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新首都圏ネットワーク


『読売新聞』2005年3月20日付

9府省任命の95委員、評価先の独立法人から金銭


 独立行政法人の運営状況をチェックするため、各府省に置かれた独立行政法
人評価委員会の全委員の17%にあたる95人が委員報酬とは別に、任期中に
自ら所属する委員会の評価対象法人から、会議出席や講演の謝礼、研究助成な
どの金銭を受けていたことがわかった。

 評価委員会には、厳正中立なチェック機能が求められており、識者らからは
「客観性に疑問が持たれる」と問題視する声が上がっている。

 民主党の尾立源幸・参院議員が108の独立行政法人を所管する10府省に
請求した資料で判明した。正規の委員と臨時委員の計約550人のうち、金銭
を受けていたのは、財務省を除く9府省の計95人。

 研修などの講師の謝礼、法人が設置している会議や懇談会の委員手当、法人
が独自に設けた第三者評価機関の委員手当などの名目で、所管府省からの評価
委員の報酬とは別に各法人から受けていた。金額は任期中の累計で、全体の約
4割が10万円以内だった。

 しかし、中には、独立行政法人でポストに就いて約900万円を受け取りな
がら、その法人の評価に携わっている文部科学省の委員(元公立大教授)や、
評価を手掛けている厚生労働省所管の法人で特別研究員を務め、約260万円
の手当を受けていた委員(私立大教授)もいた。この教授は「法人の意思決定
にはタッチしていないので、中立的な評価をする上で大きな支障はない」と語っ
た。

 ほかに評価対象の法人から研究費の助成を受けている委員も目立ち、数千万
円に上るケースもあった。多くは文科省関係で研究費助成を主な事業とする法
人が含まれるためと見られる。

 研究費など約4700万円を受けた同省の評価委員(財団役員)は「委員会
が評価対象にしている法人は複数ある。研究費を受けた法人は、私が直接的な
評価担当ではないので影響はない」と話す。また、評価対象の法人から約12
00万円で研究委託を受けた農水省の評価委員(国立大教授)は「個人でもらっ
たのではなく、共同研究プロジェクトの一メンバーに過ぎないので問題ない」
とした。

 一方、府省側は、国土交通省が「第三者的立場である法人独自の外部評価機
関の委員手当や、講演料といった一時的なものなら問題ない」、農水省が「特
定分野に詳しい専門家は限られており、こうした事例をすべて排除していると
人選が難しくなる」などと説明。しかし、厚労省の担当者は「誤解を招くので、
今後は明確な選任基準の策定も含め検討したい」と話している。

 ◆独立行政法人評価委員会=独立行政法人を所管する10府省に設けられ、
学識者らで委員を構成。法人の業務実績を評価し、問題があれば改善を求める
ことが出来る。独立行政法人には、「運営費交付金」として2004年度で計
約1兆5000億円の国費が投じられており、厳正な評価が求められている。