トップへ戻る   以前の記事は、こちらの更新記事履歴
新首都圏ネットワーク


『岩手日報』2005年1月22日付

岩手大授業料値上げ 年間1万5千円


 岩手大(平山健一学長)は21日、2005年度から年間授業料を1万50
00円(2・9%)値上げし、53万5800円とする方針を発表した。国立
大学の年間授業料の目安となる「授業料標準額」引き上げに伴う措置で、同大
の授業料値上げは2年ぶり。同大は「教育の機会均等を損なう」などと慎重だっ
たが、このままでは財務の悪化が懸念されるため、値上げは「苦渋の選択」。
学生らには「仕方ない」とのあきらめムードも広がるが、親の負担は増えるば
かりだ。

 国立大の授業料は、私立大との格差を理由に、1987年から2年ごとに引
き上げられてきた。昨年4月の法人化後は、各大学が標準額を目安に授業料を
定めている。標準額の最大10%まで値上げが可能で、値下げもできる。

 岩手大は、法人化初年度の授業料は据え置いたが、国の標準額の1万500
0円引き上げで事情が一変。標準額が上がれば文部科学省からの運営交付金は
減額される上、法人化後は交付金自体も毎年減少。授業料を値上げしなければ
年間約1億5000万円の減収が見込まれていた。同大は経営面と教育、研究
面から検討を重ねた結果、同大が推進する地域サービス充実のためにも安定し
た大学経営が必要なことから「値上げやむなし」と判断した。

 学内の掲示板には21日、値上げを告げる文書が張り出された。宮城県出身
の人文社会科学部3年の氏家尚華さんは「家賃代もあり年間1万5000円は
大きい。親に負担を掛けてしまう」と困惑した様子。

 一方、工学部2年の安藤卓也さんは「国からのお金が出ないなら仕方ない。
もっと値上がりすると思った」と話し、農学部3年の伊藤大輔さんは「国立だ
から安い時代じゃなくなった。授業料に見合った教育を期待したい」と望む。

 同大に通う娘を持つ地方公務員中野和孝さん(53)=盛岡市下米内=は
「大学に入るまでも教育費がかかっており、学費の値上げは困る。教育、医療
など負担が増える国の施策に憤りを感じる」と不満をあらわにする。

 本県大学の授業料は県立大が岩手大と同額。私大はそれぞれ違うが、盛岡大
は年額53万円で、さらに設備費などで42万円が必要だ。

 一緒に標準額引き上げに反対していた弘前大、秋田大は05年度の授業料に
ついては検討中。室蘭工業大、山口大、高知大などは既に値上げを発表してい
る。平山学長は「教育の機会均等の役割を果たすべく値上げしない方向で努力
してきた。値上げは苦渋の決断」と苦悩の色を見せた。

【写真=授業料値上げの掲示板に見入る岩手大の学生】