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新首都圏ネットワーク


      国立大学の学生納付金標準額の引き上げに反対する

                            2005年2月16日
                全国大学高専教職員組合 中央執行委員会

 昨年末、閣議決定され、現在国会で審議中の2005年度政府予算案には、国立
大学の年間授業料の目安になる「標準額」を今年4月から1万5千円引き上げ
て、53万5800円とすることが盛り込まれている。文科省が12月22日に各
大学に示した平成17年度国立大学法人運営費交付金内示額は、平成16年度の運
営費交付金額を基礎に、平成17年度の増減要因を加えて算出し、その増減要因
の中に効率化額などのほかに「授業料標準額改定増収額」として標準額増収分
(単価15,000円)が運営費交付金の減要因として差し引かれている。

 即ち、学生納付金を据え置けば、現状でも厳しい運営費交付金が削減される
仕組みとされている。従って、これを受けての各大学での議論では、値上げし
ない場合は運営費交付金の不足分を大学が負担することになり、教育の機会均
等の立場からすれば「苦渋の選択」であるが、引きあげることを決定・検討し
ている大学が多くを占めている。

 国の財政事情の困窮を最大の理由として、財務省をはじめ政府関係者は、
(1)従来、隔年毎に国立大学の学生納付金が改定されてきたこと、(2)法人
化により、私立大と同じ土俵であるという「イコールフッティング」論、(3)
受益者負担の観点などがその理由として挙げられている。

 これらの理由について、端的に批判すれば

(1) 過去40年間の国立大学の学費の推移を見ると、授業料と入学金は低い
水準を維持していたが、76年度から毎年交互に引き上げられ、両者を合わせ
た初年度の学生納付金は、それ以後20年間、ほぼ年額3万円ずつ増加し続け
てきた。約40年間に、消費者物価指数は3倍になったが、授業料はなんと4
3倍にも跳ね上がった。労働者の賃金・消費者物価は93年ごろからほぼ横ば
いになり、98年からは下降しているにもかかわらず、初年度納付金は右肩上
がりの増加を続けている。今回の引き上げはこの延長線上にあり、国立大学法
人法等成立時の附帯決議で「学生納付金については、経済状況によって学生の
進学機会を奪うこととならないよう将来にわたって適正な金額、水準を維持す
る」としていることにも逆行するものである。

(2) 私立大学の振興は国の重要な責務であり、私立学校振興助成法(と国会
附帯決議)がいう「私大経常費の2分の1補助」の早期達成によってこそ、学
生・父母の負担が軽減されるのである。しかし、私立大学との格差是正論が、
悪循環的に両者の学費値上げを競わせてきたことは歴史の示すとおりである。
国立大学の存在意義のひとつは、相対的に安価な授業料による良質の教育の提
供で、国民の高等教育を受ける権利を保障することにある。

(3) 受益者負担論については、文科省の中教審「我が国の高等教育の将来像」
(答申)でも「高等教育の受益者は学生個人のみならず社会全体である」として
いることとも矛盾するものであるが、高等教育の費用は受益者の負担が当然と
して学費が上がり続け、教育の機会均等を脅かすレベルに既になっているとい
える。家庭の経済状況によって学生の進学機会を奪うことがないようにするこ
とが国の発展にとっても必須である。

 このような観点から、私たちは、今回の学生納付金標準額の引き上げ提案に
対し憤りを持って反対し、引き続き粘り強く取り組むことをあらためて表明す
るものである。また、学生納付金標準額の引き上げを行わず、欧米にみられる
ように抑制・無償化の方向に政策転換を行うことを求めるものである。さらに、
学生納付金を据え置けば、現状でも厳しい運営費交付金が削減される仕組みな
どを抜本的に改めるなど、運営費交付金等の充実と算定ルールの見直しを求め
て奮闘するものである。