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新首都圏ネットワーク


『高知新聞』コラム小社会 2005年3月28日付


 ▼今の学生からは「うっそー」の声が漏れそうだが、昭和40年前後、国立
大の授業料は月1000円だった。当時のコーヒー代を1杯100円とすると、
わずか10杯分。私立大と比べると格安だった。

 ▼この換算率が生きていたら、現在の授業料はどうなるか。コーヒー1杯が
400円とすると1カ月の授業料はその10倍の4000円。年間でも5万円
に届かない。しかし、実際の年間授業料は既に50万円の大台に乗っている。
この40年間の物価上昇は3倍程度だから、いかに国立大の授業料が上がった
かが分かる。

 ▼国立大の授業料にはもう一つの変化がある。「画一」の伝統が崩れた。4
月から値上げする大半の大学をよそに、佐賀大は据え置き、愛媛大などは上げ
幅を抑える。佐賀大は学生の負担を考えた措置と説明、減収分は合理化で対応
するという。

 ▼横並びを崩したのは「標準額」という考え方。国立大の法人化に伴い、各
大学は国の標準額を目安に授業料を設定するようになった。今回の標準額は年
間1万5000円のアップ。これ以下でもいいから佐賀大のような対応もでき
る。

 ▼市場原理の波が、かつての「象(ぞう)牙(げ)の塔」にも寄せて来たと
いうことだろうが、釈然としない点もある。市場原理に委ねると、結局は有名
大学が一段と有利にならないか。低めの授業料は授業の質にどう影響するのか。

 ▼一国の経済力と高等教育への公費負担の割合を見ると、先進国の中で日本
はかなり低い。大きな問題を棚上げしたまま大学が競わされていないか、注意
を要する。