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『世界』2005年5月号 ある大学の死――都立大学教員はいかに敗れていったか―― 初見 基 2005年4月6日、東京都による新大学「首都大学東京」(「首大」)の入学式 が行なわれ、メディアでも華々しく取り上げられた。一方、現行の都立四大学 は、2010年まで、公立大学法人首都大学東京のもとに置かれて存続する。本稿 は、「首大」に就任せず、現行の都立大学に残った1教員が、「ある大学の死」 についての個人的見解を述べたものである。2003年8月の石原都知事による唐 突な新大学構想発表以降、都立大学側が後退を強いられ敗北にいたる事実経過 と、新大学構想の問題点、そして敗因をなすであろう都立大学教員内の様相を 示す。ある大学の暴力的破壊と、それにさらされた教員・学生たちの側の苦悩 が痛恨の思いとともに語られる。 はつみ・もとい 1957年生まれ。東京都立大学人文科学研究科博士課程単位 取得退学。東京都立大学人文学部助教授。ドイツ文学専攻。専門は20世紀ドイ ツ思想・ドイツ現代文学。著書に『ルカーチ――物象化』(講談社)、訳書に カール・シュミット『ハムレットもしくはヘカベ』(みすず書房)など。 |