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『文部科学教育通信』2004年12月13日号 No.113

公立大学協会 学長会議・事務局長連絡協議合同会議

 七〇%の公立大学が法人化を検討

 公立大学協会(会長・西澤潤一岩手県立大学長)は、十一月二十四・二十五
日に学長会議・事務局長連絡協議会合同会議を開催した。

 会議は、西澤潤一会長の挨拶の後、「地方財政の展望と公立大学」と題する
総務省自治財政局財務調査課の高尾一彦課長の基調講演があり、さらに公立大
学協会の諸活動の報告があった。また、公立大学に共通する最も緊急かつ重要
な八テーマの研究開発につきそれぞれの委員長から中間報告があった。二日目
の二十五日は課題別分科会とその討議結果の発表が行われた。

 公立大学協会の平成十六年度重点目標は、本年五月十四日の第六三回総会で
示された五点[(1)公立大学協会のビジョン実現のためのスキーム構築、
(2)公立大学の共通課題に関する研究・開発の推進、(3)公立大学協会が
行う公立大学教職員の能力開発のあり方、(4)法人化への支援、(5)公立
大学協会の機能強化]で、今合同会議でもそれらのポイントを中心に報告や討
議がなされた。

 特に注目されたのは、平成十六年四月一日から施行された地方独立行政法人
法に基づく「法人化」の取組で、十一月五日付の学長アンケート集約によると、
法人化について検討している大学が、七〇・一%であると報告された。また、
「法人化」については、第二日の課題別分科会でも討議された。ここでは、十
一月二十四日の「法人化特別委員会(委員長・森正夫前愛知県立大学長)報告」
と二十五日の「課題別分科会・公立大学の法人化について」の一部を紹介する。
(編集部)

 【法人化特別委員会報告】

 ■法人化特別委員会の設定課題と現在の進行状況

 課題1「公立大学法人化の進行状況と問題点に関する調査・研究」:平成十
六年十月法人化に関する学長アンケートを実施【表1参照】。

 課題2「公立大学・設置者等に対し、法人化に関する相談・講師紹介・情報
提供等の支援」:平成十六年度事業として、法人化に関する相談、講師派遣、
資料提供を開始した。

 課題3「法人化を進める大学間の公立大学情報交換会の検討・準備」:平成
十六年十二月七日東京で第一回公立大学法人情報交換会を実施予定。

 課題4「公立大学協会における『就業規則』のあり方とモデルの研究・開
発」:人事制度専門委員会で実施。

 課題5「公立大学法人会計ガイドの開発」:「公立大学法人会計テキスト」
を作成した。

 課題6「地方独立行政法人評価委員会のあり方に関する調査・提言」:法人
化特別委員会における調査研究の成果を評価専門委員会において継承。

 【課題別分科会】

 「公立大学の法人化について」をテーマにした課題別分科会は、森正夫法人
化特別委員会委員長を座長に、佐々木恒男青森公立大学長、南努大阪府立大学
長、吉尾啓介国際教養大学事務局長を問題提起者として討議が展開された。

 大阪府立大学については、平成十四年十二月に大阪府が「大阪府大学改革基
本計画」を策定し、平成十七年度を目途に、府立三大学を再編統合して一つの
「新生府立大学(仮称)」として高度「研究型」大学を目指すとともに府の運
営から大学法人による運営への転換を図ることにした。「府立大学法人像につ
いて(案)」は、改革基本計画で示した府大学の法人化の実現に向けて法人化
後の姿等を明らかにすることを目的としてまとめたものである。この取りまと
めに当たっては、改革基本計画の具体化を推進するため、平成十四年九月に設
置した「府大学改革具体化推進会議」(設置者と大阪府立大学・大阪女子大学・
大阪府立看護大学三大学で構成)での議論を踏まえるとともに、大学の教育研
究活動を活性化させ、改革基本計画が目指す新大学にふさわしい法人とするた
めにはどうあるべきか、運営組織、目標評価制度、人事会計制度など、制度全
般にわたり検討を行った。そして、新大学において教育研究機能の充実や地域
貢献、社会貢献の機能強化等を図るための、大学の「自主性・自律性」や「機
動性・柔軟性」を高めるべきとの認識のもと、教育研究の特性を考慮しつつ、
「効率性」「透明性」をも備えた大学運営の確立や目標評価システムの導入な
ど、府大学法人化の実現を図るものとする。新大学設立準備委員会では、「新
大学法人設置WG」「企画運営WG」「中期計画WG」「財務会計WG」「人
事制度WG」の五ワーキンググループを設置した制度設計の方針で特徴的なこ
とは、以下の点である。理事の中で経営担当を公募し、産学官連携・社会貢献
担当を外部から入れる。また、経営会議一〇名以内のうち半数を学外者とし、
教育研究会議二五名のうち二名を学外者にする。

