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http://www.hirosaki-u.ac.jp/gakucho/kenkai.html

        弘前大学授業料改定について(学長見解)

I. 授業料標準額改定問題の経緯と学内での対応

 平成16年12月,文部科学省は,社団法人国立大学協会を通じて国立大学の授
業料標準額改定の方針を伝えてきた。これに対して,弘前大学,岩手大学及び
秋田大学で構成されている北東北国立三大学連携推進会議は,三大学長連名で
授業料標準額改定に対する反対声明を出し,関係各方面に対して反対の意思表
明を行ってきたところである。しかし,平成16年12月,平成17年度の政府予算
案が閣議決定され,この予算案において国立大学の授業料標準額が改定される
こととなった。このことにより文部科学省は,平成17年3月,国立大学等の授
業料その他の費用に関する省令を改正し,授業料標準額改定が実施されるとい
う見通しとなっている。

 この授業料標準額改定の方針が伝えられた後,本学では,役員会,経営協議
会,教育研究評議会及び連絡調整会議においてこの問題を協議し,また,各学
部教授会を通じて構成員の意見聴取を行った。更に本学の文京地区過半数代表
者,職員組合代表者に状況の説明を行った他,全学の学生に対しても説明会を
実施した。このように授業料標準額改定について,学内各層への説明と意見の
聴取を行ってきた。

II. 授業料標準額改定に対する考え方

1)国立大学の国立大学法人への設置形態を変更するという説明の中では,法
人化後の国立大学の授業料は,授業料設定の基準となる授業料標準額に対し,
110%を超えない範囲内において,各国立大学の裁量に委ねるとされていた。そ
れが,この度,唐突にも授業料標準額の改定という方針を示してきた。

2)この授業料は,従来国立大学と私立大学の授業料格差を是正するため,そ
の格差を縮めてきたところであるが,国立大学の存在してきた意義を考慮する
と,むしろ国立大学の授業料は低額であるべきである。

3)国立大学といっても,こと地方の国立大学の存在は,地方の学生に勉学の
機会を与えると共に,中央の国立大学とは異なった地方での役割を果たしてき
ており,中央と地方の国立大学が一律に授業料標準額の改定を行うことには問
題が多い。

4)その地方大学の存在する地方,特に財政基盤の脆弱な青森県の場合は,我
が国の現在の経済的不況を一層反映し,地域住民の生活は不安定である。この
ため本県における高校生の大学進学率の低さに加えて,県内高等学校生徒の授
業料免除申請者及び奨学金貸与申請者が増加している。このような状況の中で
の本学での授業料値上げは,本県の高校生の高等教育の勉学の機会を奪いかね
ない。

5)また,本学の学生においても,授業料免除申請者及び奨学金貸与申請者の
激増は,本学学生の経済的状況を如実に物語っている。

6)しかし,このような状況を勘案して授業料を据え置いた場合,本学では約
1億円の収入減となる。これは,本学の5学部への教育研究及び管理運営経費
の配分において,1学部あたり約2,000万円の減となる。加えて平成17年度の運
営費交付金の配分において,効率化係数の適用により,推定約8,500万円の減収
が見込まれている。本学は外部資金収入が少なく,運営費交付金への依存度が
高いので,これらの減収を,大学の管理運営上の節約等によって完全に吸収す
ることは出来ない。

7)また,国立大学法人化前もほぼ2年ごとに授業料の値上げが行われてきて
おり,授業料標準額改定は,今後も継続的に行われる可能性が高いので,授業
料を据え置くことによる本学の総収入減は,一層拡大すると見られる。将来に
渡って,この減収に本学が耐え続けることは不可能である。

III. 授業料標準額改定に対する学長の見解  

 学長は,以上の学内の様々な意見を勘案するとともに,役員会,経営協議会
及び教育研究評議会において,慎重に審議を行った結果,弘前大学の授業料を
文部科学省の示した授業料標準額の値上げ分通り15,000円値上げし,年額
535,800円とすることとする。

 値上げの理由は,本学の授業料の据置きによって生じる教育研究及び管理運
営経費の減額分は,本学の管理運営上の節約等の処置では到底吸収し解消する
ことは出来ず,据置きによる影響は,後年度にも継続されると予想され,この
ことにより本学の教育研究の質の維持・発展に重大な支障を来すことが懸念さ
れると判断したことによる。

 今後,本学は授業料標準額改定問題で一層明らかになった本学の脆弱な財政
状況を十分に認識しつつ,本学の健全な運営に全学が一致して事に当たり,教
育及び研究の一層の発展を期さなければならないと考える。

(平成17年3月15日)