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『読売新聞』2005年1月9日付

科学立国の再生へ、基幹技術で10大戦略・・・学術審


 科学技術立国再生に向けた国際競争力強化のため、日本が今後10年以内に
重点的に開発に取り組む10の国家基幹技術が8日、明らかになった。

 スーパーコンピューター(スパコン)、計測技術、海底探査技術などで世界
最高水準の達成を目指す。バイオテクノロジー、ナノテクノロジーなどの先端
科学技術分野は、日米欧を中心に激烈な開発競争が繰り広げられていることか
ら、日本としても重点戦略目標を洗い出し、予算や人材など限られた資源を効
率よく配分すべきだと判断した。2005年度に政府が策定する「第3期科学
技術基本計画」(2006―2010年度)に盛り込み、国を挙げて開発に取
り組む方針だ。

 基幹技術の重点戦略目標は、科学技術・学術審議会(文部科学相の諮問機関)
の「国として戦略的に推進すべき基幹技術に関する委員会」(主査・小宮山宏
東大副学長)が洗い出しを行った。

 読売新聞が入手した文書によると、同委員会は「我が国の活力や国際社会に
おける存在感の源泉は産業の国際競争力にある」と強調したうえで、〈1〉高
い競争優位性を有する領域の維持・発展〈2〉波及効果の高い基盤的・根源的
領域における先導性の追求〈3〉国民の生命・財産、社会インフラの保護――
など6項目の観点から、具体的に開発を目指す基幹技術を挙げている。

 スパコンについては、遺伝子情報解析による新薬開発、ナノ(10億分の1)
メートル級の超微細な新材料の設計といったバイオ、ナノ分野の技術を飛躍的
に発展させるには高度なシミュレーション(模擬実験)能力が不可欠との観点
から、重点目標に位置づけた。具体的には、海洋研究開発機構横浜研究所(横
浜市)にあるスパコン「地球シミュレータ」の次世代機を2010年までに開
発するとの目標を掲げた。

 計測技術も、ナノメートル以下のサイズの3次元観察や加工を可能とするの
に欠かせないことから、各国が能力向上を競っている。同委員会では、和歌山
市の毒物カレー事件の鑑定など犯罪捜査にも利用されている、放射光を利用し
た世界最高性能の分析・解析施設「SPring―8(スプリング・エイト)」
(兵庫県三日月町)の次世代機を2010年までに開発するとしている。

 海底探査は、エネルギー資源や有用な微生物・酵素の発見、海底地震発生メ
カニズムの解明などの観点で重視した。2003年5月に流失した無人探査機
「かいこう」の後継機として世界最深部(約1万1000メートル)の調査が
可能な作業ロボット技術を2010年までに確立する計画だ。

 宇宙開発分野では、H2Aロケットによる基幹ロケット技術を発展させ、人
工衛星の打ち上げから惑星間輸送まで多様な宇宙活動を可能にする宇宙輸送シ
ステムを2015年を目標に開発するとしている。