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[AcNet Letter 218] 「経営コンサルタントから見た首都大改革」 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ Academia e-Network Letter No 218 (2004.12.11 Sat) http://letter.ac-net.org/04/12/11-218.php ━┫AcNet Letter 218 目次┣━━━━━━━━━ 2004.12.11 ━━━━ 【1】私達の身分・給与はどうなるか ー経営コンサルタント永井隆雄氏から見た首都大改革― http://www.bcomp.metro-u.ac.jp/~jok/nw4-102804.html 【1-1】都立大の危機 FAQ 緊急情報のコメント2004年12月10日より http://www.bcomp.metro-u.ac.jp/~jok/kiki.html#121004-kconsultant 【1-2】「都市教養なるもの」を超えて 2004.12.10 「5年任期で再任も可」ポスト導入への仏研究者全体の抵抗、他 http://blog.livedoor.jp/remember309/archives/10531189.html 【2】高等教育予算についての大学関係者の声明 【2-1】国立大学協会臨時総会声明「国立大学関連予算の充実について」 http://university.main.jp/blog2/archives/2004/12/post_207.html 【2-2】国庫助成の大幅な増額を求める 京滋私大教連共同アピール 2004.12.4 http://www.bekkoame.ne.jp/~kfpu 【3】BLOG より抜書 【3-1】BLOG:ごまめのはぎしり 2004年 12月 10日 寒冷地手当問題のその後のその後 http://nobusan.exblog.jp/1420608 【3-2】BLOG:Academia e-Network Project 2004.12.09 政府と大手メディアによる、未必の故意による殺人 http://ac-net.org/item/67 【3-3】BLOG: 法と常識の狭間で考えよう テロ対策としての来日外国人の指紋採取は許されるのか? http://beatniks.cocolog-nifty.com/cruising/2004/12/post_2.html 【3-4】BLOG:Falluja, April 2004 - the book イラク向けフェニックス作戦 http://teanotwar.blogtribe.org/entry-575d00414a42de233e43fc0077e6ddee.html 【3-5】平川研究室Blog どっちがよりリアルなリアリズム? 2004.12.11 http://www.cs.kyoto-wu.ac.jp/~hirakawa/diary/archives/200412/110231.php ━ AcNet Letter 218 【1】━━━━━━━━━━ 2004.12.11 ━━━━━━ 私達の身分・給与はどうなるか ー経営コンサルタント永井隆雄氏から見た首都大改革― 『大学に新しい風を』第4号(2004年10月28日) 発行:東京都立大学・短期大学教職員組合 「大学に新しい風を」編集委員会 インタビュー形式記事 http://www.bcomp.metro-u.ac.jp/~jok/nw4-102804.html ────────────────────────────── #(編註:抜書。) 永井隆雄氏。慶応大学商学研究科を経て、現在はAGP行動科学 分析研究所所長。日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師。 数々の企業の雇用改革に携わった経験を持つ永井氏は、その中で企 業のやり方は仕方ないと思いつつも、「根っこでは人事改革はひど い」とも感じて来られたという。永井さんの目から見て、今度のク ビ大改革はどのように映るのだろうか。果たして私達の身分・雇用 はどうなるのだろうか。以下のインタビューをお読みいただきたい。 1.学生が消費者になったとき ・・略・・ 2.民間企業では訴訟を起こしても結局は無駄? ・・略・・ 3.年俸制で給料はどう変わる? <お渡しした資料が、年俸制について都庁から説明されているすべ てです。これについて、まず印象をお聞かせいただけますでしょう か> 二つあります。一つは素人が作ったとは思いにくい手の込んだ賃下 げ織り込みの年俸制方式の賃金制度と思いました。よくあるもので すが、(1)退職金を年俸で受け取るかどうかを選択できるというのは 目新しいですね。