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新首都圏ネットワーク


『しんぶん赤旗』2004年12月15日付

都議会委
都立4大廃止、首都大設立案を可決
共産党は反対 自律性失う恐れ


 都議会文教委員会は十四日、都立四大学を廃止し、公立大学法人首都大学東
京を設立する議案を自民、公明、民主、生活者ネットの賛成で可決しました。
日本共産党と自治市民は反対しました。十六日の最終本会議で議決します。

 議案は、都立大、都立科学技術大、都立保健科学大、都立短大を来年三月末
で廃止する条例案と、来年四月開学の首都大学東京を設置する公立大学法人の
定款案など。

 定款案は、知事が任命する理事長に、学長の任命や法人の運営で強い権限が
集中する内容。しかも法人が大学の自治に介入する仕組みになっています。定
款案で経過措置として二〇一〇年度まで存続する現四大学も、同法人のもとで
学則などを変更するとしており、大学関係者らは「大学の自治と学問の自由を
奪う」「在学生の勉学・研究条件が保障されなくなる」と批判しています。

 採決に先立つ意見表明で、日本共産党の木村陽治都議は、定款案が本来大学
が行う教育研究にかかわる業務まで「法人の業務」として定め、理事長に権限
を集中させるなど、「地方独立行政法人法に違反し、行政に対する大学の自律
性も失われる」と指摘。国立大学法人や私立大学と比べても「学問の自由、大
学の自治を保障するうえで、大きな疑義がある」と、抜本的見直しを求めまし
た。

 自公民ネット各派の委員は一言も意見を表明しませんでした。


解説
自、公、民、ネットが賛成
学問の自由守れと共産党

 都立四大学廃止条例案、公立大学法人首都大学東京定款案に自民、公明、民
主、生活者ネットが賛成したことは、大学側との協議も拒否して四大学を廃止
し、大学の自治、学問の自由を踏みにじるもので、“オール与党”の態度が問
われます。密室で準備

 都は都立四大学(都立大、都立短大、科学技術大、保健科学大)代表も加え
て大学改革大綱の具体化を進めてきました。

 石原慎太郎都知事は昨年八月、四大学との協議内容を一方的に破棄し、新大
学をつくる構想を発表。大学側との協議を拒否して、教職員「同意書」の提出
を要求するなど強権的に首都大学東京構想を推進してきました。

 これに対し都立大学の茂木俊彦総長は十月七日、「設置手続き上、また市民
常識的にも、正当なものだとは到底言えない」と厳しく批判する声明を発表。
四大学の教職員、学生、院生、OB、都民の批判が急速に高まり「都立大学を
考える都民の会」を結成しました。

 首都大を設置する公立大学法人理事長予定者に財界人の高橋宏氏を石原知事
がトップダウンで決定。「都市環境学部」など学問的根拠も不明確な学部構成、
学問の自由、学習・研究水準の保障への不安から、大学関係者から強い批判が
起き、研究者の学外への流出も起きています。

批判が噴出

 四大学の関係者だけでなく、全国の学者・文化人、研究者などから石原都政
の強権的な手法に批判がわきあがりました。都議会文教委で、これらの問題を
厳しく追及して「学問の自由、大学の自治を守れ」と迫った政党は日本共産党
だけでした。

 日本共産党の木村陽治都議は首都大学東京の定款案を審議した十三日の都議
会文教委で、「大学の自律・自主の点で国立大学法人や現在の都立大よりも大
きく後退するもの」と定款案を批判。「定款案を撤回し、関係者と協議してつ
くり直すべきだ」と追及しました。十四日の採決では「学問の自由、大学の自治
を保障するうえで大きな疑義が存在する」とし、定款案、都立四大学廃止条例
などの議案に反対しました。

自、公、民は

 十三日の都議会文教委で自民党の村上英子都議は「わが党の山本、遠藤両都
議がかかわってきた都立の新大学がいよいよ花開こうとしている」と礼賛。

 公明党の石川芳昭都議は「定款案には批判的意見も多々ある。多くは法人化
の趣旨が理解されていないと思われるもの」と批判の声を敵視し、「首都大学
はこれから実績を示して、心配する必要はなかったという運営をしてもらいた
い」と都を激励しました。

 民主党の花輪ともふみ都議は「大学の自治、学問の自由が担保されるのか不
安だ。戦前は政府があの手この手で学問の自由を抑え込んでいた」とのべまし
たが、十四日の採決では定款案に賛成する首尾一貫しない態度をとりました。

 都議会生活者ネットワークの山口文江都議も定款案に賛成しました。

室伏敦記者