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      国立大学の授業料値上げ問題についての声明

                          富山大学教職員組合
                           委員長 廣瀬 信

2005年1月26日

マスコミ各社 殿


 政府は、来年度国立大学授業料標準額据え置きとした文部科学省の概算要求
を退け、同標準額の15,000円値上げ(総額81億円)を含む来年度予算案を昨年
12月24日閣議 決定しました。周知のように、この閣議決定 に先立って、国立
大学協会 (12月8日)、中国四国の10国立大学学長(12月16日)、弘前・岩手・
秋田の 3国立大学学長(12月18日)、東京都内の11国立大学長 (12月21日)、
さらに北東北3大学学長(1月24日)など、多数の反対声明・見解が政府・文部
科学省に対して提出されています。また、1月19日、東京大学の岡村理学部長・
理学系研究科長が、「国立大学授業料値上げは再考すべきだ」と朝日新聞『私
の視点』において述べられているように、授業料値上げに反対する意見は拡がっ
ています。

 すでに、指摘されていますように、現在のデフレ状況の中で、世界的にも異
例な水準に達している授業料をさらに値上げし、教育の機会均等を奪うことは、
大学における教育研究に携わっている者として、到底許容できるものではあり
ません。学生納付金については、国立大学法人法成立時の国会での附帯決議に
おいて、「学生納付金については、経済状況によって学生の進学機会を奪うこ
ととならないよう、将来にわたって適正な金額、水準を維持するとともに、授
業料減免制度の充実、独自の奨学金の創設等、法人による学生支援の取組につ
いても積極的に推奨、支援すること。」(2003年7月8日参議院文教科学委員会)
とし、教育の機会均等の立場から安易な学生交付金の引き上げを強く戒めてい
ます。また、欧米諸国では、学生納付金について、実質的に無償あるいは低廉
なものとしています。

 さらに、今回の授業料引き上げについては、この間隔年で行われてきた値上
げの延長に留まらない大学財政構造上の深刻な問題を指摘しておく必要があり
ます。

 運営費交付金を大幅に削減する方式として既に組み込まれているものに、マ
イナス1%の効率化係数とマイナス2%の附属病院経営改善係数がありますが、
これに加えて国が一方的に行う授業料の標準額の値上げ改定という新しい方式
が導入されたことです。値上げ分を運営費交付金から削減し、財源不足分状況
を作り出しておいて、「実際に値上げをするかどうかは個別大学の判断ですよ」
と、大学人が最も嫌悪する授業料の値上げを大学自らの手で行わせようとして
います。

 こうした観点から、今回の授業料の値上げは単に15,000円の値上げの問題の
みとして理解する訳にはいきません。もし、学費の標準額値上げ相当分を運営
費交付金から削減していくというこうした予算の組み方の成立を許せば、これ
から先も同じ手法が繰り返され、学費標準額の値上げ改定毎に、大学は学費値
上げを強いられるという悪循環が繰り返され、長年にわたる大学の苦悩の始ま
りになります。学費値上げは受験生の減少にもつながり、地方大学にとっては、
その存立が危うくなりかねない問題でもあります。県民のみなさんが、国立大
学授業料値上げ反対の声をあげていただくことを期待します。

 来年度政府予算案は閣議決定されたに過ぎず、21日から始まった通常国会に
上程され、審議が開始されます。今、全国の国立大学がなすべきことは、昨年
12月8日の国大協臨時総会の確認に基づいて授業料値上げに反対する態度を堅持
し、国会における慎重かつ厳密な審議を求めることです。

 我々は、本日、国会での審議も議決も経ていない段階、標準額に関する文部
科学省令改正も行われていない段階では値上げを決定しないことを、瀧澤 弘
富山大学学長に申し入れました。

以上