トップへ戻る   以前の記事は、こちらの更新記事履歴
新首都圏ネットワーク

http://www.eps.s.u-tokyo.ac.jp/jp/students/info/general/general2004-105.html

105. 来年度授業料についての解説 理学系研究科長・理学部長 岡村定矩


大学院生、理学部生のみなさん、


                理学系研究科長・理学部長 岡村定矩

すでに新聞などで報道されているように、政府予算案が国会で成立し、授業料
標準額が引き上げられる場合、東京大学は、「大学院博士課程の授業料は据え
置くが、学部と大学院修士課程の授業料は値上げする」ことを決定しました。

なぜこのような決定に至ったかの背景などは、「東京大学ホームページ」
  http://www.u-tokyo.ac.jp/index/b01_06_j.html
に説明がされています。是非ご覧下さい。

しかしながら、新聞報道などを見ると、授業料値上げと運営費交付金の関係が
マスコミにも正しく理解されていないのではないかと私は危惧を持ちました。
授業料値上げは社会的な関心も高く、皆さんも周囲の方々とこの話題について
話されることもあろうかと思います。そのときに、少なくとも大学関係者とし
て、以下の点は正確に周囲の方に伝えて頂きたいと思います。簡単のために誤
解を恐れずにあえて、たとえ話で解説をします。

厳密さと定量的なデータが必要な方は上記ホームページの神野経済学部長の解
説をお読みください。

*****************************************************************
仮定:東京大学の運営に必要な予算が年間1000円であり、授業料収入は現在
   年間300円である(それ以外の雑収入は無視する。また簡単化のため
   附属病院の予算ーきわめて影響は大きいがーも無視する)。
------------------------------------------------------------------
(1)現在、運営費交付金は1000-300 =700円が交付されている。
(2)授業料標準額が3%上がって、その通りに大学が値上げをすると、
   翌年の授業料収入は309円となる。値上げしないと当然300円である。
(3)大学が値上げしようがしまいが、運営費交付金の計算値は標準額に
   基づいて翌年は1000-309 = 691円となる。
(4)運営費交付金には毎年「効率化係数(約1%)」がかかるので、実際の
   交付額は、691x0.99 = 684 円と削減される。
(5)値上げした場合は翌年の全予算は、309 + 684 = 993円 となる。
   値上げしないと、翌年の全予算は、300 + 684 = 984円 となる。
******************************************************************

以上からわかるように、一般的に「運営費交付金の減少が予測される」ので
「やむをえず値上げする」という話ではなく、授業料を値上げしようがしまい
が、標準額の値上げは確実に運営費交付金を削減する仕組みになっているので
す。

さらにその上効率化係数による削減がありますから、値上げしても予算は減り、
値上げしないともっと減るということなのです。授業料を値上げした分が大学
の予算増には全くならないこともおわかりいただけると思います(標準額以上
に値上げすれば別ですが)。

ちなみに、私が書いた1月19日付け朝日新聞「私の視点:国立大学授業料 
値上げは再考すべきだ」の記事は、以下のURLから読むことができます。

  http://www.shutoken-net.jp/050119_2asahi.html

この記事を載せてくれた朝日新聞ですらその報道が気になったので、あえてこ
のお知らせを皆さんに流しました。