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新首都圏ネットワーク


『2005年度大学関係政府予算案・授業料問題情報』(略称『予算・授業料情報』)

No.6=2005年1月12日発行

国立大学法人法反対首都圏ネットワーク事務局

 全日本学生自治会総連合中央執行委員会が、1月13日に開催される国大協臨時
理事会に向けて、以下の声明を発表しました。すでに国大協に手交するととも
に、文科省にFAXで送付したそうです。なお、授業料の値上げは、平成11年度入
学以降のすべての在学生に適用されることにご留意下さい。

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     「学費値上げストップ・大学予算増額」をもとめます

                 全日本学生自治会総連合中央執行委員会

 政府は、来年度政府予算案に、国立大授業料標準額1万5千円値上げ、私大助
成抑制(財務原案では減額)などの計画を盛り込み、学生(在学生を含む)や
父母のいっそう深刻な学費負担が懸念されます。

 「学費値上げストップ・大学予算増額」へ、高学費政策の根本的転換を要求
するとともに、当面、来年度授業料値上げをおこなわないよう、政府には政府
予算案の組みかえを、また各大学には大学人としての真摯な対応をもとめます。

裏面に本文

 政府は来年度予算案に、国立大学授業料の標準額を1万5千円引き上げ、53万
5800円とする計画をもりこみました。

 昨年4月からの国立大法人化で、授業料は、政府が標準額を定め、その10%を
上限に各大学が決めることになりました。しかし標準額が上がれば、新入生・
在学生の授業料も値上げしないと各大学の財源が減る仕組み(標準額通りの授
業料値上げを前提に、国の運営費交付金が減らされるので、授業料を値上げし
ないと各大学の収入が減る)になっており、多くの大学で、在学生も含めた学
費値上げが懸念されます。各大学は、来年度学費をどうするか、遅くとも2月頭
には態度決定が迫られています。

 文部科学省は国立大学運営費交付金を毎年0・8%削減し、5年後には450億円
の削減額になると伝えられ、今後連続的に学費が値上げされる可能性もありま
す。

 政府予算案は、私大助成も微増に抑えました(財務原案は減額を打ち出して
いました)。私立大学の経常費にたいする国庫補助は、1975年国会付帯決議が
50%をめざすとしましたが、80年の約30%をピークに、ここ数年は12%前後で
推移し続けています。昨年11月の財政制度等審議会(財務大臣の諮問機関)に
よる建議書は、「経常費補助についてはノノ予算縮減に向け厳しく見直しを図る
べき」としており、今後、本格的な削減も予想されます。

 この30年余で、初年度納付金(授業料・入学金など)は国立大で50倍の約80
万円、私立大で5倍の約130万円に達しています。学生はアルバイトに追われ、
月平均の食費は20年前を下回っています(80年28800円、2003年25120円)。
「学費・生活費を得るため少しでも割のいい深夜バイトをしている」「お金が
払えなくて進学をあきらめた友人がいる」など切実な声が相次いでおり、憲法
が定める「国民の教育を受ける権利」「教育の機会均等」の理念に照らしても、
事態はこれ以上放置すべきはありません。

 高等教育無償化にむけた世界の流れにてらしても、日本の高学費は異常です。
ドイツ、フランスの学費は基本的に無料。アメリカでも学生の6割を占める州立
大学は47万円で、大学生をもつ家庭への減税措置もとっています。高等教育予
算も、日本はGDP(国内総生産)比で0・5%と、欧米諸国の半分の水準にしかな
りません。日本政府が・高等教育における「無償教育の漸進的導入」・を定め
た国際人権規約第13条2項Cを保留し、高等教育無償化にむけた世界の流れに背
をむけていることについて、その態度を見直すよう、国連は、日本政府に2006
年6月までに回答をもとめています(いわゆる「2006年問題」)。

 「学費値上げストップ・大学予算増額」をもとめる学生の運動は広がりつつ
あります。全日本学生自治会総連合は昨年7月、学費集会を7年ぶりに開催し、
昨年3月によびかけた学費署名は2万4千筆集まっています。東京大学、東京都立
大学、日本福祉大学、立命館大学などでは、学費問題を柱の1つに、学生大会
に数百人・千人以上の学生が参加するなどのとりくみがすすんでいます。

 このなかで、東大、名古屋大学、信州大学など、各地の学生自治会と大学側
との交渉・話し合いの場で、大学側が"2005年度の学費値上げはおこなわない"
と言明したところも生まれています。とくに東大では、昨年10月29日の学生自
治会と大学側との学部交渉の場で、大学側が、「(国が定める標準額が上がっ
た場合でも、東大での授業料は)来年に関しては上がることは一切ない」「国
からガイドラインが出されても、方針は変わりません」と明言しています。国
立大学協会も、昨年12月8日、今後6年間(国立大法人の中期目標期間)に授業
料標準額を値上げすることは「容認できない」とする要望書を文科省に提出し
ています。

 「学費値上げストップ・大学予算増額」は、学生にとって切実であるばかりか、
21世紀の高等教育と日本の進路にとっても大義ある要求と考えます。高学費政
策の根本的転換を要求するとともに、当面、来年度授業料値上げをおこなわな
いよう、政府に対しては予算案の組みかえを、また各大学に対しては大学人と
しての真摯な対応を、心からもとめます。

(資料)各地の学生自治会と大学との交渉・話しあいでの学費問題でのやりとり

▼一橋大学。 2004年6月23日の副学長会合で。杉山副学長「2005年度は授業料
は値上げしない。」「(今後6年間、とくに標準額値上げの際の対応は)議論し
ていない。学長は『未来永劫そのままとは言えない』と言っている。」
▼東大教養学部。 10月29日の学部交渉で。兵頭副学部長「(国が定める標準
額が上がった場合でも、東大での授業料は)来年に関しては上がることは一切
ない。」「国からガイドラインが出されても、方針は変わりません。」
▼名古屋大学。 12月9日の学生生活委員会後の懇談会で。若尾副総長「政府か
ら基準となる学費の金額が示されていないので、来年度の学費について具体的
な検討はまだ行われていません。が、名古屋大学としては来年度の学費は据え
置きの方向で考えています。また、全国国立大学協会でも、12月8日の臨時総会
において、政府に対して学費を据え置きの方向でお願いしたいという要望を採
択しています。」
▼信州大学。 12月9日の信大学連委員長と学長との話しあいで。小宮山学長
「国大協臨時総会で、授業料標準額据え置きをもとめる要望書を採択した。高
等教育への財政責任を後退させるべきではないと私は考える。」

以 上