表向き個人の税金と手取りがどうという説明をさ れますが、退職金原資と毎年の人件費があいまいにならないでしょ うか?年俸が下がるけど、退職金で受け取ると手取りが多いよとい うのですが、少し危険です。よく年俸を下げるときに使う方便です。 1050万を超えると累進税が多くなります。こんなときに退職金 で受け取らないかというのですが、退職金は退職事由係数もあり、 目減りする可能性があります。(2)年俸のポイント制ですが、おそら く相対評価になります。ポイントは絶対評価で決めるのですが、ポ イントを調整し、単価は原資を全教員の総ポイント数で割って算定 し、あらかじめ決まった枠で人件費をセーブします。格差を確保し ながら全体の原資を下げるにはいい方法です。 もう一つ、職務給の割合がとても高いのではないでしょうか。都庁 の資料では、基本給が5割となっていますが、この生活給の部分に 教授・助教授での格差が織り込まれています。ということは、ここ にも職務給が反映されていると考えるべきで、業績給・職務給の割 合が全体で7割程度あると考えるべきなのではないでしょうか。 4.上司が査定するときに生じる「寛大化傾向」とは? ・・略・・ 5.結果的に昇進も相対評価になるだろう ところが、こういうことをやっていると必ず相対評価をしていくこ とになるのです。例えば助手から研究員とか、助手から講師へと言っ たように一段階上がる際、4人に3人とか、3人に2人というような管 理する数字を予め設定しておきます。助手3人だったらこのなかから 2人を専任講師に昇進させる。あるいは専任講師を雇う際、5人採用 した内の3人を助教授に昇進させる、といった絞込みを行うことにな るはずです。まずそのような昇進時に相対評価によるセレクション が行われてしまうわけです。 ・・略・・ 6.業績給の算定は使用者が恣意的に計算できる? ・・略・・ 7.現在の給与額を保障するということの本当の意味とは <われわれが現在、東京都から受けている説明は、新制度を導入し ても現行の給料からは下がらないようにするというものです。この 点はどう解釈すればいいのでしょうか。> それは当分の間調整するといった程度の意味でしょう。(略) 業 績給への移行は当然2年か3年調整にかかるのが通例です。その調 整の時期だけ、現行の給与を保障するということだろうと思いま す。 ・・略・・ 8.成果主義を導入すると平均2割減3割減は当たり前? <一般企業で成果主義を導入した場合に、3割4割減るは当たり前な のでしょうか?> ・・略・・ 同じような動きは大学でも広がっています。立教大学がいい例だと 思うんですが、特任教授という制度が2〜3年前にできました。特任 教授というのは対外的には教授。ところが一年任期で都合2〜3年し か雇われないという制度です。立教大学には常勤の教師に対してサ バティカルという制度があって、正教員がサバティカルをとる際に、 特任教授を入れるというのが制度になっている。例えば特任教授は 年俸300万から500万位でしょうか。その方たちは週に4コマ。まとめ てやれば一日の出勤で年収300万稼げるので後はアルバイトする、と いった生活です。 特認教授の300万だけでは生活していくには少ないけれど、立教大学 の教授という肩書きを得ることができるというメリットがある。大 学としては正規の教員としてカウントできるので、かなり人件費の ところは削減できる、ということで双方のメリットになっている感 もあります。 9.退職金なんて払わなくてもよい? ・・略・・ 10.東京都の年俸制度はよく仕組まれた制度? <先ほどこの年俸制度の運用表がよく出来ていると仰いました。 より具体的に教えてください。> ・・略・・ 例えばある教員がどうして私は1000万だったのが800万になったん ですかと聞くと、それはあなたのこういうところとこういうとこ ろが評価が低かったので、そういうところを上げてくれれば給与 が増える可能性だって色々あるんだよ、他にも減っている人がい るから、といったことを、人事委員会は直接回答するのではなく て、コース長とか主任教授に指示して、例えば「ちょっと大串先 生からいってくださいよ」と、押しつけてしまうわけです(笑)。 11.他大学のオープンカレッジの状況は? <永井先生はオープンカレッジの状況についてもお詳しいとうか がっています。他大学の状況について教えていただけますか> オープンカレッジはどこの大学でも経営として成り立っていません。 ・・略・・ 東京都の場合、例えば20人〜30人の教員が来るとします。固定費 が、一人1000 万として計算して、2億3億4億かかるでしょう。こ んなもの採算あうわけが無い。給与だけでも。あと建物も建てる わけでしょ、建物の減価償却の半分だけ負担して、半分を都が出 すことになるとしたって、それなりの家賃がかかる。