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新首都圏ネットワーク


『琉球新報』論壇 2005年1月7日付

政府の干渉を許すな
琉大学長選は従来通り実施を  永井 實


 法人化を果たし、最初の新年を迎えた琉球大学で、今、とんでもないことが
画策されている。

 すなわち、琉球大学経営協議会(学長選考会議)は次期学長候補者の選考に
関し、同大学が国立大学法人に移行したことを唯一の根拠に、現行「学長候補
者選考規則(一九七三年制定)」を一方的に改悪し、次期学長候補者の選考に
入ろうとしている。

 伝えられるところによれば、従来、当然の民主的ルールとして実施されてき
た「学長候補者選挙管理委員会の施行する全学教員による選挙」を意味不明の
「意向調査」に変質させ、しかも同「調査」によって選ばれた候補者が必ずし
も学長になるとは限らないとする驚くべき内容を含んでいるようだ。

 これは明らかに歴史に逆行する企てであり、戦後民主憲法の下育(はぐく)
まれ、確立されてきた国立大学の民主的運営を根底から覆し、大学を再び戦前
型の「もの言わぬ大学」に戻そうとする暴挙と断ぜざるを得ない。

 しかも今回の企てが、現学長森田孟進氏が任命した学外委員によって主導さ
れ、規則に反して森田氏の再選を計るものとあっては、この暴挙が同大学の歴
史を(米軍占領下で経験したように)再び傷つけることは明らかであろう。

 会議の中で最も声高に「学長選挙無用論」を唱えている学外委員が誰あろう
「元文部事務次官井上孝美氏」とあっては、そこに日本政府の強い意図を感ぜ
ざるを得ないではないか。森喜朗元首相が屈託もなく発言したように、「沖縄
の新聞社と大学には共産党が多数」だから、まず大学からおとなしくさせたい
のか。ともあれ、「権力者は選挙を嫌う」という定理がまたもや証明された。

 経営協議会のこのような動きに対し、同大学では、既に決議を上げて抗議し
たと聞く。理学部教授会、教育学部教授会をはじめ、全学から多数の抗議、批
判、疑問の声が上がっていることは当然である。

 森田学長や県内選出の経営協議会委員諸氏は今こそ、その良心に立ち戻って、
日本政府・与党勢力のあからさまな干渉、大学の自治破壊を断固許さず、当面、
次期学長候補者の選考は現行学長候補者選考規則ならびに関連諸細則に沿って
実施する立場を明瞭(めいりょう)にすべきではないか。

 (琉球大学工学部教授)