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『2005年度大学関係政府予算案・授業料問題情報』(略称『予算・授業料情報』) No.39=2005年3月12日発行 小林美恵子議員速記録(暫定) 162・参・予算委員会・7号 2005年3月8日 ○委員長(中曽根弘文君) 次に、小林美恵子君の質疑を行います。小林美恵 子君。 ○小林美恵子君 日本共産党の小林美恵子でございます。 政府は、国立大学授業料標準額値上げの理由として、私学との格差是正をおっ しゃっております。今日は、そこで私は私学学費を中心にして質問させていた だきます。 まず、日本の大学の中で占める私学の学校数、そして学生数の割合とその役 割についての文部科学大臣の御認識をお伺いします。 ○国務大臣(中山成彬君) 私立大学は独自の建学の精神に基づきまして、個 性豊かな教育研究活動を主体的に展開するところにその特色がございまして、 在学生のうち約七五%が私立大学に在学しておりまして、我が国の学校教育の 質、量両面にわたり発展に大きな役割を果たしてきていると考えております。 社会経済情勢が変化する中で、多様化する国民のニーズに応じた特色ある教育 研究の推進が求められておりまして、個性豊かな教育研究活動が展開している 私立学校の役割はますます重要になってきていると認識しております。 ○小林美恵子君 重要な役割があるとおっしゃいましたその私学の学費につい てでございますけれども、一九七五年度と二〇〇四年度のその額、現在の初年 度の納付金は、全学部、理科系、医歯学系、それぞれ幾らでしょうか。 ○政府参考人(金森越哉君) お答えを申し上げます。 私立大学の授業料につきましては、平成十六年度の入学者の平均額が約八十 一万八千円となっておりまして、一九七五年度、昭和五十年度の約十八万三千 円と比較をいたしまして約六十三万五千円の増加となっております。 それから、私立大学等の平成十六年度入学者に係る学生納付金等調査により ますと、私立大学に入学した学生が初年度に大学に納付する授業料、入学料、 施設整備費の合計額は、全学部の平均で約百三十万二千円となっております。 これを分野ごとに見てみますと、文科系学部につきましては約百十四万四千円、 医歯系学部を除く理系、理科系学部につきましては約百四十八万円、医歯系学 部につきましては約五百五万八千円となっているところでございます。 ○小林美恵子君 今御説明をいただきましたその私学の学費が本当に私も高い というふうに改めて実感するものでございます。 そこで、どんなにこの学費が学生や、そしてその御家庭の家計に重くのし掛 かっているかということを私は大臣にお聞きいただきたいと思います。 二人の娘さんを私学に通わせている親御さんの声でございますが、年間三百 万円の授業料、交通費は二十五万円、各課題による雑貨など、一か月当たりの 収入の多くを教育費に費やしています。有名私大にも合格しましたが、自宅通 学できる距離ではなく、経済的にも一人住まいも考えにくく、入学を断念しま したと。日本は教育に関しての負担が大き過ぎると思いますと。こうした声と いうのは決して特別ではないと私は思います。 そこで、文部科学省にお聞きをします。 文部科学省の調査からも、学費や下宿に掛かる費用が学生二人の場合、私立 と国公私立平均それぞれどれほどの費用か、費用だけお示しくださいますか。 ○政府参考人(金森越哉君) お答えを申し上げます。 平成十四年度の学生生活調査によりますと、自宅の場合、学生寮に入ってい る場合、下宿の場合、いろいろございますけれども、平均で申し上げますと、 私立大学に通う学生の場合、授業料やその他学校納付金、修学費、課外活動費、 通学費などを含めました学費の合計額が百三十一万七千円ということになって ございます。また、そのほかに、生活費といたしまして、食費や住居・光熱費、 保健衛生費、娯楽・嗜好費、その他日常費などを合わせますと、生活費が私立 平均で八十二万八千三百円でございまして、学費と生活費を合計いたしますと、 二百十四万五千三百円が私立大学に通う学生の平均ということでございます。 ○小林美恵子君 国公私立の場合はいかがですか。 ○政府参考人(金森越哉君) お答えを申し上げます。 国公私立の平均ということで申し上げますと、学費が百十六万千二百円、そ れから生活費が八十五万六千五百円、合計いたしますと二百一万七千七百円と いうのが国公私立の平均でございます。 ○小林美恵子 私が文部科学省さんからいただいた資料によりますと少し違う んですけれども、私立の場合は、合わせますと二百六十一万三千八百円、また 国公私立平均の場合は二百三十七万八千九百円というふうな資料をいただきま した。