そういった 固定費の採算を考えて、例えば年間5億の収入が必要になります。 年間50万払う生徒がいるとして、何人集めないといけないのかと すると、5億円を50で割ったら1000人もの社会人学生を集める必要 があります。かなりたいへんですよ。発足当時はまあ移行措置で 東京都が赤字を補填するとしても、長期か中期かわからないけど 民間委託というのが行われる、その瞬間から大幅な赤字が表面化 するんですよ。実質そこで解散になる危険があります。大学の非 常勤講師だけで運営したとしても収入が不足しているのが現状な んです。例えば学生を集めるには広告費がかかるわけですから、 学費がすべて利益になるわけではありません。そういうなかで、 年収1000万の教員を抱えたって、数人、 5人くらい抱えるのがせ いぜいでしょう。 12.首都大学にも希望がある? ・・略・・ ────────────────────────────── 【1-1】都立大の危機 FAQ 緊急情報のコメント2004年12月10日より http://www.bcomp.metro-u.ac.jp/~jok/kiki.html#121004-kconsultant ────────────────────────────── 『経営コンサルタントの目は厳しいですね。特に,最近,「任期制・ 年俸制なんて何も決まっていないに等しいから無視できる」とい う楽観的観測が流れているようですが,それは違います!楽観視 している人は,よくお読みになるとよいでしょう。また,オープ ンユニバーシティが短命であることを予言していますね。これも また,現実的な判断でしょう。ただし,「首都大学にも希望があ る?」で「例えば主専攻を機械工学とし副専攻を文学とする、と いった形で二つの専攻を同時に学ぶといったことも可能になりま す。そういった意味では日本ではじめての大学ではないでしょう か。」 という所には疑問を感じます。まず,このような専攻の選 択を望む学生がいないだろう,という点,キャリアカウンセラー がそのような組み合わせを勧めないだろう,というのがもう一点。 首大は制度的にいって,希望はありません。「単位バンク」を強 行すれば,「専攻」という概念すら崩れてしまうのですから。』 ────────────────────────────── 【1-2】「都市教養なるもの」を超えて 2004.12.10 http://blog.livedoor.jp/remember309 二つの3月9日 −SOSから提案へ http://blog.livedoor.jp/remember309/archives/10531189.html #(編註:ブログ著者による声明: 「かくして、私は、クビ大非就任者になった 」2004.7.3 http://www.kubidai.com/modules/xfsection/article.php?articleid=2 ) ────────────────────────────── 抜書『自分のメールボックスには、フランスの「研究を守ろう」 という会から、たまにメールが届く。 ・・略・・ 11月25日のメー ルは、「緊急メッセージ」というタイトル。なにかと思って、開 いてみると、研究担当大臣が、「100分間で説得します」というテ レビ討論番組に出演したが、そこで「5年任期で再任も可」のポス トを大幅に増やし、若手研究者の雇用対策にするというような発 言をしたので、署名を集めて、これを撤回させようというのが趣 旨であった。 ・・略・・ 大臣の提案通り、5年任期のポスト数 が拡大してしまうと、終身雇用のポストではなく、こちらが若手 にとっての主たる選択子にならざるを得なくなり、この枠内で不 安定な身分のままでいるということが常態化してしまう、それで は、30代、40 代も任期付ポストを渡り歩くというのが当たり前に なってしまう、研究者の間に、常勤(終身雇用)研究者と任期付 研究者の二つの身分が存在することになる、それは、今後、研究 者を目指す若い人々にとって決して魅力的なものではなく、フラ ンスの研究者をだめにする、と「研究を守ろう」は、分析する ・・略・・ ところで、来週頭に都立の四大学を廃止し、新法人の定款などを 承認する条例が都議会で議論、議決される予定である。しかし、 今になっても、クビ大に就任する人は、自分の人事制度がどうな るか、よくわかっていないようだ。 「やっぱり任期制は、導入できないじゃないかなぁ」「導入して も内輪で評価できるので、実際、生クビを切ることはできないで しょう」「来年度は、まだ年俸制などは、実施されないからねぇ」 というような変に楽観的な発言も聞かされる。 意思確認書の判断がつきつけられた際、遠く離れたところにいた 自分は、アクセスしうる限りの資料を読んだ結果、クビ大を行く ことは、すなわち、日本における若手研究者への任期制導入を容 認し、これに加担することであると判断した。