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新首都圏ネットワーク


『陸奥新報』2004年12月18日付

04年回顧(2) 弘大法人化

発展、存続へ課題多く


 二〇〇四年四月、全国の国立大学が一斉に法人化した。各大学は国の行政組
織から独立し、教職員も公務員の肩書を外した。大学の予算の一部は国からの
運営交付金で賄われるが、大学側自体も産学官連携などで資金獲得に動かなけ
ればならなくなった。

 少子化で受験生の奪い合いも懸念される現状では、地域に開かれ、地域に支
持される大学でなければ生き残れない。全国国公私立大学の激しい競争の中に、
弘前大学も身を投じた。

 弘大は人文、教育、医、理工、農学生命科学の五学部から成る中規模総合大
学。大学院や付属学校も含めると八千人以上の学生、児童・生徒が所属し、県
内外から大勢の若者を集めている。

 弘大の存在が弘前市の経済活動に寄与していると言っても過言ではない一方、
「身近」と呼ぶには市民と大学間に意識のずれがあったことは否めない。

 法人化前の運営諮問会議で、学外委員は弘大関係者の「大学は敷居が高い」
などの発言をとらえ「相手にされなくなっているだけ。旧態依然とした意識が
問題だ」と指摘した。

 弘大はこれらの評価をインターネットなどで公開し、古い体質を捨てる心構
えを自分たちに課した。

 法人化後の弘大の合言葉は「地域のための大学」。市民を対象とした生涯学
習や公開講座の実施、地元企業との連携が以前にも増して図られるようになっ
た。ねぷた絵を芸術として見直す提案など、「地域の大学」としての活動も目
立ち始めている。

 しかし大学側にもジレンマがある。学生が必ずしもレベルの高い教育を求め
ているのではなく、「整った環境で気楽に過ごし、あとは就職することができ
れば」と希望している場合も少なくないからだ。

 今後は、受験生の定員割れも予想される中、「最高学府は能力のある教員を
確保し、充実した講義を提供すればいい」といったきれいごとでは学生を集め
られない。大学の発展、存続を見据えた構内整備や就職支援活動が弘大の新た
な課題となる。

 学問の場を提供する大学本来の役割に加わった会社組織としての側面。法人
化後の課題は多い。