トップへ戻る   以前の記事は、こちらの更新記事履歴
新首都圏ネットワーク


『読売新聞』2004年12月6日付

独立行政法人、留任役員に“お手盛り賞与”


 特殊法人や国の機関から移行した15の独立行政法人が、前団体から留任し
た役員計42人に対し、高額の退職金を払ったうえ、独立行政法人移行後の最
初のボーナスでは、前団体での在職期間も含めて計算し、支給していたことが、
読売新聞の調べでわかった。

 ボーナス支給の起算点を独立行政法人移行日とした場合と比べ、計4000
万円余り多く支払われていたと見られる。法人の内外から「不適切」との批判
が出ており、役員がボーナスの一部を自主返納した法人もあった。

 読売新聞では、2001年4月から今年10月までに設立された、108の
独立行政法人を調査した。その結果、役員の報酬については、各法人が個別に
規定を設けていたが、問題の15法人では、個々の報酬規程に「付則」を設け
るなどして、ボーナスを前団体の在職期間にさかのぼって支給できるようにし
ていた。

 15法人のうち、2003年10月に独立行政法人となった農林漁業信用基
金(東京都千代田区、馬場久万男理事長)では、移行後も留任した役員5人に
対し、退職金計3610万円を支給。独立行政法人での最初のボーナスは、移
行前の同年6月から起算して支払っていた。

 しかし、今年10月に改めて検討した結果、「退職金の支給を受けている事
実があり、独立行政法人移行前の期間までさかのぼってボーナスを受け取るの
は不適切」として、役員5人が当初の支給額の約半額に当たる計約475万円
を返納した。

 2003年10月に独立行政法人化した国民生活センター(神奈川県相模原
市、糠谷真平理事長)では、労働組合が今年2月、こうした退職金とボーナス
の支給について「社会通念上おかしい」と問題視。「独立行政法人への移行に
当たり、人件費削減が求められている中で、経営者が身分や報酬に関する解釈
を都合良くねじ曲げ、不当な報酬を得ている」とする抗議文を理事長あてに提
出していた。

 しかし、同センターの役員側は「国の施策で独立行政法人化したのに、経営
側が不利益を被るのはおかしい」と反論し、労使の議論は物別れに終わったと
いう。労組関係者は「常識的に考えておかしな判断。独立行政法人に対する世
間の目が厳しい今、危機意識がなさ過ぎる」と話している。

 調査対象となった108の独立行政法人のうち、留任した役員に対し、移行
時に退職金を払ったうえで、ボーナスは移行後から起算していたところは32
法人あった。そのほかの法人は、独立行政法人移行後に留任する役員がいなかっ
たり、移行時点で退職金を支給していないなど、判断が分かれていた。

 各独立行政法人によると、役員の退職金は、移行前と移行後の2度に分けて
払っても、移行後の退職時に一括して支払っても、額は同じになるという。

 公認会計士の資格を持ち、独立行政法人の問題点を調べている尾立源幸(お
だち・もとゆき)参院議員(民主)は、今回判明したボーナスのお手盛り支給
について「外部監査が徹底されておらず、第三者の目が届きにくいため、規程
の運用が恣意(しい)的になっている」と話している。

 また、元特殊法人の職員で、ジャーナリストの若林アキさんは、「法の趣旨
に反するとか常識的におかしいことでも、自分たちが損しないような抜け道を
つくり、行革を骨抜きにしている」と批判的だ。

 ◆独立行政法人=国の機関や特殊法人に民間の経営手法を取り入れ、効率的
な運営を図るのを目的に、2001年4月以降、設立され、2006年までに
計111団体となる予定。ボーナスのお手盛り支給が判明した15団体には、
今年度、国から計約2250億円の運営費交付金が出ている。