なので、ずっと保 留し続けたのである。 ところで、上の楽観的発言は、クビ大で教授や主任教授(終身雇 用)となるような教授級人物のものである。なんたることか。。 自分の生活や老後だけ保障されれば、ということでは、ちょっと 困ってしまう。全体に与えるインパクトを考えてほしい。TR大は、 一自治体の大学であるが、500人近くも教員がいる総合大学なので ある。そこでの人事制度の変化は、必ず全国に波及すると思う。』 ━ AcNet Letter 218 【2】━━━━━━━━━━ 2004.12.11 ━━━━━━ 高等教育予算についての大学関係者の声明 #(編註:国公私のセクタが声を一つにすることが至難の状況であ ることが残念である。しかし、京都圏周辺では京大を含む国立大と 私立大との間に、単位互換などの協力体制の構築がはじまっている。 この動きが広がってほしい。たとえば大学図書館の国公私間の相互 利用は実現は難しいのであろうか。) ────────────────────────────── 【2-1】国立大学協会臨時総会声明「国立大学関連予算の充実について」 http://university.main.jp/blog2/archives/2004/12/post_207.html #(編註:「21世紀の「知」を基盤とするグローバル社会の中で」 と1.2節冒頭にあるが、世界は「21世紀の「力」を基盤とするグロー バル社会」に急速に変貌しつつあり、日本も公式にそれを推進して いる。独立行政法人化(国立大学法人化)された大学は、その財政 的構造上、「力」を求める政府、それを支持する「世論」、に全面 的に協力していくことになる懸念は大きい。知は「精神」の下僕と なることも時々はあるが「力」の下僕である方が普通である。) ────────────────────────────── 国立大学関連予算の充実について 平成16年12月8日 国立大学協会 1. 法人化のメリットを活かした活力に富む国立大学実現のために 1-1. 改革への取り組みを失速させない予算措置を 本年4月に国立大学法人としてスタートして以来、各大学は、国民 の負託に応えるべく、法人化のメリットを最大限に活かして魅力 と特色のある活力に富んだ国立大学の実現を期して、関係者一丸 となって改革の努力を積み重ねてきている。 各国立大学とも、学外有識者の積極的な任用などによる意識改革、 既に策定した中期目標・計画の実現へ向けて学長のリーダーシッ プによる経営のイノベーション、法人化による柔軟な人事・会計 システムの積極的な活用、GPAの導入などによる教育機能の強 化、学生サービスの充実など様々な改革に取り組んでいる。さら に、地域再生への貢献、産学連携の促進を視野に、地元企業・公 共団体との連携の強化、「地域連携センター」などの設置、大学 発のベンチャー上場や支援寄金の創設など、高度な人材養成や基 礎研究の中核としての使命を踏まえた取り組みを行っている。未 来の大空に向けて離陸した各大学は、今後も法人化のメリットを 活用して、さらに、より高度な教育・研究活動を展開するための 努力を継続する覚悟である。 しかし、そのためには、制度の絶えざる見直しと、何よりも活動 の基盤となる運営費交付金が十分確保されなければならず、これ らなしには改革の機運は失速しかねない。国立大学法人制度の運 用及び財政措置等についての改めての精査やこれに基づく国大協 としての必要な行動については、この際留保するとしても、各学 長が運営費交付金の効率化係数や経営改善係数をどのように吸収 するかに悩みながら、極めて膨大且つ困難な移行作業に加えて、 改革へ向けて日夜奮闘するのは、国立大学の使命を自覚するとと もに、少なくとも基盤的な教育研究費である運営費交付金や施設 整備費補助金が、国により安定して確保されることを信じて疑わ ないからに他ならない。 1-2. 国立大学法人の使命を果しうる予算措置を 21世紀の「知」を基盤とするグローバル社会の中で、我が国が世 界に伍してさらに発展していくためには、国立大学を初めとする 高等教育と学術研究の充実により、優れた人材の育成と高度な知 的創造を展開する以外に道はない。なかでも、国立大学法人の使 命は、国民に能力に応じて高等教育を受ける機会を普く保障する とともに、教育・人材立国、科学技術創造立国日本の発展を支え る人材養成と高度先端的研究開発、高度最先端医療の提供など教 育・研究・診療などを通じて社会貢献を推進していくことにある。 こうした国立大学法人の使命を果たすためには、その基盤的経費 であり、意欲的な取り組みを支援する特別教育研究経費を含む運 営費交付金の確実な確保・充実が必要である。 同時に、大学における充実した教育研究を目指すうえにおいて、 施設・整備をはじめとする環境整備が欠かせない。