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新首都圏ネットワーク


『朝日新聞』2005年3月24日付

入試日程、半数が見直し 全国立大学長アンケート


 全国89の国立大学法人の半数を超える48大学が後期日程廃止を中心に入
試日程の見直しを検討していることが、朝日新聞社が実施した学長アンケート
でわかった。この4月で1年になる法人化についての評価も48大学が「どち
らともいえない」と答えた。授業料は佐賀大学を除く87大学が4月から値上
げすることにしていた。

 法人化で国立大学は国から切り離され、自立した運営が認められるようになっ
た。入試については、大学独自の意向が反映し始めている。しかし、財政面で
は、文部科学省から各大学への運営費交付金削減の影響を受け、授業料の一斉
値上げにつながったことがわかる。学長の法人化への評価をみると、その意義
を判断しかねている。

 アンケートは先月から今月上旬にかけて、国立大学法人89校すべてに実施
し、政策研究大学院大学をのぞいた88校から回答を得た。法人化1年をきっ
かけに、入試の日程や方法、授業料や大学の運営方法などがどう変わろうとし
ているのかをきいた。

 入試日程については、後期日程の廃止を中心に見直しを「考えている」と答
えたのは33校にのぼった。すでに07年春の入試から後期日程を廃止(一部
学部も含む)することを決めた京大や東北大、千葉大のほか、東大、名古屋大、
九州大など旧帝大系や、群馬大、岡山大なども見直すと答えており、後期日程
廃止への流れは強まりそうだ。理由としては、「志願者確保」(高知大)、
「前期・後期の重複受験率がかなり高く、後期を設定し続けることに意味がな
く、極めて非効率」(長岡技術科学大)などを挙げている。

 今後も含め「検討中」としたのは岩手大、一橋大、大阪大、神戸大など15
校だった。

 授業料については、佐賀大以外は、87校が値上げすると答えた。しかし、
大学院などの一部課程では据え置くところもある。増加額は小樽商科大が75
00円、愛媛大が05年4月は9600円、06年度から5400円とした以
外は、すべて1万5000円だった。

 法人化で、授業料は各大学が自由に決められることになった。しかし、文科
省が昨年末に1人あたり1万5000円増の標準額を示し、その分を大学への
運営費交付金から割り引くことを決めた。今回の値上げの回答については、そ
の影響とみられる。

 「授業料の標準額値上げを見込んでの交付金の措置に懸念を覚える」(横国
大)という声もあった。

 法人化の評価そのものについては、半数以上の48大学が「どちらともいえ
ない」と答えた。「大学の裁量は増加していくが、財政的には非常に苦しい」
(山形大)と答える大学が少なくない。制度の大枠を支持しながらも、「本来
の法人が備えるべき自主性が制限を受けている」(東大)と完全な自立的運営
ができない点を指摘する大学もあった。

 「評価できる」としたのは36大学。「評価できない」は3校で、いずれも
財政面での不安を理由にしていた。

 〈国立大学の法人化〉 国立の大学・短大は04年4月から、国の組織から
離れ、独立した法人となった。活性化と特色づくりのため、学長の権限を強化、
運営に民間経営の手法を導入したり、教育や研究に対する第三者評価の結果を
予算配分に反映させたりする仕組みになった。授業料や学科の編成なども独自
に設定できる。国家公務員だった約13万人の教官や職員は法人職員になった。