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『北國新聞』2005年4月3日付

「法人」富大、初の特許へ 大学帰属の2件出願


 富大は二日までに、工学部の小泉邦雄教授(知能機械学)が考案した「移乗
作業支援器具」と同学部の池野進教授(材料組織制御)、森克徳教授(低温物
性)らの研究グループが開発した「磁性を持つアルミ」を大学帰属の特許とし
て出願した。移乗作業支援器具は窒素ガスが入ったばねで要介護者の体重を支
え、移動させる際の介護者の負担を軽減する器具で、転倒防止の機能もある。
磁性を持つアルミは軽量のアルミと磁性粒子の複合材料で、高周波対応の電子
部品などへの応用が期待される。

 富大は昨年四月の法人化に伴い、大学の知的財産を一括管理する体制を整備
した。申請した二件の特許は学内の審査委員会で選定されたもので、認可され
れば法人化後初めて、同大に帰属する特許となる。通常、特許は三年以内の審
査請求を経て、出願から五、六年以内に正式認可される。

 小泉教授が考案した「移乗作業支援器具」は高さが約百二十センチで、体を
支えるアームと車輪、車輪のバランスを保つペダル、被介護者の足を固定する
ベルトなどが付いている。器具の支柱中央のガススプリングには窒素ガスが入っ
ており、被介護者が立ち上がる時にピストンが動いて圧縮されていたガスが膨
張し、全体重のうち約三十キロ前後を支えることができる。

 先端部に車輪が付いており、介護者は被介護者を抱き上げ、体を滑らせて移
動させることができる。車輪が横滑りしないように工夫されたペダルは、小泉
教授らが苦心して考案したアイデアで、バランスを崩して介護者と被介護者が
転倒しないように配慮されている。

 小泉教授は器具にモーターなどの動力を付けず、介護者が持ち運べる範囲内
の重量になるよう努めた。特許出願について小泉教授は「より軽く、安価で製
品化してくれる企業があれば、使いやすくなるように協力したい」としている。

 「磁性を持つアルミ」は富大ベンチャービジネスラボラトリーのプロジェク
ト研究の一つ。池野教授、松田健二助教授らはすでに、超伝導アルミニウム複
合材料の開発に成功しており、この技術を、磁性材料が専門の森教授、真嶋一
彦教授、西村克彦助教授との共同研究に応用した。

 磁性を持った軽量アルミは、素材そのものが磁石に引き寄せられたり、鉄製
品を引き付けるなどの磁性を帯びており、加工しやすいというアルミの特性も
備えている。用途としては、パソコンのハードディスク駆動用軽量モーターや
無線高速通信などで発生する有害電磁波の吸収体などのほか、電磁調理器具な
ど幅広い応用が可能である。

 製造実験では、大学院生の佐伯知昭さんが計画、実施に加わった。佐伯さん
は日本技術者教育認定機構(JABEE)の認定を受けた工学部物質生命シス
テム工学科材料工学コースの卒業生で、機能性複合材料の製造方法を修士論文
のテーマとしている。