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新首都圏ネットワーク


『一橋新聞』2005年3月12日付

授業料値上げの理由を文書で説明
大学HPに掲載 "やむをえぬ措置"と理解求める


授業料値上げを巡る動き
04年12月8日 国立大学協会が授業料標準額を引き上げないよう政府に要望
15日 「国立大授業料、1万5000円目安に値上げへ調整」の新聞報道
24日 政府、授業料標準額の1万5000円値上げを含む来年度予算案を閣議決定
05年1月12日 自治会が授業料を値上げしないよう、副学長会合で大学側に要望
13日 本学役員会、授業料の値上げを了承
27日 授業料改定を掲示で正式発表
3月11日 大学Webサイトに「来年度の授業料について」を掲載

 一橋大学は11日(金)、今年1月に授業料値上げを決定した理由や経緯を説明
する文書を、Webサイトに掲載した。

 文部科学省が定める国立大学の「授業料標準額」が引き上げられることに伴
い、本学を含むほぼ全ての国立大学は、05年度から授業料を従来より1万5000円
高い、年額53万5800円に値上げする。

 「学生ならびに教職員の皆さんへ」と始まる今回の文書で大学側はまず、国
立大学協会や本学を含む在京の国立大学が、文科省による標準額引き上げの動
きに反対してきた経緯を説明。「このような国立大学側の意向にもかかわらず、
授業料標準額の引き上げを含む政府予算案が国会に上程されたことは、真に遺
憾なことと言わざるを得ません」と、政府の一方的な決定を批判した。

 各国立大学に交付される運営費交付金の額は、授業料標準額分の"自己収入"
をもとに決まる。このため、標準額を下回る授業料を設定すると、差額を他の
自主財源で補う必要が生じる。また、国立大学法人の予算は、「現実には削減
がきわめて困難な事項指定経費や人件費」(本学)を含む一般管理費や教育研
究費などに「効率化係数」が掛けられることになっており、今後交付金は毎年
1%ずつ削減されていく。理工系の学部を持たない社会科学系の本学の場合、問
題は総合大学や理科系の単科大学に比べて深刻だ。来年度の研究関係費の削減
を余儀なくされるなど、既に負の影響が出ているという。

 大学側はこうした状況で授業料を据え置くと、財政負担が累積的に増大する
と説明。法人化初年度で財政運営の枠組みが定まっておらず、「一橋大学基金」
も始まったばかりで、「残念ながら授業料標準額の引き上げに大学独自の対処
策を講ずるだけの力がなかった」として、値上げに踏み切らざるを得なかった
点に理解を求めた。そのうえで、今後教育の質と学生へのサービスの向上に一
層力点を置いて取り組み、さらに踏み込んだ経営努力を進めていくとしている。

 本学が学生に対して、値上げの理由を詳細に説明したのは初めて。不透明で
一方的な決定に自治会など学生サイドから批判の声が高まったため、値上げを
"決断"した複雑な事情を説明し、理解を求めることにしたものと見られる。

◇説明に一定の評価 ─3自治会で今後の対応を検討

 昨年末に授業料標準額値上げが明らかになってから、自治会では性急な値上
げ決定を行わないよう、繰り返し大学に求めてきた。1月12日の自治会と副学長
の会合で、大学側は値上げは容認できないなどと説明しておきながら、特に話
がないまま翌13日の役員会で値上げが了承され、「説明不足」と学生側の反発
を招いた経緯がある。

 前期自治会執行委員会の担当者は12日、新聞部の取材に対し、今回初めて正
式な形で値上げ理由の詳細な説明がなされたことに一定の評価をする一方で、
「(国立大学の)授業料は2年ごとに値上げが行われており、この先また同様の
値上げが行われないよう、安易に決定しないよう引き続き求めていきたい」と
述べた。

 自治会側はその後の大学との話し合いの中で、値上げの根拠を示す財政文書
などの提示を受けている。それらをもとに、前期・後期・院生の3自治会で今後
の対応を検討していく方針だ。