いずれにしても、さほどおっしゃっていた金額と余り変わりはないとい うふうに思いますけれども、御説明いただいたものについて少し、私、パネル にしてまいりました。(資料提示) このパネルは、先ほど御説明いただいたものは一人の分をおっしゃっていらっ しゃったと思いますけれども、二人抱えた場合どうなのかという額でございま す。それと、分母は二〇〇三年度の勤労者の平均年収六百二十九万円に対して どれだけその学費、下宿代、下宿等が占めるかという割合を示したものです。 それでいきますと、何と私立二人とも行かせる場合は八三・一%もその平均 年収に占めています。また、国公私立平均でいきますと七五・七%にもなりま す。 私はここの、ここの負担の重さといいますか、この負担の重さが、本当に大 学に行かせているその親御さんが、どんなに高い負担を強いながら、我が子を 大学に行かせるためにはもう何とかしようという工面の思いというのが本当に 伝わってきます。また一方で、こんなに高い学費だから、だから大学行きたい けれども行けないと我慢をする若者の声も伝わってきます。 そこで、私は財務大臣と外務大臣にお聞きをします。 こういう家計に対する学費の負担というのは、余りにも負担の限界を超えて いるのではないでしょうか。余りにも家計が成り立たない、そういう現状では ないでしょうか。いかがでしょうか。 ○国務大臣(谷垣禎一君) 委員からいただいた資料を拝見いたしますと、私 も文部科学省の学生生活調査というのはちょっと見てきたんですが、若干それ ぞれの世帯の年収は、これは多分総務省の資料をお使いになって、ちょっとそ この取り方がまた違うんだと思いますが、しかしいずれにせよ、特に自宅でな い下宿などから通学する私立大学生を抱える親御さん、保護者、これは家計収 入からやっぱり相当程度仕送りなどをしないと、もうこれはとてもやっていけ ないという状況にはあるということは間違いないと思うんですね。 それで、それをどうバックアップしていくかということになるわけですが、 平成十七年度の予算では育英奨学金の貸与人員を拡充すると、あるいは貸与月 額を増やすと、こういうようなことで学生やその保護者等の経済負担の軽減を 図ろうというのをまた一つやっております。 それから、その私学助成予算についても増額を図るということにしているわ けでございますが、結局、できるだけ今、今まで国と、国立大学と私立大学の 差をうずめようということでやってきましたけれども、高等教育の場合は初中、 初等中等教育に比べて将来の就職や所得等、そういった面で教育を受けた個人 に直接帰属するという、何というんでしょうか、その利益が相対的に大きいと いうのか、ある程度受益者負担の観点も入れなければならないのではないかと いうふうにも考えているわけです。 ○国務大臣(中山成彬君) 今、私学部長それから財務大臣がお答えいたしま したけれども、平成十四年度の学生生活調査によりますと、私立大学の学生一 人当たりの学費約百三十二万、私立大学に通う学生を持つ家庭の年間所得に占 める割合一四%ということでございまして、決して小さな額ではないと考えて おります。 個人的にも、私の妹の息子が今度私立に通りましたけれども、母親が本当に ふうふう言っているのが現状でございます。 ○小林美恵子君 どちらも負担は重いというふうにおっしゃったと思います。 それで、財務大臣は助成も行ってきているというふうにおっしゃいました。 そこで、文部科学大臣に私はお聞きをします。どういう助成を行ってきたの か。特に特別補助と一般補助というのが私学の助成にはあるはずです。それぞ れの性格、そして一般補助のピーク時の、ピーク時と、二〇〇五年度予算案の その額と推移、経常経費に対する補助率のピーク時と二〇〇四年の率をお示し いただけるでしょうか。 ○政府参考人(金森越哉君) お答えを申し上げます。 私立大学等の経常的経費に対する補助には、大きく分けまして一般補助と特 別補助がございます。このうち一般補助につきましては、教職員の人件費や基 盤的な教育研究経費に対して補助するものでございまして、各大学の教職員数 や学生数により算出した補助基準額を基に配分しております。一方、特別補助 は、特色ある教育研究活動や特定の教育研究プロジェクトに対して補助するも のでございまして、各大学からの申請に対し、有識者からなる委員会での審査 などを経て重点的に配分するものでございます。 