崎仁氏は人間文化研究機構理事、元文部省高等教育局長。 |