 国際教養大学の場合は、以下のポイントが問題提起された。(1)運営費交
付金をどう決定していくか。(2)独立行政法人のメリットは自分で稼ぐこと
ができることだが、稼げない制度になっている。(3)人事は県の人事に左右
され、在職二〜三年で異動する。大学と命運をともにする人がいないといけな
い。

 討議では、大学運営の最高責任者は誰か、理事長なのか。また、理事の法的
責任とは何か、といったことが明確ではないという点の指摘があった。

 表1:公立大学法人化に関する学長アンケート集約(選択肢)
 更新日:2004/11/5 対象数 77 回収数 77 回収率100.0%

問1 法人化について検討しているか          回答数   割合
 a 検討している   54   70.1%
 b 検討していない                  21   27.3%
問2 1でaと回答した場合のみ
 a 評議会または教授会で検討し大学としての合意が確立 12    15.6%
 b 評議会または教授会で検討しているが大学案作成には至らず
                            6    7.8%
 c 全学的委員会及び部会等で検討し案を作成       3  3.9%
 d 委員会、ワーキンググループ等で検討中       20   26.0%
e 学内の非公式の機関(研究会・勉強会等)で検討中   4    5.2%
 f 学内の組織的な議論はない              2    2.6%
 g その他                      10 13.0%
問3 1でbと回答した場合のみ
 a 国立大学や今後法人化する公立大学の事例を見て検討 16   20.8%
 b 法人化するよりも現行の直営形態の維持が適切と判断  3    3.9%
 c その他                       4    5.2%
問4 法人化について具体的準備を進めているか
 a 進めている                    26   33.8%
 b 進めていない                   42   54.5%
 c その他                       7    9.1%
問5 具体的準備の組織
   設置している                  26   33.8%
問6 設置団体では法人化についてどのような方針をとっているか
 a 設置団体は法人化する方針を決定し具体的準備を推進 21   27.3%
 b 設置団体の諮問機関で議論終了、答申等で法人化の方向提示済
                            7    9.1%
 c 設置団体の諮問機関で議論が進行中         10  13.0%
 d 設置団体における組織的検討はなされていない    27  35.1%
 e その他                      12   15.6%
問7 法人化に関する大学と設置団体の協議の状況
 a 大学と設置団体双方のメンバーによる公式の実施準備の場がある
                           12   15.6%
 b 大学と設置団体双方のメンバーによる公式の検討の場がある
                           16   20.8%
 c 大学が作成した案について大学で検討中        3 3.9%
 d 設置団体が作成した案について大学で検討中      2 2.6%
 e 大学と設置団体の間で議論が行われていない     29 37.7%
 f その他                      14 18.2%
問8 大学及び設置団体で法人化を決定し実施時期について協議している場合、法人
化の時期について
 a ()年度に法人化することを決定している      15   19.5%
   決定 17年 10 18年 4 19年 0 20年 1
 b ()年度に法人化することを予定している       8 10.4%
   予定 17年 1  18年 6 19年 1 20年 0
 c ()年度に法人化することを検討している      2 2.6%
   検討 一七年 0  18年 2 19年 0 20年 0

注意 回答率は回収数に対する割合。複数回答または無回答が存在したため必ずしも
計は100%にはなりません。
   回答率は小数点以下2桁を四捨五入。
   各設問および選択肢の表現は省略してあります。