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新首都圏ネットワーク


『毎日新聞』2004年12月20日付

05年度予算案:国立大授業料 「標準額」1万5千円上げ


 教育や治安対策はどうなるのか−−。05年度予算の財務省原案に国民生活
が透けて見える?

 ◆国立大授業料 国立大間でバラツキか

 国立大学の授業料の目安となる「標準額」を1万5000円引き上げ、53
万5800円とすることで、財務省と文部科学省はほぼ合意した。国立大学法
人運営費全体では0.8%減の1兆2317億円が計上された。国立大の授業
料は今年4月の法人化前は、全国一律52万800円とされていたが、法人化
後は各大学が標準額を目安に授業料を定める。来年度は国立大間で初めて授業
料にバラツキが出そうだ。

 政府は、私立大(授業料の平均は80万7413円)との格差を理由に、0
3年度まで隔年で授業料と入学料を値上げしてきた。今年度は入学金を値上げ
する順番だったが、「入学金については私大との格差は解消された」との理由
で据え置かれた。

 法人化後の省令では、授業料は標準額の最大10%まで値上げすることがで
き、値下げは無制限と決まった。文科省は「法人化はもともと、各大学の違い
を目指しているわけで、バラツキが出るというのはその趣旨が具現化するとい
うことだ」と受け止める。【千代崎聖史】

 ◆刑務所の過剰収容対策

 刑務所の慢性的な「定員オーバー」に対応するため、法務省の矯正施設整備
費には、今年度の補正予算と合わせて計約800億円が認められた。施設を増
設するなどして、05年度末までに定員を約1万1000人増やし、過剰収容
状態を緩和させるという。

 今年11月末時点の受刑者数は約6万5000人に達し、定員を約1万人超
過している。各刑務所は、独居房に2人収容したり、倉庫や教室を居房に改修
するなどの措置を余儀なくされており、法務省は「収容状態は過去30〜40
年で最も厳しい」としている。定員増によって、一時的に過剰収容はほぼ解消
される見込みだが、「重罰化」された改正刑法が来月施行されることに伴って
刑期が長くなることも予想され、収容者増と定員増のイタチごっこが続きそう
だ。【森本英彦】

 ◆少年非行対策 対話集会に1200万円

 警察庁の予算では、少年非行防止対策の一つとして、加害少年と被害者側が
話し合いを持つことで立ち直りを目指す「修復的カンファレンス(対話集会)」
モデル事業に1200万円が認められた。

 修復的カンファレンスは、加害者、被害者と地域社会が一緒になって、関係
の回復や和解を促す考え方。ニュージーランドで始まり、74年にカナダで
「被害者・加害者和解プログラム」が導入されて注目を浴びた。オーストラリ
ア、英、米などにも広まり、数百の実践例があるという。

 警察官などが司会役を務め、非行少年と保護者、被害者とその関係者が討議
することで、非行少年の立ち直りや被害回復などを目指すことが検討されてい
る。来年度、全国の百数十地区を選び、実際に討議を行ってその効果を検証し、
本格導入に向けた準備を進める。

 同庁は「外国と日本では文化も異なり、強制して討議の場を設けることはで
きない。合意を得つつ、日本にあったやり方とはどういうものか、慎重に運用
していきたい」と話している。【窪田弘由記】

 ◆児童虐待対策 各自治体で24時間対応

 厚生労働省は都道府県と政令市の設置する児童相談所のうち、各自治体で最
低1カ所は24時間対応できるよう、児童福祉司など専門職を夜間、休日にも
常駐させることを決めた。国が2分の1を負担する補助事業で、来年度予算案
の財務省原案に盛り込まれた。

 児童虐待が年々増加する中、早期対応を充実させるためで、福祉司などの児
相OBや福祉関係者らを非常勤で雇用し、虐待の通告を受けたとき、迅速に処
理できる体制を目指す。都道府県、政令市の中央児相が対象になる見込み。
【玉木達也】