近年、国立大 学の教育研究環境の整備はある程度進みつつあるが、その貧弱さ ひゃ依然として大きな問題である。特に老朽化した施設の整備は、 安全や防災上の観点からも放置できず、今後の教育研究の充実の ために、これらの改修による有効活用が不可欠であることに改め て理解を求めたい。 教育・人材立国、科学技術創造立国を目指す我が国としては、教 育研究の拠点である国立大学が、未来に向かいその改革を一層進 展させ、教育研究の基盤充実を図れるよう国が支援することは国 益に沿う責務であり、予算面からも確実に実行して頂くことを強 く訴えるものである。 2. 平成17年度予算等における要請 以上を踏まえて、以下のように要請する。 (1)運営費交付金の確保・充実 教育・人材立国、科学技術創造立国の重要な拠点である国立大学 が、意欲的な特色ある取り組みを継続して推進し、法人化のメリッ トを活かすことができるよう、運営費交付金の確実な確保を図る こと。 (2)学生納付金標準額の据え置き 学生が、経済状況に左右されることなく、能力・適性に応じて進 学できる機会を確保するという国立大学の役割を果たすため、中 期計画期間における学生納付金の値上げは容認できないこと。 (3)施設整備費の大幅増 「国立大学等施設整備緊急整備5か年計画」の達成、特に、老朽施 設の着実な整備は、より高い教育研究の成果を実現するために欠 かせない緊急な課題であり、施設整備費補助金などの大幅増を図 ること。 ────────────────────────────── 【2-2】国庫助成の大幅な増額を求める 京滋私大教連共同アピール 2004.12.4 京滋私大教連HP http://www.bekkoame.ne.jp/~kfpu ────────────────────────────── 今日、国内外の情勢が激動する中で、21世紀の社会発展とそれを 支える人材を育成するために、高等教育が果たすべき役割はます ます重要になっています。一方、規制緩和が急速に進むとともに、 大学の持つ経済的な役割を一面的に強調し、国の国際競争力強化 への貢献が求められています。また、学生・父母、地域社会や産 業界など、大学が教育・研究活動をおこなう上でかかわる第三者 への説明責任も強く求められています。 今年度より、国立大学の法人化と大学の第三者評価制度が、実行 段階に移っており、国公私立大学は新たな局面を迎える中で、各 大学は社会的な役割の発揮がいっそう求められています。また、 学校教育法の改正により、大学設置基準が大幅に緩和されて以降、 私立大学・短期大学(以下私立大学)において、多数の新たな学 部・学科の設置申請が進むとともに、さまざまな専門職大学院の 開設もおこなわれています。 一方で、1992年をピークに205万人だった18歳人口が、2009年まで に120万人まで減少すると予測されている中で、私立大学の存立自 体の危機も広がっています。文部科学省は、「大学全入時代」が、 当初の予想より早まり2007年度に迎えることを明らかにしました。 このような状況の中で、日本の高等教育全体をどのように発展さ せていくのかが、今まさに問われています。 しかし、現在の高等教育予算は、文部科学省も今年度の白書で認 めるように、国際的に見ても極めて低い水準にあります。予算配 分においては、21世紀 COEなどの競争的資金においても、国立大 学が圧倒的に優位な立場にあって、私立大学は厳しい状況に置か れています。わが国の私立大学は、学生数の 75%、学校数の80% を占め、高等教育における中心的な役割を担っています。ところ が、私大経常費への補助率は1980年度の29.5%をピークに減少し、 2002年度にはその半分以下の12.2%まで低下しています。このよ うに、私立大学への経常費補助があまりにも低水準であるために、 多くの私立大学では教育・研究条件を充実させていくことが困難 になっています。また、私立大学の学費は、国立大学法人の1.7倍 あまりの水準にあります。 このように、大学運営の基盤的経費を削減・抑制する一方で、競 争的予算を大幅に増額するだけでは、学生・父母の学費負担を軽 減できないばかりか、学部間格差・大学間格差はますます拡大す ることになり、高等教育機関全体の発展をはかることはできませ ん。わが国が文化、科学、技術の発展を通じて世界に貢献するた めには、高等教育予算を欧米諸国並みの水準に引き上げるととも に、誰もが安心して充実した大学教育を受けられるように、私立 大学の教育・研究条件を整備するための国庫助成を大幅に増額す る必要があります。 また、現在の厳しい状況の中でこそ、今日までの高等教育機関の 発展を支えてきた「学問の自由」と「大学の自治」の意義と役割 を改めて見直し、高等教育機関に携わる全ての構成員の総意で、 大学創造を進める必要があります。私たち大学教職員も、学生・ 父母の負担軽減のために出来うる取り組みを考えるとともに、社 会的な使命を深く自覚して、大学間の協同と連帯を強める必要が あります。 