2005年3月4日

 

国立大学協会会員各位 殿

 

国立大学法人法反対首都圏ネット事務局

 

 

国立大学協会第3回通常総会(3月4日)に対する要請

 

 

 国立大学協会第3回通常総会に対して以下のことを要請する。

 

第1.    国立大学法人法およびその下における国立大学財政の問題点の精査・分析を今国会において実現すべく、国会に対する速やかな働きかけを本日の総会において決定すること。

 

第2.    本日の理事会において予定されている役員選任にあたっては、国立大学問題を「国民的議論の俎上」に乗せる意思と能力を持ち、かつ、国立大学法人法の大幅改正ないしはその廃棄と新法の制定に対する展望を有する者を選任すること。

説明

 

 国立大学授業料の値上げを含む平成17年度政府予算案は、去る3月2日に、衆議院本会議において原案通り可決された。政府予算案は、参議院本会議において可決されなくとも、憲法の規定により30日以内に自然成立する見込みとなった。

 

 我々は、国立大学関係予算の欠陥を明らかにするとともに、(1)授業料の据え置き、(2)付属病院経営の破綻回避、(3)国立大学施設整備の推進を要求し、そのために国立大学関係予算の組み替えを提案してきたhttp://www.shutoken-net.jp/050122_1jimukyoku.html)。そして、事態打開のためには、国会の関心を国立大学に集めることが最も肝要と考え、国会に対する働きかけを徹底して行なってきた。その結果、授業料問題は、衆議院予算委員会および文部科学委員会の質疑でも取り上げられ、国立大学授業料がすでに高額に過ぎるという認識を野党のみならず与党の議員の中にも広げ、授業料値上げ問題に対する関心を高めることができた。

 

 そして、貴協会臨時理事会(2月16日)に対しても、昨年12月8日の貴協会臨時総会が採択した「国立大学関連予算の充実について」で明記された3つの「要請」−(1)運営費交付金の確保・充実、(2)学生納付金標準額の据え置き、および(3)施設整備費の大幅増−を、来年度予算審議を行なっている国会に対して直ちに実行することを要請した(http://www.shutoken-net.jp/050215_2jimukyoku.html)。これは、「すべての国立大学法人から構成される組織」である貴協会こそが、「それから『学問の自由』を付託されている国民の代表から構成される国会に対して、『学問の自由』が市民にもたらす恵沢をより大きくし、かつ、市民の高等教育を受ける機会を拡大するために必要な財政的および立法的諸条件を積極的に提案する責任を有している」と考えたからである。

 

 にもかかわらず、2月16日の臨時理事会においては、授業料値上げ問題は議論されなかったと伝えられている。そればかりか、今回の授業料値上げを国立大学法人法の構造に由来する“構造的な問題”ではなくもっぱら「初期故障」としてのみとらえ、問題の打開を国民および国会との対話に求めるのではなく文部科学省との「新しい関係構築」にのみ求めようとする文書 (「国立大学法人制度の活力ある発展のために(案)」(http://www.shutoken-net.jp/050218_1jimukyoku.pdf) が配布された。この臨時理事会における対応は、貴協会が有しているはずの上記の責任を果たさないものである。さらに、貴協会会長が公にした「高等教育問題を国民的議論の俎上に載せ、その社会的コストについて正面から議論する必要がある。」(佐々木毅「大学の授業料を考える」、東京新聞2月13日付)との考えとも矛盾している。貴協会臨時理事会は、本来であれば国民的議論を活性化させるべきであったにもかかわらず、沈静化させることに終始し、貴協会の政府への隷属性を強めてしまったと言わざるを得ない。

 

 授業料および入学金の値上げは、「私大との格差是正」という名目の基礎にある「経営形態の異なる学校間の競争条件の同一化」(規制改革・民間開放推進会議「規制改革・民間開放の推進に関する第1次答申」(平成16年12月24日)−つまり、授業料の同一化による国立と私立との間の競争条件の同一化−との政策に基づいて、政府主導によって今後も行なわれることは間違いない。事態を根本的に打開するためには、国立大学問題を早急に「国民的議論の俎上」に乗せることが必要であり、かつ、国民との対話に基づいて、国立大学法人法の大幅改正ないしはその廃棄と新法の制定を実現しなければならない。貴協会は、自らが果たすべき役割が決定的に重要であるということを深く自覚すべきである。

 

 今国会は、国立大学の法人への移行1年という区切りに開催されているのであり、今国会において問題点の精査・分析を行なうことは時宜にかなっている。そして、貴協会第3回通常総会において予定されている役員の選任にあたって、この課題に取り組む意思と能力を持ち、かつ、法人法の全面改正ないしはその廃棄と新法の制定に対する展望を持つ者が選出されれば、事態の根本的な打開に向けての大きな一歩となるだろう。仮にこのような役員を選出できなければ、事態打開の方策に関する正しい認識を公表しながら、それをまったく実行できず、結局は、貴協会の政府への隷従が強化されるという過ちが繰り返されよう。そうなれば、貴協会の存在意義が消滅するであろう。

 

本日の貴協会通常総会が、冒頭に示した我々の2つの要請を実現するよう、強く求めるものである。