一般補助の予算額につきましては、経常費補助制度創設時の昭和四十五年度 は百三十二億円でございましたが、昭和五十六年度の二千七百五十四億三千三 百万円をピークに漸減傾向にございまして、平成十七年度予算案におきまして は二千百九十三億七千九百万円となってございます。ただし、特別補助につき ましては毎年度増額に努めておりまして、この特別補助を含めますと私立大学 等経常費補助金全体では毎年充実が図られてきておりまして、平成十七年度予 算案では三千二百九十二億五千万円を計上しているところでございます。 また、私立大学等の経常費に対する補助割合でございますけれども、制度創 設時の昭和四十五年度は七・五%でございましたが、昭和五十五年度の二九・ 五%をピークにその後漸減いたしまして、近年は横ばいの状況でございます。 平成十五年度におきましては、一二・一%となっているところでございます。 ○小林美恵子君 特別補助は増額されているとおっしゃいましたけれども、こ れはやっぱりあくまでも特別のものでございます。先ほど御説明がありました ように、大学の経常経費の中心部分はやっぱり一般補助です。御説明があった ように、率も、しかもピーク時からいっても額も減額をしているということは、 やっぱりこれでは増額とは言えないと私は思います。 そこで、その点についてもパネルを用意しました。(資料提示)これは、先 ほどの御説明がありましたように、一般補助が減額をされている、そして補助 率もピークからの半減以下、それは表にはなっておりませんが、一方、私学の 学費は上昇しているというその推移を示したグラフでございます。 日本私立大学協会附置私学高等教育研究所が行いました「学費・奨学金に対 する現状認識と展望」と題する調査結果がございますが、そこでも私立の三分 の二の大学が私学への経常費補助が減額、廃止された場合は学費値上げを考え るというふうに述べておられます。 ここで私は文部科学大臣にお聞きをします。やっぱり私学の学費の高騰とい うのはこうした一般補助の減額、補助率の低下が影響を与えているのではない でしょうか。 ○国務大臣(中山成彬君) 私学助成につきましては、従来から私立学校の教 育研究条件の維持向上並びに修学上の経済的負担の軽減等を図るためその充実 を図ってきたところでございまして、今、私学部長からも説明させましたけれ ども、私学助成におきましては評価に基づく重点的配分の重視と、あるいはか つての学生数急増等によりまず経常費総額の増加に伴いまして、一般補助や経 常費総額に対する補助割合に低下傾向が見られることは事実でございますけれ ども、特別補助を含む私学助成総額としては着実に充実を図ってきたところで ございまして、文部科学省といたしましては、今後とも私立大学における学生 の経済的負担の軽減や、あるいは教育研究の質的向上を図るために私学助成予 算の確保と関連施策の推進に最大限努めてまいりたいと考えております。 ○小林美恵子君 その補助率の低下でありますとか、補助額の減額というのが 学費の高騰につながっているのではないかということではいかがでしょうか。 ○政府参考人(金森越哉君) お答えを申し上げます。 私学助成につきましては、ただいま大臣から御答弁申し上げましたように、 私立学校の教育研究条件の維持向上並びに就学上の経済的負担の軽減を図るた めにその充実を図ってきたところでございまして、特別補助を含みます私学助 成総額の充実が、ひいては私立大学の授業料の高騰を抑制するという効果も伴っ ているものと考えているところでございます。 ○小林美恵子君 特別補助を含めた補助率も低下をしているわけです。それが やっぱり私学の学費に影響しているというのではないでしょうか。もう一度、 大臣にお答えをお願いします。 ○国務大臣(中山成彬君) この私立大学におきます授業料につきましては、 これは本来、私学自身の責任において自主的に決定すべき事柄でございますけ れども、文部科学省といたしましては、従来から学生や保護者の修学上の経済 的負担の軽減を図るために、経常費補助を中心とした私学助成あるいは奨学金 の充実を図るとともに、私立大学の一層の経営努力によりまして極力授業料を 抑制するように要請してきたわけでございまして、これからも引き続き私立大 学における学生等の教育費負担が軽減を図られるように進めてまいりたいと考 えております。 ○小林美恵子君 つまり、補助の増額というのが私学の学費を、高騰を抑制す るという先ほどの御答弁だったというふうに私は思います。 ということでいきますと、結局、私は政府が私学への補助を減額、削減して 私学の学費を高騰させて、そしてその私学との格差是正と称して国立大学も学 費を高騰させてきたというのがこの間の実態だと思うんです。学費の高騰は家 計に高負担を押し付け、学生にも学ぶ機会を奪うものです。