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新首都圏ネットワーク


『科学新聞』2004年12月24日付

高等教育の将来像示す
各機関の役割など明確化


 大学のあり方が大きく変わる。中央教育審議会は、2015年から20年までを想
定した日本の高等教育の将来像とそこに至るまでの中期的なロードマップを示
した。国の役割が「高等教育計画の策定と各種規制」から「将来像の提示と政
策誘導」へと変化してきたことから、各機関の役割を明確化し、教員組織や学
位のあり方など教育システムを再構築する。文部科学省ではこれを受けて、来
年1月から始まる次期通常国会に学校教育法の改正案を提出するほか、関係省
令を改正する。

 高等教育の量的変化に対応するため、各高等教育機関が自ら行う経営改善努
力への支援や経営状況の悪化した機関への対応策の充実を図る。学問分野ごと
の人材養成に関する需要を的確に把握するとともに、人材養成に関する高等教
育機関側と産業界側等との対話・協議の場の設定や意欲的な取組の評価・顕彰
等を通じて、社会にニーズと高等教育のマッチングを図る。

 大学・短大への進学率が約50%に達し、高専や専門学校を加えた進学率が約
75%に達している状況を踏まえ、各機関の個性・特色の明確化を通じた機能別
分化を促進する。特に、各機関ごとのアドミッション・ポリシー(入学者選抜
の改善)、カリキュラム・ポリシー(教育課程の改善)、ディプロマ・ポリシー
(出口管理の強化)の明確化を支援する。

 教育課程については、国際的通用性や学習者への保証からより明確化する。
学士課程は、教養教育や専門教育等のあり方を総合的に見直して再構築。また、
多様で質の高い教育の展開のため、教養教育と専門基礎教育を中心に主専攻・
副専攻を組み合わせた総合的教養教育型や専門教育完成型など様々な個性・特
色を持つものに分化。大学院では、全体として課程制大学院制度の趣旨を踏ま
えて大学院教育の実質化を図る。修士・博士課程で体系的な教育課程を踏まえ
たコースワークを充実させる。

 短大では、課程の修了を学位(短期大学士)取得に結びつけるように制度改
正する。高専については、単位計算方法を改善し、大学や外国の学校との互換
性を拡大させる。専門学校では、4年制で一定レベル以上の学校については大
学院入学資格を付与する。

 さらに大学の教員組織を改善し、教育・研究を主たる職務とする教授、準教
授の他に新しい職を設けて3種類にするとともに、教育・研究の補助を主たる
職務とする職として新助手を設ける。また、大学設置基準の講座制や学科目制
に関する規定を削除して、教員組織の基本となる一般的なあり方のみを規定し、
具体的な教員組織の編成は、各大学が自ら教育・研究の実施上の責任を明確に
し、より自由に設計できるようにする。

 公財政支出については、全体として拡充させ欧米諸国に近づけるようにする
とともに、国民(納税者)の理解を得られるよう、説明責任を十分果たしてい
く。国立大学については、教育・研究の特性に配慮しつつ、それぞれの経営努
力を踏まえて、政策的課題(地域貢献、新たな分野の人材養成、大規模基礎研
究等)への各大学の個性・特色に応じた取組を支援する。私立大学については
基盤的経費の助成を進める。その際、国公私にわたる適正な競争を促すという
観点を踏まえ、各大学の個性・特色に応じた多様な教育・研究・社会貢献の諸
活動を支援。公立大学については、地域における知の拠点としての機能を発揮
できるように支援する。

 国公私を通じた競争的・重点的支援を拡充することで、積極的に改革に取組
大学等をきめ細やかに支援する。さらに民間企業を含めた研究開発のための公
的資源配分を大学等にも開放すること、競争的研究資金の間接経費の充実、奨
学金等の学生支援を充実させる。

 文科省の惣脇宏・高等教育企画課長は「国の役割が規制から政策誘導に変化
している。国民のニーズに合う大学を財政的に支援することで改革を進めたい」
と話している。