私たちは、本日のシンポジウムを通じて、教育・研究の充実、地 域社会との連帯・協同、将来を見据えた新たな私立大学づくりを 行うことで、厳しい時代を乗り越えて、社会的に広く支持される 存在となるよう努力することを確認しあいました。本日の議論が、 広く市民の皆さんに理解され、私立大学における教育・研究の発 展と国庫助成の大幅な増額が実現することを心から求めます。 2004年12月4日(土) 関西私大助成シンポジウム2004 京滋地区私立大学学長懇談会 国庫助成に関する私立大学教授会関西連絡協議会 国庫助成をすすめる全国私立大学中央連絡会近畿ブロック ━ AcNet Letter 218 【3】━━━━━━━━━━ 2004.12.11 ━━━━━━ BLOG より抜書 ────────────────────────────── 【3-1】BLOG:ごまめのはぎしり 2004年 12月 10日 寒冷地手当問題のその後のその後 http://nobusan.exblog.jp/1420608 ────────────────────────────── 『北海道地方労働委員会の事務局から,再度交渉してみることを示 唆されたことを受け,北大職員組合は本日,寒冷地手当問題で北 大に再度の団体交渉の申し入れを行なった.大学はどういう対応 をするのだろうか. 今日,学内である人に遭ったら今期の組合は頑張っているねえ, というようなことを言われた.学内でも,少しは認めてもらえて いるのだろうか.しかし,特に頑張っている訳でもないだろう. 昨年度までと違って大学側に当事者としての直接の責任があり 「国で決まってしまったことだ.仕方ない.」とならず,組合が 一旦拳を振り上げたら下ろしようがないだけのことだろう.文句 を言いっぱなしでおしまいに出来ない状況に置かれてしまってい る. 学生には例によって「何でも反対」とひやかされる.学会に出か けたり,専門誌の知り合いの論文を見たりすれば,こんなことを やっている場合では...という気にもなるのだが「反対」の種 はなかなか無くならない. 学内で「反対」に忙しくしていたら,イラク派兵は延長されるし, 武器輸出三原則はなし崩し的に破られようとしているし,世の中 にも「反対」の種はどんどん出てくる.どうにかして欲しい. そういえば,武部自民幹事長の「文句があったら自分の目で見て 来い」論は面白い.自分はしっかり「軍」に守られて行って来た のではないのか.普通の国民が自分で見に行ける訳が無い.だい たい,見に行って人質になった人を「自己責任論」で批判してい たのではないのか.』 ────────────────────────────── 【3-2】Academia e-Network Project 2004.12.09 政府と大手メディアによる、未必の故意による殺人 http://ac-net.org/item/67 ────────────────────────────── 自衛隊延長が本日閣議決定するという。メディアもそれを支持し ている。しかし、世論の2/3は反対している。なぜならば、近い将 来、自衛隊員に犠牲者が出ることはほぼ確実と皆予測しているか らである。 未必の故意による殺人が行われようとしている。 未必の故意「実害の発生を積極的に希望ないしは意図するもの ではないが、自分の行為により結果として実害が発生してもか まわないという行為者の心理状態。」(新辞林) イラク戦争がベトナム化し、NGO の人々までイラクで敵意を感じ るようになり、香田さんが日本人というだけで殺され、自衛隊基 地にロケット弾が打ちこまれ、イラクのレジスタンス指導者の一 人が明確に自衛隊を占領軍の一部と認識して撤退を要求している 状況をみれば、このまま自衛隊がイラクに留まれば、自衛隊員の 犠牲者が出ることは不可避と日本人のほぼ全員が予感しているに 違いない。もちろん、政府も自民党も大手メディアも、詳しい情 報を知っている以上、その事態の到来を予測しているはずである。 そういう状況を無視して、イラク派遣延長を決めることは、まさ に未必の故意による殺人行為と何も違わない。 これは戦前に日本を支配していた「国益のために国民の犠牲はや むをえない」という精神が公式に復活することを意味する。国民 の命を守ることが「国益」の原点であるーーそれが戦後の日本の 国是である。自分の国民の命ですら粗末にするような国は、他の 国の人々の命など何とも思わないことは誰でもわかることであり、 そのような国が国際的に信用されるはずはない。 まだ遅くはない。自民党、公明党の中で、良識か良心のある議員 の方々は勇気を出して、自衛隊派遣延長を再検討し、未必の故意 による自衛隊員殺害の罪を負わないよう努力してほしい。それに よって、日本の国益と国際的信用を守っていただきた。 ────────────────────────────── 【3-3】Blog: 法と常識の狭間で考えよう (http://beatniks.cocolog-nifty.com/cruising/) テロ対策としての来日外国人の指紋採取は許されるのか? http://beatniks.cocolog-nifty.com/cruising/2004/12/post_2.html ────────────────────────────── 抜書『そもそも、指紋採取と写真撮影自体が人権を侵害するもので あるにもかかわらず、それを「人権には配慮して」という言い方は 矛盾も甚だしい。人権に配慮するのであれば、指紋採取と写真撮影 をやめるべきであり、それはやめないが人権は侵害しないというこ とはありえないことである。ここでも、小泉政権の特徴である「言 葉」だけで実態をごまかしてしまうという手法が見られるのであ る。/私たち日本人には直接関係がないことのように見えることか ら、あまり反発の声も挙がっていないようであるが、日本が、来日 外国人に対して、こういう仕打ちをする人権のレベルの低い国と思 われることは、日本人としては恥と考えるべきではないか。』 ────────────────────────────── 【3-4】Falluja, April 2004 - the book (http://teanotwar.blogtribe.org/?bid=teanotwar) イラク向けフェニックス作戦 http://teanotwar.blogtribe.org/entry-575d00414a42de233e43fc0077e6ddee.html ────────────────────────────── ロン・ジェイコブズ(2004.12.8):抜書『米軍によるこの最新の作 戦----基本的にイラクの町々を強制収容所へと変える作戦----は、 米国がイラク人の心をつかむ戦いに敗れたこと、そして米国が望 むことを成し遂げるためには強制と殺人によるしかないことをはっ きりと示している。/我々がナパームで同じ人間を灰に焼き尽く すやり方は、アドルフ・アイヒマンと同僚たちがやったほど体系 的ではないが、その理由はといえば、ひとえに、我らが名のもと に人を焼き殺す仕事をしていた者たちは、誰を殺すかについて選 択せよとの指示を受けていなかったからなのだ。というのも、結 局のところ、司令官は、兵士たちに、イラク人は悪魔の顔をして いるから殺すべきだと告げていたのだから。』 ────────────────────────────── 【3-5】平川研究室Blog http://www.cs.kyoto-wu.ac.jp/~hirakawa/diary/ どっちがよりリアルなリアリズム? 2004.12.11 http://www.cs.kyoto-wu.ac.jp/~hirakawa/diary/archives/200412/110231.php ────────────────────────────── 抜書『今朝、飛行機の中で読んだいくつかの新聞も、まさしく 「後の祭」的に、不安を抱える自衛隊員家族の声を載せるなど、 実に儀式的。こうしてズルズルとアパシーが沈滞していくだなぁ と思ってしまった。 ・・略・・ 「対米追従」を肯定または受け入れる声には、「日米 関係を考えた ら、現実的な選択肢は他にはない」という、「リアリズム」に訴 えようとするものが多いように思う。けれど、そういうのを見る につけ思うのは、果たして対米追従は、どれほどリアルなリアリ ズムなのだろうかということだ。・・略・・経済的関係を考えた 場合、たかだか一時の大統領の政権の政策――もちろんその背後 には米国経済界の利権構造があるわけだが――に背いたくらいで、 日米の経 済関係が冷えてしまうなんてコトが起こるのだろうか。 ・・略・・ ちなみに、イラク戦争をめぐって、米国と真正面から対立したの はフランスとドイツだが、それらの国と米国との貿易状況を、 US. Census BureauのU.S. Trade (Imports, Exports and Balance) by Country で、2000年1月から2004年9月まで調べてみ ると、イラク戦争開始前 後で目立った変化はないことがわかる。』 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 編集発行人連絡先: admin@letter.ac-net.org 趣旨:http://ac-net.org/letter/ ログ:http://ac-net.org/letter/log.php #( )内は編集人コメント、「・・略・・」は編集時省略部分 転送歓迎(転送時に:http://ac-net.org/letter 併記希望) |