格差是正というな ら、国立大学費を値上げするのではなく、私学への補助を増額し、私学学費を やっぱり引き下げることこそ本当の格差是正ではないでしょうか。それを文部 科学大臣に改めてお聞きします。 ○国務大臣(中山成彬君) 国立大学の授業料につきましては、従来から高等 教育の機会提供という国立大学の役割をふまえつつ、大学教育を受ける者と受 けない者との公平の観点や私立大学の授業料の水準など、社会経済情勢等を総 合的に勘案して、結果としてはほぼ二年ごとに改定を行っているところでござ います。 ○小林美恵子君 私の質問にまったくお答えになっていないと思います。 改めて、本当の格差是正というならば、国立大学学費を値上げするのではな くって、私学への助成を充実さして私学の学費を下げることではないか。もう 一度お答えをお願いします。 ○国務大臣(中山成彬君) 先ほどからも答えておりますけれども、格差是正、 私学、国立の格差是正、そして社会情勢、物価の上昇等、そして特に今申し上 げましたけれども、大学に行く者と行かない者との格差ということもございま すので、そういったことを全般的に勘案、考慮いたしましてやってきていると いうことでございます。 ○小林美恵子君 学費の高騰が子供たちの大学進学を断念せざるを得ない、そ ういうことに陥っているということを私は指摘を申し上げたいというふうに思 います。 それで、こうした日本政府の態度といいますか、これは国連からも勧告を受 けていることがございます。この点について、まず外務大臣にお聞きをします。 一九七六年発効した経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約第十 三条二項(c)、ここにどういうことが書かれてあって、日本はどんな態度を取 り、国連からどういう勧告を受けているか。 続いて、外務大臣にそのことをお答えいただいて、そして官房長官に、続き まして、一九八四年、衆参の文教委員会で留保の解除の検討を求める附帯決議 がされています。国連にも二〇〇六年六月には日本政府として報告が求められ ています。これにどういう態度を示すのか、このことをお答えいただきたいと 思います。 ○国務大臣(町村信孝君) A規約の十三条の、どこでしたっけ、二の(c)、 高等教育は、すべての適当な方法により、特に無償教育の漸進的な導入により、 能力に応じ、すべての者に対して均等に機会を与えられるものとするというこ とでありまして、これについては、日本はこの部分については留保をしており ます。 二〇〇一年八月に、このA規約委員会が示した最終見解において、日本に対し てこの留保の撤回を検討することを求める旨の勧告がなされております。これ に対して、これは日本の文教政策の在り方と関係を慎重に検討する必要がある ということで、今後検討をしていくということでございます。 ○国務大臣(細田博之君) 国によって、これを留保しているアメリカのよう な国がございますし、やや、イギリスなどはこれを受け入れたわけでございま すけれども、やはり自己負担もすべきだというような考え方に変わりつつある ところもございます。 まあ、いずれにいたしましても、それぞれ国民所得自体が上がっているとい うこともございますから、負担力のある方には負担していただくことが適当で あると思いますし、また負担力の乏しい方が奨学金制度とかさまざまな制度を 活用するというような柔軟な、柔構造的な運用をして、誰にとっても高等教育 を受ける機会が確保されるように施策を講ずべきであると思っております。現 時点ではこの留保の撤回というのは、それぞれ今も申し上げたような総合的な 観点からまだ考えておらないのが実情でございます。 ○委員長(中曽根弘文君) 時間でございますので、おまとめ願います。 ○小林美恵子君 先ほど、外務大臣は検討していくというふうにおっしゃいま した。これは私は大事なことだどいうふうに思います。同時に、官房長官は柔 軟なふうに対応していくというふうにおっしゃいました。私は、やっぱり日本 の将来を担う若者が経済的理由で教育の機会を奪われないように、家計への高 負担を軽減することこそ国民に責任を持つ政府の役割だというふうに思います。 こうした国連の勧告、国連の規約を留保している国は、百五十一か国中、日 本を含めわずか三か国です。ですから、ここもしっかり解除を検討に踏み込ん でいただいて、国立大学学費の値上げの撤回と私学への助成を増額することを 再度求めまして、質問を終わりたいと思います。 ありがとうございました。 ○委員長(中曽根弘文君) 以上で小林美恵子君の質疑は終了いたしました。 (拍手) |